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これも、30回も続けると苦しくなってきてダウンした颯に対して、ミイナは50回を超えてもスピードが変わることなく上体を上げ続けた。普段からトレーニングを続けているのだと分かる。
颯はその様子を見てもしかしたら初めて図書室からミイナを見た時も走ったりした後だったかもしれないと思った。現に、ミイナの今の様子は運動後という感じを全く感じさせないものであった。腹筋が終わって少し休憩に入ったミイナに颯は尋ねた。
「あの、ミイナさん、ミイナさんは毎朝このような特訓をしているんですか?」
「当然よ、一日でもサボったらなまるじゃない」
「いつも何時くらいに来ているんですか?」
「6時くらいかしら、どうしたの?」
颯は今思い浮かんだ疑問を口にした。
「いえ、あの日ミイナさんを見かけた時間帯が少し遅いのかなって思いまして」
いつも同じ時間帯に来ているとしたらあの図書室からよくこの階段を眺めている颯が気付かないはずはないと思った。
「あの日は寝坊したの」
少し恥ずかしそうにミイナは言う。その姿を見てまた颯の鼓動は少し早くなる。
「そうなんですね」
ということは、本当に珍しく二人の時間があったわけということか。颯はその偶然を嬉しく感じた。
その後、また、池の周りをミイナは走って、一方で颯は走ったり歩いたりを繰り返しながら、さらに2周周って初めてのトレーニングは終わった。明日は絶対筋肉痛だろうと颯は思った。
終わった後、いつもの場所で二人並んで座っていた。
「ねえ、颯君、明日も行けそう?」
ミイナがいつもの微笑みのまま颯に尋ねてくる。
「はい、行けます」おそらく筋肉痛だろうが颯は少し無理をして答えた。
「うん良かった、今日はお疲れ様、明日も同じ時間帯によろしくね」
ミイナはどこか安堵したようにそう言うとその日はそれで解散となった。まだ、颯の息は完全には整いきっていないため、颯はミイナが公園を出ていくのを見送った後もしばらくは公園にいた。
颯は座ったままの姿勢で空を見上げる。空はまるで指で押すとどこまでも波紋がひろがっていきそうなほど澄んでいて青かった。だがそんな波紋もきっとあの白い壁に当たって跳ね返ってしまうのであろう。手前の小さな山の隙間からかすかに見える白い壁。ルイミ山の周りである。
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