どうやら、美少女なクラスメイトは俺に気があるようです。

羽宮羽斗

プロローグ

 どうしてこうなった。


 「もう少し詰めることは可能ですか……!」


 生暖かで艶かしい吐息が、俺の背中を撫でた。


 「いや、無理だ。一人用のシャワールームは流石に無理がある。というか、もう少し下がれないか?」


 花蓮かれんの胸が当たって、もうこっちはいろいろとヤバイんだ!


 「こっちも無理です!」


 花蓮は俺に抱きつきながら、小声でそんなことを言ってきた。


 「そもそも何で同じ所に入ってきたんだ。個室はまだあったろ……!」


 俺の必死な問いかけに、花蓮もまた焦りながら返してきた。


 「別の個室に入って、男子に話しかけられたらどうするのですか?私、この日を境に痴女扱いされてしまいます!」


 「だからって、これもこれでまずいだろ!見つかったら、社会的に死ぬぞ!」


 「現に、隣の個室に人が入りました…!」


 水着姿の男女が抱き合ってる姿なんて見られたら最後、学校中のみんなから白い目で見られる。


 「わ、私だって恥ずかしいんですよ…!」


 「そもそもなぜ、男子更衣室に入ってきた」


 花蓮はギュッと抱きつきながら、


 「先ほども言ったように、お礼を言いたくてですね」


 「お礼はいいと言ったろ!前にも言ったんだし」


 「それはそうですけど。気分の問題といいますか……」


 花蓮は頬を紅くして、目を逸らした。

 俺は俺で、緊張で息苦しくてしょうがない。

 早く離れないと窒息しそう。


 「不毛な争いはよそう。問題はここからどう脱出するかだ。見つからないで出るには至難の業だぞ」


 なぜ、俺―飛来ひらい奏太そうた三本音さんぼんね花蓮かれんが密室の中で抱き合う状態になったかというと、だいぶ前から説明しないといけない。


 

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