第11話祈祷
席を立ち上がりニーチの元へ歩いて行ったアルクは、ニーチの耳元に顔を近づけると、ごにょごにょと何か一方的に話をしてまた自分の席に戻ってきた。
一体今何をニーチに言ったんだ?
そんな疑問をアルクにぶつけたいが、今はそんなことを聞ける雰囲気ではない。
みんなの視線は一瞬だけアルクの方へと向けられていたが、すぐにまたニーチの方へと向けられている。
「あ、あのニーチ……。一体誰にって、もしかして知らないの?」
不安そうな表情のルーマ先生が、そんな質問をニーチにしている。そんなルーマ先生に、ニーチは表情を和らげて。
「す、すいません。お祈りって
そんなことを言って、ニーチはぺこりと頭を下げていた。
「あぁそうなのね。すんでる場所で言い方が変わるなんて、先生も初めて知ったわ。なんか変な空気にしちゃってごめんなさいね……」
先生は、はははっと乾いた笑みを浮かべて教壇の方へ体を向け、ゆっくりと杖をつきながら進んでいった。
先生が教壇の前に立つと、クラスメイトも全員席に座り手を合わせ始めていた。
「それじゃあみなさん。
ルーマ先生はいつも通りお祈りの定型文を最初に言うと、目を瞑って両手を合わせている。
それに続くように、クラスの生徒全員が目を瞑って手を合わせ始める。
「
「「「
ルーマ先生の言葉を、クラス全員が復唱する。それから10分間、誰も何も言わずにただじっと手を合わせ続ける。
私も嫌々手を合わせているが、目は瞑っていない。この儀式のようなものに全く意味を見出せない。
我らが
こんなことをしたところで、私たちの国が戦争で勝てる確率なんて1パーセントも上がらない。
本当に無駄な時間だ。早く終わって欲しい……。
「はーい、皆さんの祈りはきっと伝わりましたよ。それじゃあ今日はここまで。そのまま帰っていいですよ」
十分がこれほど長く感じるのは、この時間以外にはない。同じ時間が経っているはずなのに、今の十分は私の体内時計では1時間ぐらいに感じた。
それほど退屈で、苦痛な時間だ……。
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