第9話面倒ごと

「は? いやいや、おとなしく先生と組んでろよ……」


「嫌だね」


 アルクは私の前に、両手を横に広げて立ちはだかる。


「そもそも、どうして俺があぶれる必要がある? お前が先生と組んどけよ」


「はぁ……。もういいからどいてくれ」


 私はアルクの言葉に耳を傾けず、無理やりどかそうとすると……。


「負けてたまるか--ッ!」


 アルクは、握力1、3のひ弱な肉体で私にタックルをかましてきた。そんなことをされると思わなかった私は、咄嗟とっさに後ろへ避けるが足を絡ませて尻もちをついてしまった。


「いって……。何すんだ!?」


 地面に座りながらアルクを睨めつけると、アルクはものすごい眼光で私の方を見ながら。


「コイツは絶対にわたさねぇ!」


 そんな恥ずかしいセリフを言っていた。本当にどうしたんだコイツ……?

 そして、私たちの意味わからないやり取りを見ていたニーチは、オロオロとしている。

 どうしてこんなよくわからない状況になっているのか……。私がアルクを裏切ったからなのか……?

 どうして体育のペア決めで、こんなめんどくさいことになってるんだ……?


「はぁ……」


 私はため息をつきながら立ち上がると、尻についた砂を手でパンパンとはたき落とす。


「じゃあニーチに決めてもらおうぜ」


 私がそんな提案をすると、アルクは


「よし、それでいいぜ」


 提案に乗ってくれた。本当にバカだなコイツは……。アルクよりも私の方がニーチといる時間は長いんだから、私を選ぶに決まってるだろ……。

 私たちはニーチに前に行くと、顔をずいっと近づけて。


「「さあ! どっち?」」


 そう言いながら、ニーチに迫った。そんなことを言われたニーチは、「え、え?」と戸惑いながら、私たちの顔を交互に見ている。

 それから数秒の沈黙が流れて、ニーチは。


「や、やっぱり、私がその……先生と組んでくるね」


 そんな結論を出して、先生の方へ行ってしまった。取り残された私たちは、しばらくの間ポカーンとニーチの後ろ姿を眺めていた。

 それからハッと我にかえると、私は隣でアホ面を晒しているアルクの頭を叩いた。


「何すんだ!」


 叩かれたアルクは、涙目になりながら頭を抑えていた。


「しょうがないからペア、やってやるよ」


 そう言って、体操の準備に取り掛かった。



















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