第20話 錬金物に付与術を重ねてみた

自宅に戻る方向に飛びながら、時々「第6のイーグルアイ」を発動してモンスターを探す。

しばらくすると、「第6のイーグルアイ」に1体のモンスターの反応があったので、俺はその近くに立ち寄った。


そこにいたのは、1体のウィルオーウィスプ。

と、思っていたら……突如地面から、2体目のウィルオーウィスプが出現した。


どういうことだ?

もしかして、ステルス性能を持つモンスターでも存在するのか?


などと考えている間にも、今度は3体目のウィルオーウィスプが出現した。


これはおかしい。

そう思い、様子を観察してみると……俺は一つ、とある違和感に気づくことができた。


ウィルオーウィスプが発生した場所の真下に、風が吹いているわけでもないのにカタカタと震える小石があったのだ。

何だこれは、と思い鑑定を発動すると、その小石はスポーンロックだということが分かった。


……なるほど、ウィルオーウィスプの増殖の正体はこれだったか。

俺が今まで見つけてきたスポーンロックは最低でも拳くらいのサイズがあったので、一目でそうとは気づかなかったな。


こんなことなら、もしかしたら今までにも見逃していたスポーンロックがいくつもあるかもしれない。

そんなことを考えつつ、俺はこのウィルオーウィスプ達の処理に取り掛かった。


発生直後ということもあり、ウィルオーウィスプはまだスポーンロックのすぐそばに密集している。

この状況ならカオスストライクで一網打尽だと思い、俺はスキル名を詠唱して技を放った。


カオスストライク特有の、闇の噴火みたいなエフェクトが巻き起こる。

それが収まった頃には……地面に残っていたのは、ウィルオーウィスプのドロップ素材3つとスポーンロックの素材だけだった。


よし、討伐完了。

俺はここでウィルオーウィスプの素材不足で作成を断念していたアイテムがあったことを思い出し……せっかくなので、今それを作ってしまうことにした。


サブマリンキラーの素材をアイテムボックスから取り出し、ウィルオーウィスプの素材の隣に並べる。

そして……


「スリングショット∞を3つ作成」


俺は、素材を余すことなくアイテムに変換した。


……ところで、「スリングショット∞」って何だ?

気になったので、俺は鑑定をかけてみた。


「実弾を用意せずとも、引っ張って離すだけで無属性の魔力弾を飛ばせるスリングショット、か」


だから、無限発撃てるから「∞」なのか。

などと思いつつ、俺は試しにスリングショットのゴムを引いてみた。


指を離すと……スリングショットからは、透明の何かが勢いよく飛んでいった。

おそらく、アレが「無属性の魔力弾」とやらだな。


俺は次出会ったモンスターを実験台に、このスリングショットの性能を確かめてみようと思った。





そして、またしばらく飛行して。

俺は今度は、パワフルボアというモンスターに遭遇したのだが……その時俺は、あることを思いついた。



アイテムに付与術を重ね掛けしたら、さらに使い勝手が良くなったりするんじゃないだろうか?



今まで俺には「錬金術で作った物に、更に付与術を重ねる」って発想が無かったが……よく考えたらさっきナチュラルに「力源の衣」に「シールドバッシュ」を付与したんだし、原理的には不可能じゃないはずだ。


もし例えばこの「スリングショット∞」に何かしらの付与を施して、その性能を向上させることができたら……換金所で、更に高く売れるだろう。

これは、試してみないわけにはいかないな。


そう思い、俺はスリングショット∞をアイテムボックスから1つ取り出した後、ステータスウィンドウの「名人級付与術」をタップしてなにか良い付与効果が無いか探しだした。


「お、これとか良さそうだな」


そこで俺がまず目につけたのは、「漆黒付与」というものだった。


スリングショット∞に「漆黒付与」を施すと、放たれる魔力弾は無属性から闇属性に変わり、威力も倍になる。

闇属性には苦手属性が無いので、デメリットなく攻撃力をアップさせることができるのだ。



早速、やってみよう。


「漆黒付与」


そう唱えると……スリングショットから一瞬黒い靄が発生し、そしてすぐに元の見た目に戻った。


……これで闇属性が付与されたのか?

試すために、俺はパワフルボアに向けてスリングショットの魔力弾を放った。


すると……前とは違い、スリングショットからは黒紫色の魔力の塊が放たれた。


お、ちゃんと上手くいったな。

そう思ったが……肝心の攻撃は、パワフルボアから少し逸れたところを通過してしまった。



……自分、こういうの苦手なの忘れてたな。

何か良い方法はないか。


付与効果のリストを眺めていると、俺は「追尾効果付与」というのを見つけたので……俺はそれを付与し、再度パワフルボアを狙ってみた。


またもや、魔力弾はちょっとズレたところに飛んで行ったが……今回はパワフルボアを通り過ぎる直前でギュンと軌道が変わり、魔力弾はパワフルボアに命中した。

そして……パワフルボアは叫び声をあげる間もなく、ドロップ素材へと姿を変えた。



「追尾効果付与」、大正解だったな。

飛び道具で一番肝心の命中率が上がったとなれば、価格に色がつくのは間違いないだろうし。


そう思いつつ、俺はパワフルボアのドロップ素材を拾いにいった。



……ちなみにこれ、追尾能力の限界はどれくらいなんだ?

そんな疑問を抱きつつ、俺はパワフルボアとの交戦場所から飛び去った。


そしてそのまま、更に飛行を続けていたのだが……


「……!? 今の何だったんだ?」


不意に「第6のイーグルアイ」から、探知範囲の端から端までを一瞬で横切ったモンスターの反応が帰ってきた。



あんな移動速度のモンスター、初めて遭遇したな。

脅威度こそ大したことなかったものの、スピードだけなら完全に常軌を逸している。

あれを捕まえるのはコスパ悪そうだし、ああいうのこそ専属戦闘隊員とかに任せるのが得策ってとこなんだろう。


けど……。

そんなモンスターこそ、「追尾効果」を試す相手にはもってこいなんじゃないか?


俺は今のモンスターを相手に、追尾式スリングショット∞が通用するか試してみることにした。

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