第15話 便利なアプリを入手した

JMEO……その名前を聞いて、俺はちょっと複雑な気分になった。


「JMEOですか……。あれ、一回加入を断っちゃってるんですよね……」


実は1週間ほど前、俺のもとにはその機構から封筒が送られて来ていた。

開けて中身を確認すると、それは「全国の危険なモンスターを掃討する専門機関の一員として、ウチで働きませんか?」という趣旨のお誘いだった。


一応細かい条件にも目は通したが、俺はその段階で、この機構に入るのはナシだなと判断した。

というのも……その条件、とても今の本職と兼業できるような内容では無かったのだ。


正直言うと俺、今の仕事やめたくないんだよな。

うちの職場、完全週休二日制とかはキチンとしてる優良企業だからな。

それに何より、良くも悪くも職場の人間関係がドライなところが、俺にとっては居心地の良さに繋がってたりする。


対してこの機構での仕事は、非常事態の発生状況によっては夜中に急遽出勤、とかもあり得るらしかった。

治安維持のための日常業務も多いようで、決してホワイトとは言えない環境のようだったのだ。

給料だけは断然、こちらの方が上なのだが……メリットがそれだけなら、今の「本業+副業」のやり方でいいじゃんかという話になってくる。


いわゆる「まともな職」を捨てて、変わった生き方をするのにも抵抗があるしな。

そんなこんなで、俺はこの機構からのお誘いは受けないと決めたのだ。


加入は任意とのことだったので、俺は「加入を断る際は理由を教えてください」というチェック項目の「現職をやめたくない」にチェックを入れ、確認書を返送用封筒に入れて郵送した。


そんな経緯があったので……俺はちょっと、JMEOと関わるのには引けを感じてしまうのだ。



「な……もしかしてそれって、専属戦闘隊員としてのお誘いが来てたってことか?」


そんな思いの俺とは裏腹に……店の人は、俺のもとに封筒が届いていたこと自体に驚いているようだった。


「JMEO専属戦闘隊員といやあ、モンスター討伐の超エリート部隊じゃないか。ってか、その誘いを断った……!? あでも、北野君の性格を考えれば、確かに断っちゃいそうだな……」


かと思いきや、店の人は何やらブツブツ言いながらひとりでに納得してしまった。



どうやら所得税非課税の恩恵を受けるのは俺には無理そうだし、もう帰るか。

そう思いかけたが……店の人はハッとしたような表情をして、帰りかけた俺を再度呼び止めた。


「そういえば、危うく言い忘れるところだったが……俺が言おうとしてたのは、JMEOの専属戦闘隊員に推薦しようって話じゃあないんだ。というかそもそも、一介の査定人にそんな権限無いしな。俺が北野君に勧めようとしてたのは、JMEOの一般会員だ」


「一般会員?」


……なんか話の風向きが変わってきたな。

そう思ったので、俺はこの話を一応最後まで聞いてみることにした。


「ああ。一般会員は専属戦闘隊員と比べて、役割がライトでな……。本部からの討伐要請には参加したい時だけ参加すればいいし、それでも要請参加で一定以上の功績を上げれば、所得税非課税になる恩恵はちゃんと受けられるんだ。こっちなら、入ってみたい気もするだろ?」


「確かに、そういうのなら……」


「とは言っても、これは誰でも参加できるわけじゃなくてな。本来は、然るべき者の推薦を受けた上で、本部で行われる試験をクリアしなければ、一般会員にはなれないんだ。だから、一般会員になら推薦する資格を持ってる俺が、北野君を推薦しようかと思ったんだ」


「なるほど」


「ただな。専属戦闘隊員へのお誘いが来てたなら……実は、そんな回りくどい事はしなくていい。封筒の中に、QRコードとシリアルコードが書かれた紙があっただろ? そのQRコードからJMEOのアプリを入れて、シリアルコードでアカウントを作成すれば、それだけで一般会員扱いにはなるんだ。……まさかその封筒、捨ててないよな?」


「一応まだ、クローゼットの廃品回収入れに残ってますね」


「なら良かった。帰ったら、すぐにでもやるといい」


というわけで……どうやら俺は、JMEOの利点だけを受けることが可能らしいということが分かった。


この話が終わると俺は換金所を出て、そのまま家に向かった。

そして言われた通り、俺は自分のスマホにJMEOのアプリを入れ、会員登録を済ませた。





そして……その翌々日。

週末ではないが、今日は国民の祝日なので、俺はモンスター狩りとアーティファクト作成のために出かけることにした。


JMEOのアプリから通知があれば、そっちに出向いてもいいかと思ったが……午前中は特に何もなかったので、俺は通常通りのモンスター狩りをして素材を集めていた。


半日も討伐を続けたので結構素材も集まったし、そろそろ錬金術に移行するか。

そう思い、素材を地面に並べてから「名人級錬金術」と唱えると……前みたいにポップアップ画面が表示され、次のようなアイテムやアーティファクトが作成可能だと表示された。


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<作成可能なアイテム/アーティファクト一覧>

・【獲得経験値倍増結晶】必要素材:ライノワールx1、ウィルオーウィスプx2

・【アイテム版ディスラプター(上級)】必要素材:ヴァイスオーガx1、ウィルオーウィスプx2

・【???????】必要素材:スポーンロックx7

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ライノワールの素材は2個、ヴァイスオーガの素材は1個あるが……ウィルオーウィスプの素材は5個しかないので、獲得経験値倍増結晶2個か獲得経験値倍増結晶とアイテム版ディスラプター1個ずつしか作れないな。


ただ見た感じ、ディスラプターの方は前回作った奴の下位互換みたいだし……今回は、経験値の結晶の方を2個作るか。


それと……地味に見つけては破壊していたスポーンロックだけど、いつの間にかアーティファクトを作れるだけの数集まってたんだな。

てか、アイテム名が【???????】になってるのなんて初めて見たな。

換金所で「売れない」って言われたのは、こういうことか。


まあ作っておいて損はないだろうし、どうせならついでにこれも作ってしまうか。


そう思い……俺は計3つのアーティファクトを作成し、それらをアイテムボックスにしまった。


そしてアイテムボックスから弁当を取り出して、昼食を食べていると。


「あなたに新規の討伐要請が届きました」


俺のスマホに、そんな通知が表示された。

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