第14話 アイテムはもっと金になった
「はい、次のお客様……って、北野君じゃないか。待ってたよ」
ドロップ素材の換金に来た人の列に並び、自分の番が来ると……店の人はそう言うなり、奥の部屋に入ってしまった。
そして、しばらく待っていると……店の人は、札束を持ってカウンターに戻ってきた。
「追加報酬、100万円だ。ハヌマーンとスレイプニルの素材、想定より少し高く売れたからな。その分、換金額割り増しってことよ」
そう言われ……俺は店の人が手に持っていた札束を渡された。
400万円でも十分、いや高すぎるくらいだと思っていたのに……本当にその上を行ってしまうのか。
なんか色々と感覚が麻痺してしまいそうになるな。
まだ何も出す前から大金を渡され、一瞬本来の目的を忘れかけた俺だったが……店の人に「で、今日も何か持ってきたのか?」と籠を出され、俺はアイテムを売りに来たことを思い出した。
「はい。今回はこれを持って来ました」
そう言って……俺はアイテム版ディスラプターと力源の衣2着、そして余ったドロップ素材を籠に入れた。
すると……店の人は目をまん丸にして、口をあんぐりと開けたままフリーズしてしまった。
「な……お、お前、錬金術までできたのかよ!?」
「一応スキルは持ってたんで、試してみました。これもここで換金してもらう事ってできるんですかね?」
「あ、ああ。一応可能だ。アイテムの流通ルートも持ってないわけじゃないからな」
店の人はそう言うと、アイテムのうちまずはアイテム版ディスラプターを手に取り、査定を開始した。
「ディスラプター……っておい、これ特級かよ! 一体何を素材にしたら、こんなものが作れるのやら……」
店の人は何やらブツブツと呟きながら、一つ一つ査定を進めていった。
そして……。
店の人が合計金額を計算し終えたかと思うと、カウンターの上には厚み10cmを超えるであろう札束がドーンと置かれたのだった。
……おいおい。
流石に嘘だろ?
この札束、前来た時の倍はあるぞ。
加工費分が上乗せされてより多く金が貰えそう、とは思っていたが、まさかこれほどなんて……。
「合計金額1025万円だ」
しかしやはり、これだけのお金がもらえるというのはれっきとした事実のようだった。
先週同様、実感が沸かない中。
俺は一つ疑問に思ったことがあったので……それを店の人に聞いてみることにした。
「あの……ここまでの金額になるなら、銀行振り込みとかにしてもらえないんでしょうか?」
すると店の人はハッとしたような表情をして、こう答えた。
「そう言えば……北野君、ソロだもんな。掃魔集会なんかだと、その場で報酬を山分けにしたりする都合上現金支給が好まれることが多いんだが……北野君の場合は銀行振り込みの方が都合がいいか。分かった、そうしよう」
そんなわけで、俺は口座番号を店の人に伝え、1025万円は銀行に振り込んでもらうことにしてもらった。
良かった。
こんな額の現金、一晩だって家に置いておきたくはないからな。
先週も、週明けになると即行で500万円を銀行口座にぶち込んだもんだが……その瞬間まで、結構ヤキモキした気分だったんだよな。
今度からはそれがなくなるというのは、非常に助かる。
「ありがとうございました」
そう言って俺は、換金所を出ようとした。
だが……
「ちょっと待ってくれ」
店の人は若干慌てたように、俺を引き留めた。
「北野君。君さ……このままだと、所得税とんでもないことになるだろ?」
そして唐突に、そんな話題を振ってきた。
「そう……なるんですかね?」
「ああ。そこでだが……一つ提案があるんだ。JMEO——日本モンスター討伐機構に加入して一定の功績を上げれば、特例措置としてドロップ素材関連の収入が非課税になるんだが……興味はないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます