万年最下位のボクだけど

江間夜菖蒲

第1話

周囲を埋め尽くす激しい雨音。豪雨の中、二人の少年が校舎の屋上で向き合う。

 その内の一人、鹿島緋色(かしまひいろ)は恐怖で震える自分自身の身体に言い聞かせるようにして、目前の少年に言った。

「待ってて。今度は、僕が君を助ける番だ!」

 その言葉が目前の彼にどう届いたのかはわからない。だが、過去に彼が自分を救ってくれたことは変えようのない真実であり、その時、緋色は彼のようなヒーローになりたいと思ったのも紛れもない事実なのだ。

 例え、彼がそれを拒んだとしても、緋色は絶対にそれを諦めない。

目の前の友達を、救えられはずの友達を失わないようにするために。

 あんな思い、僕はもう・・・二度としたくない。

 緋色は自分の正面にいる少年に向かって拳を強く握りしめた。


百年程前、眩いほどの光と共に地上に自分は神と自称するものが現れ、それと同時に思春期を終えるまでの若者に己の力、つまり、神の力の一部を分け与えた。

その力は神のキセキと呼ばれ、人類史上最大の変化をもたらした。

キセキの力により、人々は文字通り人知を超える力を授かったことになったが、その力が人類に与えたものは天才というよりかは、天災だった。

 突如現れた異能を持つ少年少女の存在により、世界各国の治安や秩序は瞬く間に崩壊し、それをきっかけに世界の混乱は池に広がる波紋のように広がっていき、第三次世界大戦が起こる寸前にまで発展した。しかし、その戦争は一人の勇気ある少年により、阻止された。

その少年は人々から称えられ、いつしか『神の子』と呼ばれるようになっていた。

その後世の中は、今までの法律を新たに改変し、社会はキセキを使う少年少女を受け入れていく政策に力を注いだ。

人々が新たな政策を考案し治安を元に戻そうと試行錯誤している中、これらの発端となった自称神は「そうだ面白いことを思いついた」といたずらをする幼い子どものように無邪気な表情で笑い、そうつぶやいた。

そして、神は人類の前に再び姿を現した。

「いいかい、人類諸君。これより5年に一度、神である僕にどんな願いでも叶えてもらうことのできる権利、『神の子』を決める大会を開催することを今この場において宣言する。そうだね、大会名はわかりやすく、箱庭祭とでも名付けようか。覚えやすくていいだろ?さぁ、若き夢見る少年少女諸君。その僕から与えられた力を駆使し、僕の下までおいで。くれぐれも僕を退屈させないでくれよ」

 こうして、箱庭祭は5年に一度行われるようになった。この箱庭祭は必ずしも優勝者が出るわけではなく、神から与えられた試練を乗り越らえれた者のみが優勝者として認められ、願いを叶えてもらうことができる。そして、その優勝者は初代神の子に倣い『神の子』と呼ばれるようになった

箱庭祭が初めて行われ、約百年という長い月日が流れた。だが、それでも今まで神の子になれた者の数は、大会が始まる前、初代神の子と呼ばれた英雄を入れてもたったの3人初代神の子を除けば、最初に優勝した神の子は第一回目の箱庭祭。そしてその20年後に二人目の優勝者が誕生した。しかし、その大会を皮切りに数十年間優勝者できるものは現れなかった。が、大会で優勝できるものは居なくなったが、全世界で神の子を目指す若者の人数は減少するどころか、年々その数を増していき、今ではほとんど言っていいほどの若者の多くが『神の子』を目指していた。

鹿島緋色もその夢を持つ少年の一人だ。

この物語はそんな夢見る少年、鹿島緋色が神の子を目指すと同時に、数多くのライバルや仲間たちと成長し、夢を叶えるまでの物語。

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