第2話 英雄とアヌビスさん

「ミ、ミイラ!? アヌビス!? いや、お前たしか、出席番号14の西方迅にしかたじんって名乗ってなかったか?」


「ふっ。それは世を忍ぶ仮の姿よ。我はアヌビス。誇り高きエジプト神の一人よ!」


アヌビスもとい西方は、包帯ぐるぐる巻きの物体を掲げ、高らかに叫んだ。


「ちょ、お前、声が大きいって!」


俺は興奮気味の西方を無理やり席に座らせる。


「ぬ? 何故お主、我が名乗りを妨げる?」


「何故じゃねーよ! 俺はお前の高校3年間の社会的死を寸でのところで食い止めた英雄だぞ!?」


「ほう、英雄。さすがは日出づる国よ。このようなところにも英雄がおったか。我がエジプト王国にも英雄と呼ばれた数々のファラオが……」


や、やばい。こいつ、そうとう拗らせている!!


西方が大声を出したせいで、周囲の注目が俺とこいつに集まってしまっている。

ここは一旦退避するしかない。



「と、とりあえずメシだ! お前弁当ないんだろ? しょ、食堂行くぞ!」


「うむ? まあ良かろう」

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