ある大学生の一日

@AsoTenzic

第1話 朝

普段の生活で私達は瞬きをする。昔ドライアイのCMで十秒目が開けられるかというものがあった。私はその度に目をかっ開き、画面を注視するが、八秒程度で目を閉じる。私の瞬き持続力はその程度である。一方で、目は閉じたら延々と閉じることが出来る。長々と意味のわからない話をしているのだが、つまり朝は私の目が開かないことを伝えたい。これはもう私の意思を超えるほどに強固な扉である。ハンターハンターでキルアの実家に入る際、とんでもない重さの扉をレオリオが開けていた。私の朝も彼同様の力が常に必要になる。レオリオを例に出したのは、あの世界観の中で常人っぽいというそこはかとない親近感のためだが、彼は医学部に入学するほどの勤勉であり、選挙に出馬し人気を集めるほどの人材だ。もちろん念も使える。しかし一介の大学生である私は医学部でもなければ人望もない。お気づきだろうが念も使えない。そのような現実から目を背けるため、眠りにつく。繰り返す惰眠は良いものだ。夢を見る回数が増える。見る夢が良いものである確証はないが、現実を見続けるよりバラエティな世界を一遊する方が実に気分が良くなる。そして起きるが、まだ頑固な扉である。読者の中にはとんでもないメヤニが私に発生しているのではと考える者がいるかもしれないが、おそらくそれは常識的な生活を送っている人であらば考えないだろうし、考える人は余程変わった人間だろう。第一私の主張を読む人はおそらくゼロであり、たとえ1パーセントの変人がいようと、ゼロに何をかけてもゼロであるから無駄である。ここまでついてきたのであれば、実に素晴らしい読者だと思う。おそらく人の話をよく聞くように教育を受けた非常に良い家柄の方なのであろう。そんな方は私が見たことも聞いたこともないような物を普段から食べ、聞き、体験し、極楽の世界を生きているのであろう。そういう人生に夢を抱いて、私はまた眠る。

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