#31 閑話 眠りについている魔神の話
魔神は、かつて天界の神たちに負けてから長いこと眠りについていた。
力を蓄えるためでもあるが、それが役割でもある。
眠りについているとはいえ、完全に自分を見失っているわけでもない。
半分ねぼけたような状態ながら、自分の体のことについてはぼんやりと把握していた。
自分の体の中をうごめく虫たち。
そのほとんどは表層の部分で留まっている。
一部は、3分の1くらいまできているだろうか。でも、そこまでだ。
力は日々増加している。
ダンジョンの広がりを止められる気配はまるでない。
(ざまぁ、ねぇな)
広がりゆく自分を感じながら独り言ちる。
当初はここまで早いとは思ってもいなかった。
階位第3位、執念と憎悪の魔神アクバアル。全魔神の中でも5指に入る上位魔神。すでに討滅された下位の魔神とは桁が違う。
彼はほんの少し身じろぎすると、体からボロボロと黒がこぼれた。
それは蛇であり、犬である。彼は犬と蛇の化身。眷属はそのどちらかかもしくは両方になる。
すみやかに、黒は浸透し上に登っていった。きっと虫たちを食らうことだろう。
もしくは、食われるかもしれない。
(どちらでもいい。どうでもいい)
どちらも同じことだ。と、力の循環を感じながら魔神は思う。
執念と憎悪こそが彼の本体であり、それが尽きない限り彼が損なわれることは決してない。
討滅されてしまった魔神とて、やがては復活することだろう。
勝ち目のないゲーム。魔神は現状をそうとらえていた。
ふと、一番深いところにいた虫がいなくなったことに気づく。
いくらか数がいたように思うが、全て帰ってしまったのだろうか?
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ
おいしいようおいしいよう
黒が、魔神に感謝の念を伝えてきている。
(???)
しばらくして気づく
あぁ、食ったのか。早かったなぁ。
あっという間のことだったからまるで気づかなかった。
(もろいなぁもろいなぁ)
あまりに簡単に壊れてしまうソレに、魔神は憐憫と感謝の念を抱いた。
(あまりにもろいから、少しばかり手加減してやろう)
魔神は、先ほどの黒含め、部分部分で凝縮してしまっている力をほどくと、全体にまんべんなく均等に広げた。
(これで少しは降りやすくなったことだろう)
ククッと魔神は薄く笑う。
そして、魔神はやることを終えると、明確になりすた意識を手放し、ゆっくりと時間の流れに身を委ね、闇に溶けた。
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■世界観設定:「世界を浸食する17魔神」
執念と憎悪の魔神アクバアル
絶望の魔神キスミー
貪欲と嫉妬の魔神ネオ
憤怒と高慢の魔神ケイオース
渇望と羨望の魔神カイエン
復讐と悲哀の魔神ゼラ
情欲と疑心の魔神エルテテス
怠惰と怯弱の魔神ナーグ
悪見と暴力の魔神ノウムノウム
妄語と堕落の魔神ダルー
侵略と支配の魔神ウガルマンダ
恥辱と辛苦の魔神チツル
虚飾と苦悶の魔神イズバウル
★慚愧と妄念の魔神ドォマス
無知と悪口の魔神コーラードゥ
★不遜と苦悩の魔神ニス
★無慚と顛倒の魔神デオヴァル
★は討滅済み
上のほうほど強者。ただし上位は実力が拮抗している。
上記以外にも魔神は存在する。
他には
偸盗と略奪の魔神ヌヌリガ
苦痛と孤独の魔神エステテス
★滅亡と寂寥の魔神バイアッシュ
等が存在する。
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