#17 密室ガス作戦2 -Gの逆襲-
ダンジョンについて検証を重ねた結果、いくつか面白いことがわかった。
・ダンジョンは大部屋の密室を許しておらず30分もたない
・小さな空間の密室はスルーされる。具体的には一辺6m程度まで
・小さな密室でも隣接し一辺が7mを超えると一塊の大部屋認定され、壁が崩される
つまり大部屋がダメなだけで、隙間をあけて小さな密室をたくさん作れば良いわけだ。
俺は2つ目のクラウドキルリングを作成すると、さっそく2部屋同時に試してみたが、なんの問題もなくガスで継続的に敵を倒すことができた。
通路に発生した影蛇とやどかりに対処することができなかったので、かなり効率は落ちてしまったが、それは今回は許容する。
今はあくまでテストのためにやっているだけであって、本題は2Fだからだ。
(2Fでこの密室ガス作戦が通用すれば、どれだけの効率よく稼げることだろう)
俺はテスト結果に気をよくし、そのまま2Fへ突入することした。
前日と同じ場所までなんなく到達すると、俺はさっそく密室作りを開始する。
部屋ができ準備が整うと俺は、1Fと2Fをつなぐ通路に戻り、座り込んで待った。
そして数分もすると、ガイド天使が待ち望んだメッセージを告げる。
【71DP獲得しました】
(よしっ、ここでも上手くいった!)
思わずガッツポーズをとる。
セーフティゾーンでゆっくり待機しながらDPを得られるなんて、夢のようだ。
これからは1Fとは段違いの効率でDPを稼げることだろう。
フフフ、今後の生活を考えて思わず笑みがこぼれる。
俺は索敵リングで敵を監視しながらニヤニヤして待っていると、他の冒険者が通りがかった。
俺の様子に怪訝な顔をすると、足早に通りすぎる。
(さすがに不審だったか)
少し顔が熱くなった。
それからは、顔だけは引き締め、休憩中の態を装って待つことにする。
それから10分経過し、両方の部屋から合計6匹の魔物が倒れた。
収支+534
さらに10分経過すると、両方の部屋からさらに合計7匹の魔物が倒れた
収支+583
フフフ、素晴らしい効率だ。思わずまたにやけてしまう。
このあと部屋を増やせば、どれだけ稼げるだろうか。
少しばかり妄想がはじまりそうだった。
そのとき……、片方の部屋が急に敵を倒さなくなった。
(バカな、小部屋でも壁が消されるだと!?)
俺はあわてて通路から出て部屋の周囲を見て回る。
が、壁は全て残っていて密室状態は維持されていた。
しかし、索敵リングで探るに、部屋の中にモンスターは確実に残っている。
(なんで死んでないんだ?)
【83DP獲得しました】
丁度もう片方の部屋からは、敵は消滅したと小天使が告げた。
隣の部屋では、問題なく毒殺できている。
つまりガスの効果時間も切れていない。
(もしかして、ハチの巣が?)
嫌な予感が頭をめぐる。
しかしその場合は、ハチの巣から出てくるハチどもが死んでDPを発生させるはず。
そうなると、中にいるのはハチの巣ではない。
(ハチでなければ、俺でも対処できるはず)
俺は中身を見ることを決意すると、敵から遠い方の壁を崩し中を覗き込んだ。
索敵リングで反応あるあたりに目を凝らすと、そこには岩が鎮座している。
(石のゴーレムか!)
完全に失念していた。ゴーレムが毒で死ぬわけがない。
つまり、ここまでは偶然ゴーレムが発生していなかっただけの話なのだ。
2Fの敵は、全部で6種。どれくらいの確立でゴーレムが発生するのだろう。
そんな計算をめぐらせたときだった。
もう片方の部屋でも、敵が死ななくなった。
あちらでもゴーレムが発生したのだろう。
(……詰んだ)
現状では、密室ガス作戦の継続は困難だ。
俺はセーフティゾーンに戻り、思考をめぐらせる。
あの岩のゴーレムは頑丈だが、対処法はあるはずだ。
例えば、クラウドキルは毒だけでなく、酸や呪いを発生させることもできる。
(毒ガスの代わりに酸を充満させれば……)
俺は頭を振る、それでは俺自身もガスを詰めるときに被害にあってしまう。
呪いも同様だ。
(そも、ゴーレムに呪いが効くのかも疑問だ)
毒だけが偶然にも、ダンジョンモンスター限定で被害を与えるものがあっただけなのだ。
(カタログで探せば対処方法が見つかるかも)
いくらか悩んだが、結局いつもの回答に戻ってきた。
しかし、ダンジョン内でカタログに没頭する事態は避けたい。
俺はひとまずここでダンジョンを引き上げることに決めた。
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■モンスター解説「ストーンゴーレム」
石でできた自動人形。ダンジョンのゴーレムの場合は瘴気を動力源として動作する。ゴーレムは通常、作成者の命令に従って動くものだが、ダンジョン産の場合、都度命令する作成者はもたない。代わりに、人を攻撃し、死に至らしめる使命が刷り込まれている。そのため如何なる理由であろうとも、近づいた人間は無慈悲に攻撃を受け被害にあう。胴体に仕込まれた回路内に、その使命は刻み込まれており、胴体に強い衝撃や斬撃を与えることで、動きを止めることができる。
構成する石を破壊するか、回路を損なう以外に止める手立てはないので、火や毒、呪い等は効果がない。また精神や魂に作用する魔法も同様に効果がない。
精神や魂は持たないが、深い階層に出現するゴーレムは高い知性を有する者も多い。人形だからと舐めてかかった冒険者が、ゴーレムに嵌められて死んだ例は後を絶たない。
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