D&C(ダンジョンズ&カタログズ) ~運動音痴で生き物殺すのが苦手な俺でもダンジョン攻略できますか?~
東雲Penギん
1章
#1 はじまり~セカイから落ちる~
気づいたら変な場所にいた、というのがそのときの感想だった。
今日は休みで起きたのが昼過ぎで食べ物がなくてコンビニに向かう最中で近道して道を曲がってちょっとめまいがして少しつまづいた感じがしたから足元をみて、顔を上げたら……
そこは見慣れぬ外国であった。
石造りの建物に、見慣れぬ食材を並べ売る露店の数々。
そして大通りの先に浮かぶ、あまりに巨大な灰色の岩の塊。
「……は?」
思わず口から声がもれる。
俺はさっきまで東京の住宅街にいたはずだ。なのになんだ、このいかにもな中世の街並みは。
あまりの事態にちょっと混乱していた。
どこを見回しても、さっきまでの日本の風景は一瞬で失われている。
ポケットをあさり、スマホを取り出してみる。
『14:09 圏外』
正常に動作したが、圏外。自宅の周辺で圏外になった試しがない。
ここは、さっきまでいた東京とは別の場所。
事実が目の前の光景を後押ししていた。
「そこのお兄さん、大丈夫かい?」
あまりに挙動不審だったせいだろうか、近く露店のおばちゃんが心配して声をかけてきてくれた。
恰幅の良い、いかにも人の優しそうな中年女性で、心配してくれているのが目にとれる。
ただしかし、彼女はあまりにも外人すぎて、俺にはここが"日本でないこと"が強く意識された。
「え、ええと……」
あきらかに外人なのに、言葉が通じている。
違和感に、まず戸惑いを隠せない。
「お兄さん、堕ち人だね。たまにいるんだよ」
やーねーと彼女は世間話をするように手を前にふった。
外人だけど、手の振り方は大阪っぽかった。これは万国共通なのか?
なんだか少しほっとする。
「堕ち人?」
明らかに日本語だが、俺は聞き慣れない単語に首をかしげた。
「他のところから、落っこちてきた人達のことさね。皆お兄さんみたいに変な恰好をしてるからすぐにわかるよ」
落ちてきた……。どこから?
察するに、異世界転移的なことだろうか?
自分は、元の世界から落ちて、この世界にきてしまった、と。
あのちょっとした間に異世界に落ちた?
周囲を見回すと受け入れるしかないが、理不尽すぎて感情的にはまるで納得できなかった。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。あんたらみたいなのを助けてくれる施設があるんだ」
思い悩んでいるのが顔に出ていたようで、それを気遣うように「安心しな」と声をかけてくれる。
「街のルールでね。堕ち人をみたら、そこに案内することになってるんだよ」
そういって今立っている道の奥を指さし、
「この先に真っ赤な建物があるから、そこを訪ねてごらん。他に赤い建物はないから見間違うことはないはずだよ」
「その施設の名前はなんというのですか?」
簡単とはいうが、念のために聞いておきたい。
「ダンジョン探索者寄り合い所。みんなは初心者ギルドって呼んでるね」
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