第7話

 男性は、「シャルロット?」と、語りながら近づいてくる。

 

 私は思わず、一歩さがってしまう。

 目の前で「どうしたのだ?」と、首を捻っている男性は、とても身長が高い。

 

 メイドをしているエルフよりも二周り以上は、背丈があると思う。

 それに横幅も鍛えているからなのか、服の上からも分かるほど筋肉が盛り上がっていて、とっても大好物です! じゃなくて……。

 つまり圧迫感があるわけで――。

 知らない男性に近づかれるのは、ちょっと恐い。


「ふむ……何も覚えていないというのは本当のようだな? シャルロット、私がお前の父親だよ?」

「お父さま……?」


 私の言葉を聞いた男性は小さく溜息をつくと眉間に皺を寄せたあと、「メロウ、これは一体どういうことだ?」と、エルフのメイドに問い詰めた。


「陛下。シャルロット王女様と中庭で散歩をしておりましたところ、シャルロット王女様が誤って湖に落ちてしまい……急いでお助けしたのですが――」


 私の父親に説明をしていると途中で言葉を切って私の方を見てきた。

 どうして彼女が私の方を見てきたのか分からない。

 でも、何か言い難いことを言おうとしているのだけは分かった。


「目を覚まされましたところ、私のことを覚えていなかったのです。ですから、陛下への報告を早めにしたのですが……」

「嘘偽りはないだろうな?」

「はい。間違いありません」

「そうか――。シャルロット、本当に大丈夫なのか?」


 父親と語った彼は近づいてくると、私を軽々と抱き上げて――。

「リー・ステイル・アルス・レメイル」


 目の前の男性が言葉を紡ぐと、空中に文字が浮かびあがっていく。

 空中に浮かんだ黄色い文字を見た後に、「何か魔物や悪魔に取り憑かれたと言ったことはないようだな。魂の色もシャルロットと同じであるし」と、一人呟いてきた。


 どうやら目の前の父親である男性は、私が何かに取り憑かれていたと思っていたらしい。

 疑惑は晴れたようだけど――。

 これから、どうすればいいのか……思いもつかない。

 

「魔術で調べたかぎり、体にもおかしな場所は見当たらないな。もしかしたら記憶が混乱しているのだけかもしれんな」

「アレス!」

「ハッ!」


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