第28話 深まる碧と茜の絆
グラウンドに集まった人たちに挨拶をした後、わたしとアオイはいつものように帰り道を二人で歩いていた。
「三つ目の依頼、終わったんだよね。なんか、長いような短かったような、不思議な感覚」
わたしは薄暗い空を見上げながらつぶやく。
「ああ。今回もキミの活躍はお見事だったよ、アカネ」
「わたしだけじゃないよ。秋津くん自身の思いや、その周りの人たちの思いがあったからこそ、今回は上手くいったんだ」
言い切った後、わたしはアオイの頭の上に手を置く。
「そして、もちろんアオイもね!」
いつものように抵抗してくるかと思ったけど、今のアオイにその気配はない。
「アオイ?」
「いや、ボクは今回、大したことをしていない。これは、謙遜じゃなくて事実だ。いや、今までも、アカネがいなかったら、きっとうまくはいってなかっただろう…………。ボクは人と話すのが上手くないから…………」
アオイはうつむいて歩き続ける。わたしはアオイの頭の上に置いた手をガシッと掴んでアオイを立ち止まらせる。
「いたっ! なんだいいきなり!」
「いつもの偉そうな態度はどうした! アオイらしくないよ!」
「う……ボクは事実を言っただけで…………」
「わたしは! わたしは…………アオイがいたから、アオイが隣にずっといてくれたから、頑張れたんだよ…………?」
「アカネ……」
アオイは目を見開いてわたしを見る。
「人なんだから、不得意なことがあるのは当然だよ! わたしにももちろんある! だから、二人で補い合えるんだよ!」
「だから、アオイはいつもみたいに偉そうにたたずんでればいいの! わたしは、そっちのアオイの方が好きだから!」
「…………」
アオイの唇が震える。
「! アオイ、ちょっと来て!」
わたしはアオイの手を引っ張って早歩きする。そして、目的地に到着してから手を離す。
「ここは……?」
「プリクラ! いっしょに撮ろ?」
「え? ボクは……」
「いいから早く!」
わたしはアオイの手をぐいぐい引っ張って筐体の中に入り、アオイが口をはさむ間もなく操作を始める。
「撮るよ。アオイ、笑って?」
「いや、ボクはむぐっ」
わたしはアオイの口に人差し指を突っ込んで無理やり笑顔をつくる。そうしてわたしは気が済むまで写真を撮り続けた。
「はい、アオイ」
わたしはアオイに撮ったプリクラを渡す。
「これはわたしとアオイの友達の証! これがある限り、わたしたちはずっといっしょだからね!」
「…………アカネ」
アオイは撮ったプリクラを見ながらわたしに話しかける。
「何?」
「もう一回だ! もっとキリッとした顔で撮る!」
「…………」
わたしは一瞬固まった後、自然と笑顔になる。
「ダメです! わたしのお金だし、こっちのアオイのがかわいいよ?」
「いやだ! 撮り直そう! 今すぐにだ!」
わたしはぶーぶー言うアオイの頭に手を置く。
「やっぱり、アオイはそうでなくっちゃね」
アオイはふう、と息を吐く。
「アカネ、キミはやっぱりすごい人間だ。…………でも、ボクのが優れている部分だってたくさんある。だからいつでもボクに頼るといいさ」
そしてわたしたちはお互いに笑い合う。
きっとわたしたちなら大丈夫。どんなことがあっても乗り越えられる。わたしはそれを今日、確信した。
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