選定公と街育ちの王女
その国の習わしで、次代の王は当代の王の子から選定され決められることになっていた。長子相続ではなく、兄弟姉妹の中で一番優秀なものから。たった1つの例外を除き、血のつながりのあるものは嫡子非嫡出子にかかわらず選定には参加する義務がある。
街の酒場で働いていた少女も例外ではない。
ある日近衛兵が酒場に押しかけ、少女は強引に王宮へと連れていかれた。
そこで聞かされる選定の儀式。しかもその儀式は必須参加にも関わらず条件が付いていた。条件がそろわなければ王宮で一生飼い殺し。元の生活にはもう戻ることはかなわない、ということだった。
条件はたった一つ。
上級貴族の推薦を取り付けること。
・これは協力者を手に入れる手腕があること
・社交性があること
・自分をいかに売り込めるかということ
王座についた際に、政務が滞りなく進めることができるようにという理由からだ。今のうちから権力争いをし、反対派を押さえつけて勝ち取ること。国民の生活に影を落とさぬようにという配慮だ。
選定の儀式が行われるきっかけとなったのは、儀式を決定した国母と呼ばれる女王の前の時代。王家の毒殺が横行していたことからによるものであった。
兄弟たちはすでに公爵たち貴族の推薦をうけており、庶民暮らしのぱっとでの少女に手を貸そうとするものはいない。
長男王子は少女を憐れんで、ならばと選定公と呼ばれる貴族を紹介する。
この選定の儀式を決定する権利を持つ唯一の貴族、選定公。
今のままでは誰にも見向きもされず人生は閉ざされる。
ならばヤケクソでも試す価値はあるのだと、少女は王宮の許可を得、選定公のもとに向かった。
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