私のじゆう帳
中邑宗近
しずかな図書喫茶
古い時代を感じさせる木材を白いコンクリートと合わせて作られた壁。
窓には大正硝子がはまっており、外の景色はにじむように揺れる。
植木鉢に植わった緑が窓際や、店の梁、部屋の隅をグリーンに控えめに彩る。
街角にあるちいさなちいさな喫茶店。
注文票に飲み物と読みたい本を書くと店に所狭しと並んでいる本棚から本を取り出し、おいしい飲み物とともに提供される。店内はさほど広くはないのに、本棚の割合は多いし、注文される本は必ず店にある。
店は私語厳禁。
店のオーナーは事故でしゃべれなくなってしまったらしい。
自分の本を持ってきてお茶を飲むだけでもいい。学校の宿題を広げてもいい。ただ静かに、沈黙を味わう喫茶店。ページをめくる音とペンで物を書く音、カップがソーサーに上がる音、スプーンがカップに当たるひそやかに高い音。
時折人の出入りの際になるベルが一番大きい音でなくてはならない。
そんな喫茶店の入り口はいろいろな数多くある異世界に通じている。
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