百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.9-269 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜グルーウォンス王国に隠れ潜む古き蛇の流れ〜 scene.2
Act.9-269 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜グルーウォンス王国に隠れ潜む古き蛇の流れ〜 scene.2
<三人称全知視点>
マシャナの呼び掛けに応じる形で現れたのは武士常装の直垂を纏い、腰に二本の太刀を帯びた姿の二本の大きな角を頭から生やした美青年だった。
「先程の武装闘気は実に見事でした。適切に滝を排除し、この場所までの通路を築いてしまうとは……異世界の『鬼』もなかなか素晴らしいようですね。ああ、『鬼』ではなく『魔物』というのでしたか?」
『……貴方は何者なのかしら? 『這い寄る混沌の蛇』の仲間というには少々毛色が違うようだけど』
「私ですか? 私は
「……つまり、敵であるということに違いはないということですね」
「えぇ、そちらの高貴な身分と思われるお方の仰る通り。……しかし、よくこれだけ霸気のある者を集めたものです。もしかしたら、私はここでまた更に『強さ』の実態に近づけるかもしれない。貴方達の思う『強さ』と何ですか? 例えば、仲間の窮地を前に、大切な誰かを救うために圧倒的な力を得る者がいます。例えば、叶えたい野望のために力を得る者がいます。団結の強さ、孤高の強さ、正しい強さ、悪しき強さ……『強さ』とは一体何なのでしょうか? 皆様の『強さ』をこの私に是非お教えください!!」
白銀夜叉は鞘から剣を抜き去ると、一瞬にして榊と距離を詰めた。
『――ッ!? 俊身、それに神速闘気!? それに、剣に纏っている力は……武装闘気と覇王の霸気!?』
「先手必殺――
膨大な覇王の霸気を乗せた斬撃が榊に放たれる……が、榊の目の前に巨大な木の盾が一瞬にして展開され、白銀夜叉が放った斬撃は防がれる。
『この盾は破らせません!!
『助かったわ! 榎さん!』
榎が咄嗟に展開した木の盾に榊が膨大な武装闘気と覇王の霸気を乗せたことで防壁を展開――込められた霸気が白銀夜叉の霸気を上回ったことで白銀夜叉の攻撃を防ぐことに成功したのである。
「ほう、凄まじい霸気ですね! そうこなくっちゃ! まだまだ行きますよ!
白銀夜叉の剣に膨大な覇王の霸気と共に純白の霊力が乗せられる。
「霊力の扱いは鬼斬の専売特許ではないのですよ! 貴方達も怪異ならこの攻撃は苦手なのではありませんか!!」
白く輝く霊力は白銀夜叉の斬り上げと共に空中に舞い上がり、展開された木の盾を越えると勢いよく榊目掛けて落下する。
『星砕ノ木刀!』
「ほう、あの攻撃を真正面から打ち破るというのですか……見事、実に見事!」
武器の用意が間に合わなかった故に止められなかった一度目の攻撃――しかし、しっかりと武器を用意する時間を用意できれば降り注ぐ白き霊力の奔流を打ち破ることも不可能ではない。
「では、これならどうでしょうか?
白銀夜叉は膨大な霊力を無数の雨粒型の塊へと変えて空に打ち上げた。
一つ一つに膨大な覇王の霸気が込められたそれは上空より降り注ぐ無数の弾丸と化して榊、槐、椿、榎、楸、柊に殺到する。
『樹法秘術・木千手掌』
榊、槐、椿、榎、楸、柊は攻撃を防ぐべく万力の如き猛烈な力を持つ無数の木の掌を生み出て武装闘気と求道の霸気、覇王の霸気を纏わせた。
その掌を傘代わりにして降り注ぐ膨大な霊力の雨を受け止める。
「ほう、夜叉ヶ池まで受け止めるというのですか!! ……これは少し困った。これ以上戦えば私も死を覚悟せねばならなくなる。しかし、私はここで死ぬ訳にはいかないのです! 更なる『強さ』をこの目で見たいという欲求は今なお私の中で燃え上がっていますからね!」
『……まさか、ここから逃げる気かしら? こちらは六人、そう簡単には逃げられないわよ!』
「ここまで強い貴方達に敬意を表し、一つ教えて差し上げましょう。『王の資質』を使いこなす一握りの強者にはあらゆる闘気のその先の扉を開くことができるのですよ! これが神速闘気を超えた究極の速度に至る力――刹那の神闘気です!
金色の光が白銀夜叉を包み込んだ瞬間、榊達は白銀夜叉の姿を完全に見失った。
◆
榊、槐、椿、榎、楸、柊が白銀夜叉の相手をしている間、マシャナ達を相手取ることになったのは必然的にトーマス、ルーネス、サレム、アインスだった。
人数的には多数の相手を少数で相手するという状況になってしまったが、強力な霸気の使い手である白銀夜叉に戦力を集中させる必要があったため致し方ない。
「「「「「
「「「「
「ヒヒヒッ! 一瞬にしてあの世へ送ってやるよ!
「「「「
トーマス、ルーネス、サレム、アインスは圓が開発した一定時間あらゆる闇系統魔法を跳ね返すことができるオリジナルの光属性魔法を発動し、四人の男女が放った
「「「
マシャナ達は瞬時に武装闘気を纏って防御に転じたが、ルーネス、サレム、アインスは躊躇わずに生成した合計七つの巨大な結晶に分担して大量の武装闘気と覇王の霸気を纏わせ、マシャナの配下である七人の『這い寄る混沌の蛇』の蛇導士目掛けて放つ。
巨大な結晶は七人の蛇導士の目の前で炸裂――生じた無数の細かい結晶が七人の蛇導士の身体を貫いて絶命させた。
「
トーマスは無数の聖属性と火属性の魔力を融合した浄焔により生まれた剣を作り上げると残ったマシャナを含む三人に向けて放った。
マシャナ達も武装闘気を纏って防御を高めるがつい最近闘気の存在を知ったばかりの蛇導士の闘気の練度はお世辞にも高いとはいえない。トーマスの放った浄焔の剣はマシャナ達を容易く貫いて焼き尽くした。
「ふむ、これで『這い寄る混沌の蛇』の蛇導士ら全員討伐できたな」
『……こちらは取り逃してしまいましたわ』
「榊様達で討伐ができないなら私達でも討伐は難しかったでしょうし、あまり気を落とすことでもないと思いますよ」
落ち込む榊達を励ますためにルーネスが声を掛ける。
榊達が相対した白銀夜叉は終始本気を出している様子では無かった。
榊達の闘気の練度を戦いの中で測り、本気を出せば己自身が命を落とす可能性があると悟って今回は全力で撤退行動を取ったが、あのまま白銀夜叉が戦闘の続行を選択していれば榊達が命を落としていた可能性も十分にある。そうなれば、榊達のことを心から大切に思っている圓は深く傷ついただろう。
戦いに身を投じる以上は生じる犠牲は覚悟しなければならないが、圓が目指すのは味方の犠牲が一人も出ない戦いである。
危なくなればすぐに撤退するようにと臨時班のメンバー全員に圓からの通達が行っている。その圓の思いを無視してまで追う必要のないリスクを背負う必要はない。
「しかし、『王の資質』を使いこなす一握りの強者にはあらゆる闘気のその先の扉を開くことができる……ですか。今回、白銀夜叉から得られた情報には値千金の価値がありますね」
『確かに、白銀夜叉が刹那の神闘気と呼んでいた力は神速闘気の派生と思われますが、あの力を纏った白銀夜叉は私達の見気でも捉えられない異常な速度でした。……後ほど圓様に私達の記憶も交えて報告致しますわ』
「それが一番分かりやすいだろうな。ああ、白銀夜叉に関する報告は私の方でしておこう。丁度、学院都市セントピュセルに行く用事があったからな」
トーマスが学院都市セントピュセルに行くとなれば十中八九ラフィーナ絡みだろう。
学院都市セントピュセルに潜入している圓のことが少し心配にはなったが、まさかミレーユの不戦勝で生徒会選挙が締め括られるのはあまりにも生温いと考え、圓を巻き込んでラフィーナをコテンパンに負かしてしまおうなど考えているとは露ほども思っていないルーネス達であった。
その後、トーマスは翌日に学院都市セントピュセルを「白銀夜叉の正体を圓から聞き出す」という名目で訪れ、圓を生徒会選挙に巻き込むように仕向ける。
その更に翌日、榊から「刹那の神闘気に関する情報を提供したい」という連絡を受けた圓は「わざわざ情報を細切れにして……榊さん達に任せればいい話だったじゃないか……トーマス先生、白銀夜叉の正体を知りたいっていう名目だったけど、やっぱりボクを生徒会選挙に巻き込む方がメインだったじゃないか。……ラフィーナ様をコテンパンに敗北させたいっていうトーマス先生の私怨が混じっているのは分かるけどさぁ。ボクってあんまり史実を変えたくないんだよ! まあ、結局辿り着くゴールは一緒なんだけどさぁ! 本当に大人気ない人だねぇ!!」と叫んだとか、叫ばなかったとか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます