百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.9-190 武闘大会、開幕! 暴風雨のバトルロイヤル。 scene.5
Act.9-190 武闘大会、開幕! 暴風雨のバトルロイヤル。 scene.5
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
「
先手必勝と言わんばかりにノイシュタインは聖槍の破壊の力を宿した黄金の光線を放ってきた。
何者よりも速く、絶対標的を逃さず、当たれば一撃必殺の聖槍の力の具現化――黄金の光線。でも、ノイシュタインはこの一撃で勝てるとは確実に思っていない。恐らく、狙いは時間稼ぎか。
光と化してノイシュタインの攻撃を躱すと、足から光条と化した蹴りを放つ。流石に八賢人の一人をこの程度で倒せるとは思えないけど、さて、どういう対応を取ってくるかな?
「ほう、これが見気か。……未来視とはなかなか恐ろしい力だな。そして、これが神攻闘気、神堅闘気、神速闘気、神光闘気か。金剛闘気、剛力闘気、迅速闘気を束ねたものが武装闘気だったな……ほう、これか。そして、これが――」
「――ッ! 覇王の霸気ッ! 使い始めでこのレベル……いえ、八賢人クラスなんだからこの程度の霸気は使えて当然ですか」
「魂魄の霸気はまだ使えないが、求道の霸気と覇王の霸気の使い方は分かってきた。
ノイシュタインはネハシムの固有魔法で創り出した羽のうち三枚の翼をスクリュー状にして武装闘気と覇王の霸気を纏わせてからボクに向かって放ち、更に翼の一つを炎へと変化させ、通常の魔法少女であれば一瞬にして灰になる程の高火力火炎放射に覇王の霸気を纏わせて至近距離から浴びせてきた。
しかし、そのどちらの攻撃でもボクを仕留めるには至らない。
「やはり硬いな。だが、これならば僅かな傷くらい刻み込める筈だ。――
だけどノイシュタインの『
流石に『
そして、そのヒビという綻びは雨垂れ石を穿つという諺通り大きな綻びへと発展しかねない。
零と一は全然違う。ノイシュタインとの戦いはできる限りこの一の被弾を避けないといけない。……小さな隙も許してくれる人じゃないからねぇ。
ノイシュタインの渾身の刺突を光の速度で躱す。流石にノイシュタインも光速移動には対応できないからねぇ……このまま見気を極めていったら、少し先の未来で対応できるようになっていそうで怖いけど。
「圓式極速比翼!」
そして、双刀から圓式と《血動加速》と《太陽神》の光速移動を掛け合わせたボクの見気でも残像どころか大気を擦過する白い輝きを捉えるだけで精一杯の極速の斬撃を放ち、ノイシュタインを撃破する。
咄嗟に武装闘気と求道の霸気を纏って防御に転じたその判断速度は流石としか言いようがないけど、ノイシュタインはまだ霸気を会得したばかりだからボクの霸気を上回ることはできなかったみたいだねぇ。まあ、上回ったとしてもここまで速度――つまり、破壊力を得た斬撃を本当に受け止められるかは微妙なところなんだけど。……もしかしたら、求道神と覇王神を同時に発動していても防ぎきれないかもしれないねぇ、この一撃。我ながら恐ろしい剣技だよ。
とりあえず、これでこの周辺にいる猛者は全滅かな?
アルベルトとギルデロイは向こう岸のようだけど、実力を見ておきたい人がまだまだこの住宅街側にいるようだから、アルベルト達のことは後回しにして目ぼしい人材達の実力を見に行こうか。
◆
纏っていた霸気を解除して、見気の範囲を拡大――戦況を確認する。
シューベルト、トーマス、レナード、ルイーズ、カリエンテ、玻璃、紫水――
今回の目的は目ぼしい人材を見つけることだからねぇ。
各地で激戦が続いている。参加者同士の潰し合いで人数はかなり減ってきているけど、その中で勝ち抜いた猛者達の中でもボクの求める最低ラインに達している者は少ない。
該当者は二名……かな?
一人目は昇格したばかりのBランク冒険者でパーティを組まずにソロで成果を上げている
ユーニファイドでは珍しい魔物を従えることができる
もう一人はメアレイズと面識があるという元ブライトネス王国の近衛騎士で、ムーランドーブ王国を拠点とする冒険者のザックス=ヴォルトォール。
この二人は使節団の一員としてブライトネス王国にやってきたと思われるブルーマリーン王国所属の騎士ポートマス=シトギーザと三つ巴の戦いを繰り広げているらしい。……ザックスといい、ポートマスといい、君達護衛のために来たんだよねぇ? なんで王宮を離れて王都の
三角形の頂点の位置に位置取り、互いに警戒の視線を向けあっていた三人は空歩を使って上空を走り、三人の丁度真ん中に降り立ったボクを見て三者三様の反応を見せた。
大きく後退って汗を滝のように流し出したザックス、戦いに水を差されて若干不機嫌そうな表情になったポートマス、そして警戒の視線を向けるベンヤミンと彼の従える魔物達――スライムに、
「折角の勝負に水を差してしまったこと、謹んで謝罪致しますわ」
「……アネモネ閣下と勝負なんて無理だ。国王陛下の依頼で護衛をしてブライトネス王国に戻ってきて、少しだけ休みをもらえたから久しぶりに武闘大会に出てみただけなのに……無理ですって! あのおっかないメアレイズ閣下の師匠で『世界最強の剣士』なんかに勝てる筈ありませんよ!」
「……何、この小娘が『世界最強の剣士』だと?」
「アネモネ閣下、話には聞いていましたが恐ろしい方ですね。……スラリン、サザンラス、グリファ、君達も感じますか? この濃厚な殺気……全く、なんで武闘大会に野生のラスボスがいるのでしょうね?」
ボクを侮るポートマスに対し、メアレイズから話を聞いていたのか、『怠惰』戦の一件で覚えられたのか泣き言を言い始めるザックスと、ボクが纏う僅かな霸気を感じ取って警戒を露わにするベンヤミン達。……というか、このネーミングセンスといい、「野生のラスボス」という表現といい、
「皆様のご想像通り、これから私は御三方の戦いに乱入させて頂きます。三人で協力するも良し、四つ巴の戦いを演じるも良し、どちらでも構いませんが、戦う前に質問させて頂きたいことがあります。……ザックスさん、
「……俺が
「少なくとも私とメアレイズ閣下は貴方が
「……俺が
ボクの周りにはメンタル的な意味合いで強い人が多い。大切なもののために何度でも立ち上がる者、死の恐怖なんて笑い飛ばして暴れ回る者、形は様々だけど、そういう人達がボクの周りにはいっぱいいて、そういう人達が
でも、実際に死の恐怖を踏み越えることができる人なんてほんの一握り。あの『怠惰』戦は職業軍人である騎士にとってもやっぱり恐ろしいもので逃げ出す人の方が多数派だった。
ザックスは確かに逃げ出した側の人間だったかもしれない。でも、それは仕方がないことだったとボクは思う。怖いなら逃げたっていい、それを否定するつもりはボクにはない。
それでもザックスは冒険者として再び魔物に立ち向かった。トラウマになっていてもおかしくない、そういう戦場に一度でも立った彼が再び剣を握るまでにきっと壮絶な努力があったのだと思う。
その苦しみを乗り越えてザックスは冒険者となり、崩壊寸前のムーランドーブ伯爵領で魔物達と戦ってきた。
そんな彼と共に戦いたい。ザックスが
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