百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-140 子爵令嬢の社交界準備 scene.4
Act.8-140 子爵令嬢の社交界準備 scene.4
<一人称視点・アルマ=ファンデッド>
「そういえば今回の顛末は聞いていて? それとも、ローザならとっくの昔に把握しているかしら?」
「……いえ、聞いておりませんわ。それに、シェールグレンド王国はノーマークでしたので……不勉強で申し訳ございませんわ」
「まあ、確かに貴女にとってはその程度の小国とのいざこざの話なんて些事よね。聞いたわよ? たった一日でラングリス王国の革命を平定して多種族同盟に加盟させてしまったのでしょう? 正式発表はまだのようだけど」
……ローザ様って本当に一人だけスケールがおかしいわよねぇ。たった一日で革命って解決できるものなのかしら?
「この件はスティーリアさんに調査を依頼していたものなので、実際には一日で解決という訳ではありませんわ。……情勢を知るために女王陛下を拉致したと連絡を受けた時はヒヤヒヤしました」
「あらあら。……そういえば、スティーリアさんはローザの誕生パーティの時もラインヴェルド相手に牽制していたわね。一見お淑やかで優雅に見えて、その心はローザへの愛に燃えている。とても、氷の
……スティーリアさんってローザ様のエスコート役として挙げられていた人よね。……まさか、
「まずは、シェールグレンド王家との関係について詳しく説明させてもらうわ。シェールグレンド王家からは以前にプリムラの結婚話を持ち掛けられたことがあるけれど、それはお断りしたの。……その理由は表向き向こうは前回の友好として嫁いできた公爵夫人が子を成していないから、というものだったけれどこちらとしてはその公爵夫人が存命中に同じような形をとるのは望ましくない……とね。本来なら向こうの王太子の妻、つまり次代の王妃にと望むべきだったのだけれど向こうはお家騒動があったばかりでプリムラを側室に、なんて言ってきちゃったから娘を溺愛するあのバカ息子が一方的にお断りしちゃったのよ。流石に外交的に問題がないように、一時的に関税を緩めたりなんかもあったのだけどね」
「……その件、ボクは知らされてないのですが?」
「だって、貴女に言ったら暴走してあちらさんの国を灰塵に帰してしまうでしょう?」
「あらいやですわ。……ボクも流石に鬼じゃないんでねぇ、一般人にまで手をあげないよ。王家の人間とバカなことを言っている貴族を一族郎党皆殺しにする程度で留めるよ」
いえ、その時点で随分と恐ろしいわよ!
「流石にそれはやり過ぎだからラピスラズリ公爵家には内密にしておいたのよ。……ラインヴェルド達を止めるのも苦労したわ……元々強かったのだけど、貴女のおかげで国王付近の面々が一国の騎士団総戦力に相当する……あるいはそれ以上の戦力になってしまっているから、あの国を地図上から消すなんて余裕で遂行できてしまうものね。勿論プリムラにも知られぬように秘密裏に片付けたわ。それに向こうが打診してきたのも非公式。つまりまだお家騒動が落ち着いていないから、ブライトネスの後ろ盾が欲しかったのね。でも向こうの王太子にはすでにあちらの公爵家から嫁いだ女性がいてすでに御子もいらっしゃる上に側室もいる状態。流石に正妃の座を挿げ替えるのは無理と考えたらしくて結果、側室にということよ。焦りもあるのだろうけれど……あれが王太子ではあの国も未来は暗いわね。せめて腹心の部下達に相談しての非公式な書状ならきっと止める人物もいてくれただろうに、どうも調べたら独断だったようだし。勿論これは王家としての話なのかと、あの子があちらの陛下に互いしか知らぬ連絡法で問い合わせたところ分かったという話よ。どこの国も同じで側室たちが己の子を玉座につけようと醜く争っていて、王が蚊帳の外だなんてね。……あの子、物凄い悪い顔をしていたからきっと『クソ面白い』ことに巻き込まれるでしょうね」
「あの面白いこと好きのクソ陛下ですからね。さて、どんな余興をするつもりなのやら。いずれにしても、その王太子は長生きできそうにありませんね」
くすくす笑うローザ様と王太后様は屈託なくて、本当にただ楽しそうに笑う。
でも、その内容は他国の恥ずかしい裏事情、そしてこれからシェールグレンド王家で起こるであろう悲劇。何が起こるかは分からないけど、血が流れずに終わる方が難しそうなドロドロとした話ね。
「そして、今回の一件にも関わることについてだけど……簡単に言うとね、シェールグレンド王国って織物と宝石が特産でしょう? 最近良いデザイナーが出てきたものだから、それで外貨を稼ごうと無い知恵を絞って愚かな行動をした貴族がいたみたいでね、結果として宝石が暴落したそうよ。そうなると、経済を中途半端に理解している人がパニックになるのよね。それが、今回の件の発端」
「……なるほど、ねぇ」
「それで、贅沢をしたがる公爵夫人を上手く利用してこの国から外貨をこっそり手に入れようという腹だったのでしょう? 先程の話にもあった側室が向こうの商家の出身で、調べてみたら公爵夫人の家に出入りしている商人の中に、その商会の名前があったみたいだし。……ローザ、何か説明不足なところがあったかしら?」
「いえ、なんでもありませんわ」
少し考え込んでいるようだったローザはすぐに笑顔になって何でも無い風を装ったのだけど……何か引っ掛かるところでもあったのかしら?
「アルマ、台本はもう覚えられたかしら?」
「……いえ、もう少しお時間を頂けませんでしょうか?」
お二人の話が恐ろし過ぎて、台本に集中できなかったとか絶対に言えないわ!!
◆
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
王太后様にお呼ばれした日の翌日、ボクは王女宮筆頭侍女の仕事を終えてからアンクワール、ジェーオと共にガネット商会に向かった。
「……姐さん、大丈夫なんですか? 相手はマフィアなんでしょう?」
「心配することはないと思うけどねぇ。大丈夫、マフィア程度なら本気で殺しに掛かってきたら条件反射的に殺せるから」
「……ローザさん、物騒過ぎます! もっと穏便に……」
「あら? アンクワールさんは邪魔な人を殺して排除してきたのではなかったかしら? ……以前は」
「…………本当にあの頃は愚かだったと思っています。思っていますから話題にあげないでください!!」
涙目になったアンクワールを見ていると、ちょっとだけやり過ぎてしまったかな? と申し訳なくなってきてしまうねぇ。まあ、反省しているんだし、過去は基本的にどうにもできないのだから過ちを乗り越え、改善していけたらそれで十分だと思うけど。
「今回は戦いにはならないよ? ……まあ、万が一あちらさんが失敗していたら、今回の件の担当者がバラバラの死体になるんだけど」
「「それはそれで、物騒過ぎる!!」」
「まあ、それ提案したのボクなんだけどねぇ」
「「そういえば、
……ボクってこの二人にどう思われているんだろうねぇ。
今回は名乗る必要もなく受付嬢(多分、中身は柄の悪いヤクザ)に案内され、前回と同じ地下にある応接室に向かった。
「さて、エリカ。改めてローザさんから頼まれた件についてこの場で報告してくれ」
「はい……バラバラ回避です! 無事、気取られることなくジリル商会の会頭と取引を終えました!!」
涙を浮かべて「殺されずに済んで良かったよ!」と喜んでいるエリカの姿になんとも言えない表情になるアンクワールとジェーオ。
「つまり、これにてファンデッド子爵家の借金問題は解決……ってことでいいんだよねぇ」
「勿論、綺麗さっぱり消えました。お約束通り、このエリカをビオラにお渡しします」
「そのつもりで今回はジェーオさんとアンクワールさんを連れてきたからねぇ。エリカさん、やればできる子だって信じていたよ!」
「絶対嘘ですよね! 絶対にバラバラにする気満々でしたでしょう!!」
「……まあ、ガネットファミリーによるバラバラ殺人事件が行われた後、こっそり回収して蘇生させるつもりではあったんだけどね」
「……そうじゃないかと思っていました」
「ところで、蘇生させる際にボク好みに顔や身体に弄り、性格が可愛らしくなるように記憶と人格を改竄させた場合って……それって元の人間と同一人物であると言えるのかな?」
「なんで恐ろしいことを考えているんですか!? まさか、もし私が殺害されていたら……」
「さあ、どうなっていたんだろうねぇ?」
震え上がるエリカ、ジェーオ、アンクワール、ガネットを除くマフィア達……あれ? マフィアも恐れるような話だった? ただ、ちょっとした思考実験の意見を聞いただけなのに。
「ということで、エリカさんはこれからビオラで働いてもらうことになる。希望があれば、お二人に伝えるといいよ。ビオラの人事権は幹部が握っているからねぇ」
「……姐さん! まるで姐さんに人事権がないみたいに言わないでください!」
「ほら、ボクって対して役立ってないし、会長といいつつもただのお荷物だしねぇ。真面目にしっかりと会社運営しているジェーオさんやアンクワールさんが仕切って行った方がいいと思うんだよ」
「……兼業しながら数日分のビオラの書類をたった一日で片付けてしまわれるブラック企業の社員も真っ青のローザ様にそう言われてしまったら、真っ当に働いている社員など誰もいないことになってしまいますよ! 寧ろ、もう少し私達に任せてゆっくりと休んでください! ローザ様の身がボロボロになってしまいます!」
「大丈夫大丈夫、徹夜とか慣れているし、可愛い女の子の笑顔を見れたら連勤七日はいけるいける!」
……ジェーオやアンクワールだけじゃなく、ガネット達まで可哀想なものを見るような目を向けてきたんだけど……ボクは好きでやっているだけだからこれについては何の問題もないんだよ?
「それと、ガネットファミリー内部の炙り出しについてもお疲れ様。……実際に居たんだって? 『這い寄る混沌の蛇』の教徒が」
ボクが尋ねると、途端にバツの悪そうな表情になるガネット以外のマフィア達。
「……えぇ、お恥ずかしい話ですが、ファンデッド子爵に声を掛けた男が『這い寄る混沌の蛇』の教徒でした。しかも、彼は他の公爵夫人に騙された男達にも借金を持ち掛けていたようでして……」
どうやら、今回の件……少し複雑になっているみたいだねぇ。
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