Act.8-73 高難易度大迷宮を超えた先、ゲートウェイの奥にて震える者〜最弱の唯一神・紫の女神アメジスタ〜

<一人称視点・リーリエ>


『まさか、こんなところで会うことになるとは思わなかったわ』


「ボクもまさかこんなところにいるとは思わなかったよ、紫の女神アメジスタ。ハーモナイアから大切なものを奪った君達をボクは許すことができない。確かにハーモナイアはこの世界の人々を作り物だと心のどこかで思っていた。……ボクに見せようと思っていたこの世界の住民達を侮っていた彼女にも怠慢があった。神の座に胡座をかいていた、世界を所有物にしてしまっていた彼女を許容できなかった君達がハーモナイアからその権利を簒奪した、その気持ちも分からない訳ではない。……でも、ボクはハーモナイアが見せたかったボクが一度は目指した理想、その景色を彼女と二人で見たいとは思っている。ハーモナイアの気持ちは嬉しかったからねぇ。彼女の気持ちに共感したし、彼女はもう一度やり直すチャンスを得るべきだと思っている。対等な相手となったキャラクター達のいる世界で、作り物じゃなくなった世界を眺めるんじゃなくて、二人で、このユーニファイドの地に立って見てみたい。君達はハーモナイアから力を簒奪し、その存在を完全に抹消しかねなかった。それは果たして、ハーモナイアのやった行いに釣り合っているだろうか? 話し合うことはできなかったのか? ボクはボクの大切な家族が傷つけられることを許容しない。容赦はしないよ、アメジスタ」


『どの道許されるなんて思わないわ。逃げられる訳がないのだし、好きにすればいいわ。……でも、最後に一つだけ教えて欲しいことがあるわ』


 『アメテュストゥス・ルーメン!』と玲瓏な声が響き、アメジスタの手に巨大なアメジストの結晶が現れ、結晶から無数の紫の光条が放たれた。

 『不思議のダンジョン;ゲートウェイフロンティア』のラスボスであるアメジスタの専用魔法技が炸裂する。


 血相を変えた欅達が庇おうとしたけど、ボクは制して攻撃を直撃で浴びた。

 ゲームでは脅威の火力を誇ったこの魔法であってもボクを仕留めることはできないと確信していた。


『……私の奥の手「アメテュストゥス・ルーメン」。分かったかしら? 私の気持ちが。私はね、弱かった、最弱だった。『唯一神』としての力を得たところで、他の神に勝る力は何一つ持ち得なかった。便利屋扱いされ、それでも捨てられないように利用されていることにも耐えながらここまで生きてきた。……その最弱の末路がこれよ、命と『管理者権限』を奪われそうになって、命からがら逃げ出して、迷宮に逃げ込んでブルブルと震えることしかできない惨めな女神。……百合薗圓、何故、貴女は私を冷遇するの! なんで他の神には力を与えたのに、私はこんなに惨めな思いをしないといけないのよ!』


 見気を使えば、彼女の思いが痛いほど分かる。

 ……ミーミル=ギャッラルホルンに捨てられ、メリダに命を狙われ、逃げて逃げて逃げて……辿り着いたのがここだった。


 ……最初は殺せば良かった。殺して『管理者権限』を奪えばそれでいいと思っていたけど、それはもうやめだ。


「端的に言えばシステムの違い。アメジスタ、君のゲームは他のゲームに比べたら確かに様々な面で不利にならざるを得ないところはある。真っ当に戦おうとしたところで勝ち目はない。その弱さのコンプレックスを抱えてこれまで苦しんできたことはよく分かったよ」


 そう、よく分かった。でも、分かっただけ。同情の余地はあるけど、でも、ボクは同情しない。

 ボクの気持ちは彼女にとっては酷かもしれないけど、それでも、ボクは彼女に、アメジスタに言わないとダメだと思っているから。


「なら、何故変えようとしなかった? 強くなろうとしなかった? 方法はあった筈だよ? この世界はゲームじゃなくて現実なんだから。君がゲームの枠に囚われていたのなら、ハーモナイアと全く同じだ。……酷いと分かっていてもボクは君に言わないといけない。それは甘えだよ。ミーミル=ギャッラルホルンとコンビを組むことを選んだのは君だ。その文句を言われる覚えはボクにはない」


 あまり喜ばしいことではないけど『這い寄る混沌の蛇』は独自に魔法を開発している。既存の枠を超え、魔法の無かった世界の者達が魔法を研究し、使えるものにしている。

 この世界は最早ゲームではない。神々が自分達はシナリオの奴隷ではないと、人形ではないと認めさせたのがハーモナイア殺害では無かったのか?


「はぁ……分かったよ。ちょっとだけ同情しちゃったからねぇ。アメジスタ、君が強くなるのに協力するよ。その代わり、『管理者権限』は返して欲しい」


『……勿論、返すわよ。これを持っていたってミーミル=ギャッラルホルン達に狙われるだけだからね。……でも、本当にいいの? 私達のことを恨んでいたんじゃないの?』


「君、ハーモナイアの殺害に加担していないでしょう?」


 アメジスタの目が大きく見開かれる……勘だったけどやっぱりそうか。

 なんとなくだけど、彼女がハーモナイア殺害に手を貸していないと、何故だかそう思ったんだ。


『驚いたわ。……分かった。百合薗圓、貴女にお願いするわ。――私を強くして。対価は私の持つ唯一神の『管理者権限』と、ハーモナイア殺害事件の真相。これでどうかしら?』


「――乗った!」



<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト>


 まあ、不憫系美女女神をボクが無慈悲に殺す……なんてことがある訳がなく。

 欅達もなんとなくこうなるんじゃないかって思っていたみたいだねぇ。


 アメジスタとの取引で、『不思議のダンジョン;ゲートウェイフロンティア』の『管理者権限Level.Ⅱ』を獲得し、同時に『不思議のダンジョン;ゲートウェイフロンティア』の『唯一神』の称号を獲得した。

 これで、『管理者権限』はハーモナイアから受け取った最後の一ピースと、『裏切りと闇の帝国物語〜Assassins and reincarnator』、『不思議のダンジョン;ゲートウェイフロンティア』、乙女ゲーム『スターチス・レコード外伝〜Côté obscur de Statice』の『怠惰』と『強欲』、MMORPG『Ancient Faerys On-line』の部分コピーということになったねぇ。


 それから、アメジスタから有力な情報を二つ獲得することができた。


 一つはハーモナイアの殺害に関わったのは『World Sphere on-line』の世界『スフェア』の創造神・智慧之神ヌースと『Eternal Fairytale On-line』の唯一神アイオーンであること。

 この二体がハーモナイアから奪った『管理者権限』を分配し、その後神々の『真の唯一神』を賭けた戦いが始まったということ。


 そして、それをアメジスタ以外の神は忘れさせられている。……というか、記憶を捏造されているそうだ。

 何故、アメジスタだけがそのことを覚えているのかということは彼女自身にも分からないらしい。アメジスタ曰く『私程度の存在では足掻いたところで何も変えられないと思ったんじゃないかしら?』とのことだけど……もしかすると、アイオーンはアメジスタがボク達の側につく可能性を予測していたのかもしれないねぇ。というか、アイオーンとヌースの全く真意が読めない。


 案外、他の神々が持っている『管理者権限』は全てコピーだったりしてねぇ。ミスルトウが持たされていたものみたいな……まあ、コピーと言ってもあからさまのものじゃない、本物そのままの制限が掛かっていない複製なんだろうけど。


 もう一つ、ハーモナイアを構成するデータはシャマシュが握っている。まあ、FDMMORPG『SWORD & MAJIK ON-LINE』を管理する電脳遊戯世界調整用超高度人工知能[Super advanced artificial intelligence program for game world adjustment]だし。


 結局、シャマシュを倒さない限りはハーモナイアを取り返せないってことねぇ。

 まあ、だからといって殺害を急ぐつもりはないけど。


 さて、屋敷に戻ってきたボクは早速強化を始めることにした。

 対象は迷宮統括者ギア・マスターのドミティア・λ・ラビュリント、リヒャルダ・δ・ラビュリント、ベラトリックス・β・ラビュリント、サトゥルニナ・ε・ラビュリントと、紫の女神アメジスタ。


 まずは迷宮統括者ギア・マスターの四人からだねぇ。


 名前NAME:ドミティア・λ・ラビュリント

 種族SPECIES劇毒粘性体デッドリィ・ポイズン・スライム古生粘性体の統率者ショゴス・ロード究極粘性体アルティメット・スライム粘性体の皇帝エンペラー・スライム迷宮統括者ギア・マスター

 所有owner:リーリエ

 HP:10,000,000

 MP:10,000,000

 STR:20,000,000

 DEX:10,000,000

 VIT:60,000,000

 MND:50,000,000

 INT:10,000,000

 AGI:10,000,000

 LUK:10,000,000

 CRI:10,000,000

 ▼


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・漆黒のドレスローブ

▶︎ラピスラズリ公爵家に仕える戦闘使用人のメイド服に幻想級の漆黒のドレスとユニークシリーズのメイド服の力を得て生まれ変わったドミティアのためだけの漆黒のドレスローブ。


スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【ー】、【破壊成長】


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:ドミティア/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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 名前NAME:リヒャルダ・δ・ラビュリント

 種族SPECIES暗黒魔槍術師ダーク・ランスマンサー首無しの騎士デュラハン不死の大魔術師エルダー・リッチ不死の王ノーライフ・キング死の支配者オーバーロード迷宮統括者ギア・マスター

 所有owner:リーリエ

 HP:50,000,000

 MP:10,000,000

 STR:55,000,000

 DEX:15,000,000

 VIT:32,000,000

 MND:30,000,000

 INT:10,000,000

 AGI:50,000,000

 LUK:10,000,000

 CRI:30,000,000

 ▼


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・暗黒魔槍術師の魔槍

▶︎魔界級の暗黒魔槍術師ダーク・ランスマンサーの魔槍が幻想級の暗黒魔槍とユニークシリーズの漆黒の魔槍を得て生まれ変わった暗黒魔槍術師ダーク・ランスマンサーに相応しい漆黒の魔槍。


スキル:【死呪の刃】、【ー】、【ー】、【破壊成長】


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:999,999/99,999,999,999【該当者:リヒャルダ/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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・暗黒魔槍術師の漆黒革鎧

▶︎魔界級の暗黒魔槍術師ダーク・ランスマンサーの鎧が幻想級の姫騎士の鎧とユニークシリーズの漆黒の革鎧の力を得て生まれ変わった暗黒魔槍術師ダーク・ランスマンサーに相応しい漆黒の革鎧。


スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【ー】、【破壊成長】


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:999,999/99,999,999,999【該当者:リヒャルダ/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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 名前NAME:ベラトリックス・β・ラビュリント

 種族SPECIES完全嵌合体アルティメット・キメラ獅身女面スフィンクス、シェセプ・アンク、迷宮統括者ギア・マスター

 所有owner:リーリエ

 HP:50,000,000

 MP:8,000,000

 STR:65,000,000

 DEX:30,000,000

 VIT:35,000,000

 MND:30,000,000

 INT:8,000,000

 AGI:59,000,000

 LUK:30,000,000

 CRI:30,000,000

 ▼


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清掃の神具ウルトラ・モップ

▶︎制作級の暗殺者専用刀、黒地の刀身に美しい模様の走るセラミックブレードとユニークシリーズの暗殺特化の刀の力を得て生まれ変わった暗殺特化の刀剣をモップの中に仕込んだもの。モップ自体にも幻想級の素材を使用しているため、モップのままでも戦闘力は高い。


スキル:【刀身透明化】、【ー】、【ー】、【破壊成長】


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:ベラトリックス/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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・天空侍女のヘッドドレス

▶︎ラピスラズリ公爵家に仕える戦闘使用人のホワイトプリムが幻想級のホワイトプリムとユニークシリーズのヘッドドレスの力を得て生まれ変わった究極のメイドに相応しいヘッドドレス。


スキル:【破壊王】、【ー】、【ー】、【破壊成長】


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:ベラトリックス/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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・天空侍女のエプロンドレス

▶︎ラピスラズリ公爵家に仕える戦闘使用人のメイド服が幻想級のメイド服とユニークシリーズのメイド服の力を得て生まれ変わった究極のメイドに相応しいお仕着せ。


スキル:【亜空収納庫】、【ー】、【ー】、【破壊成長】


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:ベラトリックス/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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・闇を征く使用人の飛翔ブーツ

▶︎ラピスラズリ公爵家に仕える戦闘使用人のブーツがヘルメースのサンダルとユニークシリーズのブーツの力を得て生まれ変わった究極の戦闘メイドに相応しい空飛ぶブーツ。


スキル:【超加速】、【ー】、【ー】、【破壊成長】

フレイバーテキスト効果:飛行能力


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:ベラトリックス/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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 名前NAME:サトゥルニナ・ε・ラビュリント

 種族SPECIES堕天使フォール・エンジェル悪魔皇デビル・エンペラー吸血鬼ヴァンパイア淫魔サキュバス迷宮統括者ギア・マスター

 所有owner:リーリエ

 HP:18,000,000

 MP:43,000,000

 STR:30,000,000

 DEX:45,000,000

 VIT:35,000,000

 MND:31,000,000

 INT:32,000,000

 AGI:49,000,000

 LUK:40,000,000

 CRI:10,000,000

 ▼


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・堕天使のミニドレス

▶︎ラピスラズリ公爵家に仕える戦闘使用人のメイド服に幻想級の漆黒のドレスとユニークシリーズのメイド服の力を得て生まれ変わったサトゥルニナのためだけの漆黒のミニドレス。


スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【ー】、【破壊成長】


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:サトゥルニナ/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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 まあ、こんな感じかな? ……やったことと言っても四人が新しい種族を獲得している間に装備を作っただけなんだけど。

 四人とも満足してくれたみたいだし、後は実戦で使って不足があれば補っていくって感じかな? まあ、これまで不足があったってことは無かったから大丈夫だと思うけど。


 さて、いよいよ次はアメジスタの強化だねぇ。えっと、まずは……。

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