百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-48 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。第二部 scene.4 上
Act.8-48 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。第二部 scene.4 上
<三人称全知視点>
第二回戦第四試合、第一回戦でリスティナ率いるパーティを壊滅に追い込んだDelphinium率いるNPCパーティは、一回戦とは異なり散り散りとなってそれぞれが少しずつ別のルートで敵の本陣を目指して行動を開始した。
一方、アクア達も本陣にポラリスを残して行動を開始した。
ドロォウィンとバチスト、フレデリカ、シューベルト、ファンマンとレオネイド、オニキス達漆黒騎士団の団長、副団長、団長補佐、副団長補佐のいつもの四人組――動き慣れたメンバーで敵の本陣を目指して動き出した彼らは、森のそれぞれの場所でDelphinium達と遭遇することとなる。
ドロォウィンとバチストはオルカ、フレデリカは柑橘の魔女シトラスクイーン、シューベルトはシャーベット、ファンマンとレオネイドはバトラコ、オニキス、ファント、ウォスカー、ファイスの四人はDelphiniumとブリザードと――。
まずは、その戦いを時系列順に――ドロォウィンとバチストのパーティの戦いから見ていくことにしよう。
◆
『キゥィイー!!!』
オルカが勢いよく跳ね、その度に速度が累積で増していく。オルカの攻撃力と速度を上昇させる特技「
「筋肉こそジャスティス! 俺の筋肉でこの程度の魚、一捻りにしてやろう!」
「ちょっと待ってください! ドロォウィン先輩!」
バチストが声を掛けるが、ドロォウィンは後輩の声を無視して『
バチストはとりあえず後輩の義務としてやるべきことはやったと溜息を吐いて先輩の無謀な突撃を見守った。
何故、この先輩とまた組まなければならないのか、とドロォウィンから声を掛けられた時に思ったバチスト。
しかし、バチスト本人の意思は無視されて、またバチストはドロォウィンとコンビを組ませられることとなった。
バチストにとってドロォウィンは足手纏いだ。
無策で突撃していくのを止められないのなら、どうしようもない。それよりも重要なのは、ドロォウィンの敗北した後に自分がどうオルカを仕留めるかということである。
既にバチストの中でドロォウィンは亡き者となっていた。
『キゥィイー!!!』
ドロォウィンの武装闘気を纏わせた斬撃を浴びたオルカは僅かに忌々しげにドロォウィンを見下ろしたが、その動きが負った傷で鈍ることはなく、オルカはクルンと跳ねてそのまま突撃し、薄い障壁をドロォウィンの目の前に貼ってからドロォウィンに噛み付いた。
オルカのバリア潰し攻撃特技「
「あっ……派手に飛んでったな。さて、討伐討伐」
ラピスラズリ公爵家の働かない庭師こと、ヘクトアールが入手した情報は他のパーティにも共有されていた。
綿密に計画を立て、ジワジワとHPを削っていく必要がある。
一筋縄で行く相手では断じてない。オルカは素早く、そして物理攻撃力も高いのだ。
あのドロォウィンを一撃で撃破した力を浴びせられれば、バチストはひとたまりもないだろう。
「
『
「
『
武装闘気を纏うことで実質物理攻撃となった水の針を浴びたオルカだが、その動きはやはりドロォウィンの時と同じく、全く鈍ることなく更に跳ね上がって速度を上げる。
『キゥィイー!!!』
オルカが猛烈な速度でバチストに迫る。バチストは八技の空歩で空中に飛び上がった。
『キゥィイー!!!』
オルカは跳ね上がり、更に速度を上げる。しかし、その攻撃は上空にいるバチストには届かない。
「
これ幸いにとバチストは空中からの水魔法ベースの物理攻撃を続け、戦闘開始から三十分、遂にオルカを仕留めることに成功した……が、その直後に戦闘は終了し、結局バチストは他の戦いに加わることができなかった。
◆
ドロォウィンが撃破され、バチストとオルカの戦いが始まった頃、フレデリカは森の一角で柑橘の魔女シトラスクイーンと対峙していた。
柑橘の魔女シトラスクイーンは橙色の衣装の魔法少女だ。魔物だと分からないほど人間の少女で、分類上は欅達と同じ人型の魔物ということになるだろう。
しかし、見た目が可愛い少女でも実際は強化に強化を重ねたオーバーハンドレッドレイドボスクラスの魔物である。見た目に油断し、警戒を怠れば一瞬にして敗北してしまう。
フレデリカが二振りの『
『――シトラス・シューティング』
左手に橙色の光が収束した矢が顕現し、高速でボウガンが引かれ、放たれると同時に分裂する。
無数の橙色の矢をフレデリカは武装闘気と覇王の霸気を纏わせた双剣で圓式を放ち、切り裂いたが、剣越しに猛烈な力が両腕に押し寄せた。
「化け物じみた力ですわね……」
『シトラス・マジカルエラップション』
橙色の巨大な魔法陣が一瞬にしてフレデリカの足元に顕現し、間髪入れずに橙色の光が噴き上がった。
魔法陣が顕現した時点で後退を始めていたフレデリカは運良く魔法陣外に脱出し攻撃を逃れていたが、柑橘の魔女シトラスクイーンはフレデリカに休む間を与えず、次の攻撃を仕掛ける。
『――シトラス・ミーティア』
巨大な蜜柑が上空に顕現し、フレデリカ目掛けて降ってくる。
見た目こそ美味しそうな蜜柑だが、敵がオーバーハンドレッドレイドボスクラスの魔物である以上、この冗談のような攻撃も埒外の威力を秘めているのだろう。
フレデリカは受け止め、両断するという選択肢を捨て神速闘気を纏って柑橘の魔女シトラスクイーンに肉薄した。
走りながらゼロから百への緩急の存在しない不可視の白刃の二刀で斬撃を放つ……が。
『シトラス・シューティング』
左手に橙色の光が収束した矢が顕現し、高速でボウガンが引かれ、放たれると同時に分裂する。
フレデリカの斬撃が柑橘の魔女シトラスクイーンに命中する前に、柑橘の魔女シトラスクイーンの矢が放たれた。
その至近距離の攻撃をフレデリカの斬撃では全て切り裂けない。不可視の白刃が橙色の矢の何本かを切り裂いたが、矢のほとんどはフレデリカに突き刺さった。
たった一撃でも喰らえば死が確定するほどの埒外の威力を秘めた矢を四十本もその身に受けて耐えられる筈もなく、フレデリカは無数のポリゴンと化して消滅した。
◆
「魂魄の霸気――《大魔王》」
シューベルトがいつ抜刀したのかも分からない速度で構えた『
更にシューベルト自身を赤い稲妻を伴った黒いオーラのようなものが包み込み、燃え盛るように溢れ出したかと思うと、シューベルトに飲み込まれるように消えていった。
《大魔王》の破壊の力を宿し、忌々しそうに見つめる先にはシャーベットのゴーレム――シャーベットの姿がある。
シャーベットが吹雪を纏った拳でパンチを繰り出す――「
シューベルトは単調なこの攻撃を後方に跳んで躱すと、ヒュンと音を立てて『
シャーベットの巨大な影がシューベルトを覆った。いつの間にかシャーベットはシューベルトの頭上に飛び上がっていたのだ。
空腹状態を発生させる追加効果を持つ「
ところで、シャーベットの基本攻撃は吹雪を纏った拳でパンチを繰り出す「
その二つに空腹状態の付与効果が加わった「
シャーベットと戦う際には空腹の状態をどれだけ早く解除するかが明暗を分けると言われるほどだ。
シャーベットが拳を突き出し、吹雪を発生させる。巻き込まれたシューベルトの視界は潰され目の前が真っ白になった。身体も霜焼け、僅かに動きが鈍くなる。
素早く治癒闘気を流して身体を癒しながら、シューベルトは見気を駆使して視界を補った。
吹雪の中を突っ切ってシューベルトに迫り、拳を突き出して「
物理防御が圧倒的に高いシャーベットは斬撃そのものではダメージを受けなかった……が、《大魔王》の破壊の概念が物理防御を貫いて無視できぬほどの大ダメージを与える。
しかし、シャーベットをやられっぱなしではない。
シャーベットは巨大な水色の魔法陣を展開し、シャーベットの雪崩を発生させた。
シャーベットの雪崩はシューベルトが回避する間も無く飲み込み、大ダメージを与えると共に体温を大きく低下させる。
雪崩は猛烈な勢いが嘘のようにすぐに止まったが、巨大な水色の魔法陣は一度目の魔法で消えることがなく、戦場に残り続けた。
シャーベットの代名詞の一つ「
武装闘気を纏うことで辛うじて耐えたシューベルトもこの様子では三撃の雪崩を浴びれば敗北に喫することになるだろう。
シャーベットは後二発の攻撃を待つことなく雪崩の中で悴む手で『
シューベルトはその単調な回避できず、その身で浴び、無数のポリゴンと化して消滅した。
無属性即死級物理攻撃「
シューベルトを撃破したシャーベットは新たな獲物を見つけるために、再び森を歩き始めた。
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