百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-30 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.8 乙
Act.8-30 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.8 乙
<三人称全知視点>
「さて、参りますか。……
『
「
『
水の針がフィルミィの武装闘気と金剛智證通、耐魔智證通を貫き、神光闘気がフィルミィの体内へと流れ込む。
「私はオニキス隊長達のような剣の強さは持ち合わせていませんから、魔法によって少しでもその差を埋めるしか無かったのです。……流れ込んだ水は敵の体内で自在に姿を変え、内部から相手を切り裂く毒となる……元々対処の難しい厄介な攻撃でしたが、親和性の高い神光闘気が加わると更に威力が上がっている筈……それでも倒れないというのは流石ですね」
フィルミィの苦痛に耐えながら放つ精彩を欠いた『
神光闘気によって強化された水の針の猛毒性は並大抵のものではない。解脱を果たして仙氣によって体を構築されるようになっても物理ダメージが通ることは確認済みだ。
フィルミィがダメージを受けていないということは彼の表情を見ても明らかだろう。つまり、あの猛毒のように内部から生じるダメージをフィルミィは耐え抜いて攻撃を続けているということになる。並大抵ではない精神力だ。
「ならば、これならどうでしょうか?
『
フィルミィは痛みを堪えながら後方に飛んで躱すも、今度は薙ぎ払われた刃が退避したフィルミィに迫り、武装闘気と金剛智證通、耐魔智證通の防御を呆気なく貫いたバチストの剣がフィルミィの腹部で真っ二つに切り裂いた。
無数のポリゴンが溢れ出し、フィルミィの身体が消滅していく中、最後の一人カムノッツがカムノッツに雷撃を纏わせて迫り来る。
「
カムノッツの振りかざし攻撃を素早く後方に飛んで躱したバチストは『
「……まだです……まだ、負けた訳ではありません」
完全にポリゴンとなって消え去る前に、カムノッツは剣が深々と突き刺さることも恐れずに前に足を進めると、二振りの『|霹靂の可変戦鎚ドリュッケン・ミョルニル》』を最後の力を振り絞ってバチストの頭上に振り下ろす。
咄嗟に剣を引き戻して後方に飛ぼうとするが間に合わず、バチストは『|霹靂の可変戦鎚ドリュッケン・ミョルニル》』の直撃を浴び、押し潰された。
◆
伝統的な
「風鳴戦舞・暴風ノ刃」
扇子を一振りすると、扇がれた風が無数の風刃と化して放たれる。
その攻撃が向かう先に立つのは『
第二師団長フレデリカは二振りの『
無音の踏み込みと共に二振りの『
より正確に言えばアリシータの双眸が『
大気を擦過する白熱した大気の輝きをアリシータの瞳が辛うじて捉えた刹那――フレデリカに向けて放たれていた全ての風刃が破壊され、ただの空気に戻る。
「……ローザ様の、圓流耀刄ですか?」
フレデリカにそう尋ねるアリシータの声は震えていた。
アリシータ達
彼女が使うという世界最強の剣技――それが圓流耀刄、或いは圓式基礎剣術と呼ばれるものだ。
アリシータの記憶している限り、五年前にこの世界でこの剣術の使い手はローザただ一人だけだった筈だ。
あの【漆黒騎士】オニキスやリボンの似合うメイドのアクアといった世界でも最上位の剣士ですら、その剣技を習得するに至っていないとアリシータはそう記憶していた。
「えぇ、その通りですわ。ダメで元々でお願いしたらローザ様が手ずから彼女の剣技を手取り足取り使い方を教えてくださいました。……なんでも、私とローザ様のスタイルは似通っているようで、『圓式』を習得してもらえたらと前々から思っていたそうですよ。……とはいえ、実際に習得できたのは私の他にはオニキス隊長とアクア隊長、ジャスティーナさんの三人だけでしたが」
シューベルトは「ローザから剣の教えを受けたくない」と断って立ち去り、モネも上司に追随して権利を放棄し、「ドロォウィンとポラリスにだけは絶対に教えたくない。……それと悪魔の少年司書に教えると面倒なことになりそうだからやめておいた方がいいねぇ」とローザから呆気なく対象から外され、ファイスは「凶暴なローザさんにスパルタで剣を教えられるの嫌だ!」とスカートめくりをしながら逃走して地面に埋められ、結果としてアクア、ディラン、オニキス、ファント、ウォスカー、フレデリカ、ファンマン、レオネイド、ジャスティーナの九人がローザの特訓を受けたが、ウォスカーはそもそもローザの指導の意味が分からず、他のメンバーも「自力で心臓のペースメーカー細胞を動かす」というところでリタイアしてしまった。
つまり、アクアもジャスティーナも『圓式』を会得していた訳だが、今回のトーナメントではお披露目しなかったということになる。
今回は魔法や求道の霸気を全面に押し出し、『圓式』は切り札として隠し持っておく作戦だったのだろう。……アクアでは流石にそのような作戦を思いつくとは思えないので、この辺りは間違いなく参謀ディランの入れ知恵だ。
「それでは、こちらから仕掛けさせてもらいます」
無音の踏み込みと共に閃光の如き斬撃が放たれる。
「風鳴戦舞・暴風ノ舞」
巨大な扇子を駆使して暴風を放つも、悉く無音の斬撃に切り裂かれて届かない。
無音で一歩一歩着実に距離を詰められ、あっという間にフレデリカに肉薄されてしまう。
そして、『
◆
天上の薔薇聖女神教団の天上の薔薇騎士修道会騎士団長ヴェルナルド=グロリアカンザスは天上の薔薇聖女神教団の元となった天上光聖女教の上位聖職者になる条件の一つに光魔法の適性が必要不可欠だったこともあり、当然ながら光属性の適性を有していた。
天上の薔薇騎士修道会騎士団長の神聖護光騎士達はロザリオを使って光魔法を放つが、ヴェルナルドは自前で光属性浄化魔法「
天上の薔薇聖女神教団最強の騎士と言われたヴェルナルドだが、この五年の間に敬愛する女神リーリエの役に少しでも立てるようにと修行を続けてきた。
その結果、種族限界を突破したヴェルナルドはアレッサンドロス、コンラートと共に聖人に到達した。
しかも、全員が光属性保有者――必然的に彼らはローザも含め五人しかいない神聖魔法の使い手となったのである。
そんなヴェルナルドと相対するのはフォルトナ王国中央軍銀氷騎士団総隊長――シューベルト=ダークネス。【白の暴君】や【破壊神】、【白の魔王】の異名で呼ばれ、ヴェルナルド達の崇める女神にすら剣を向けた命知らずのフォルトナ王国の公爵騎士。
ヴェルナルドは一度この騎士と戦ってみたいと思っていた。あの最強の女神に喧嘩を売ったのがどのような騎士なのか確かめてみたいと思っていたのだ。
一方、シューベルトにとってはヴェルナルドはそもそも眼中にない騎士だった。ただ立ち塞がるなら倒すだけ――『
「
ヴェルナルドの『天上聖剣エンピレオ=レイ』に眩い光が宿る。
たった一撃で魂諸共消滅させる力を持つ神聖魔法「
ところで、光魔法、聖魔法、神聖魔法と区分されているこの光系三属性の境目はできる範囲、権限の差によって生じている。
光属性に可能なのは治癒と状態異常の解除と浄化、聖魔法に可能なのは低位の蘇生と形あるものに命を吹き込む生命の創造――つまりは生命エネルギーの操作、そして神聖魔法に可能なのは、高位の蘇生、魂の消滅、空間転移。
と言っても、この区分は必ずしも全てに適用されるものではない。例えば、「
当然、光魔法では範囲外の蘇生は行えない。これがローザにとっては長年謎だったが、聖属性魔法の存在が判明したことで、その謎がようやく解決したということになる。
「ふん、少しは戦えるようだな。俺が本気を出しても簡単に壊れないのなら丁度いい――少しだけ付き合ってもらうぞ」
シューベルトがいつ抜刀したのかも分からない速度で構えた『
「魂魄の霸気――《大魔王》」
シューベルトを赤い稲妻を伴った黒いオーラのようなものが包み込み、燃え盛るように溢れ出したかと思うと、シューベルトに飲み込まれるように消えていった。
「さあ、始めよう。簡単に倒れてくれるなよ」
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