百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.7-52 帝国崩壊〜闇夜の下で絡み合う因縁と激戦に次ぐ激戦〜 scene.13
Act.7-52 帝国崩壊〜闇夜の下で絡み合う因縁と激戦に次ぐ激戦〜 scene.13
<三人称全知視点>
【大魔導師】の異名を持つレジーナは、その名に恥じない多種多様な属性への適性を持つ。
適性を持つのは火、水、氷、風、土、酸、影、光、空の九属性――弟子にして、聖女の適性を持つリィルティーナの光属性に比べれば適性は劣るものの、得意属性である空以外の属性も十分単体で猛者の魔法師と言えるほどの領域に達している。
これには、ニウェウス王国の王家が代々高い魔法適性を持つ忠臣達の血を意図せず取り込んできたという歴史が大きく関係してきた。国の力関係のバランスの調整のため、幾度となく結ばれた政略結婚――その果てで様々な属性に対する適性を得てきたのだ。
しかし、この事実を王族を含め誰も知らなかった。王族は忠臣によって守られる存在であり、常日頃から宮廷魔法師に守られ、自分達がその力を行使することはない。
レジーナもまた蝶や花やと育てられ、魔法を使った戦いとは無縁の生活を送ってきた。もし、ダートム達によるクーデターが無ければレジーナもまたその魔法の圧倒的才能に気づかぬまま一生を終えていただろう。
レジーナが王族の中ではじめて、その圧倒的な魔法適性に気づいたのは、ニウェウス王国崩壊後の数年後――国を脱出していたラインヴェルドとオルパタータダに後の
その王族の圧倒的な適性を知るためには、ニウェウス王国の崩壊を待たなければならなかった。王国が崩壊しなければ出現しない、ニウェウス王国の象徴のような力の存在にレジーナも皮肉さを感じたものだ。
ニウェウス王国がフォルトナ王国に吸収され、すっかり地図上から姿を消す一方で、ニウェウス王国の象徴のようなレジーナの魔法は磨かれていった。
当然、【大魔導師】の異名を持つに至ったレジーナは、あの頃の守られているだけのお姫様ではない。
「ユリア、炎の巨人の方は苦手よね」
「確かに属性相性的には苦手ですが、もうあの頃とは違いますわ。苦手な属性相手にも対抗する手段は用意してあります」
「でも、鋼鉄の巨人の方がやりやすいでしょう? 私が炎の巨人の方をどうにかするわ」
「ふん、そんな簡単に私の二つの巨人をどうにかできると言うか! 随分と舐めてくれるッ! たかが庭師と王女如きにこの私が、百戦錬磨の軍人の私が負ける訳ないだろう!」
ダートムの右手から金属が溢れ出し、無数の鋼鉄の剣を形作った。大量の魔力を吸い、魔剣と化した鋼鉄の剣は宛ら弾丸のようにユリアとレジーナに迫る。
「魔導錬成・浮遊鋼鉄剣!」
「
武装闘気を纏わせた、鋼鉄すら切り裂くほどの硬度を誇り、丸鋸のように回転するクレマチスがユリアの右手から間髪を入れずに七つ、宛ら手裏剣の如く放たれる。
クレマチスは鋼鉄の剣に次々と命中し、その圧倒的な硬度と回転で打ち砕いた。
「眩しい光はお嫌いですか?
更に、素早く向日葵の花を左手に咲かせたユリアが、中心から激しい光の光芒を放つ。光線を放った向日葵は全てのエネルギーを使い果たして枯れてしまうが、その圧倒的な熱量は機械仕掛けの巨人の中心を穿ち、溶かしてしまうほどのものだった。
中心部に風穴を開けられても、機械仕掛けの巨人の動きが鈍ることはない。しかし、この圧倒的な熱量はダートムにも無視できぬものであった。
かつて戦った時には見たことがない技、その脅威を感じ取り、ダートムが不快感を顔一杯に滲ませる。
「
機械仕掛けの巨人の足元に投げた種から一瞬にして蔓が生え、機械仕掛けの巨人に絡みついて動きを止める。侵食した蔓には無数の紫陽花の花を咲かせた。
更に武装闘気を纏った竜舌蘭がユリアの右手から生え、ダートムの方へと伸び始める。
「
一方、灼熱の巨人と対峙するレジーナの方も無数の氷塊を縦横無尽な軌道で次々と命中させていた。既に左腕や右足は吹き飛ばされ、炎の身体にも大きな穴がいくつも空いてしまっている。
灼熱の巨人の死角から確実に攻撃を命中させる氷塊――その秘密は、レジーナが最も得意とする二つの空属性魔法――使役魔術と感応魔術――のうち、感応魔術にあった。
無機物に擬似的な精神を宿すことで自我を与え、自律操作を可能とすることで、無生物を生きているように操作するこの魔法によって、氷属性の魔力で生み出した氷塊を自律的に死角から攻撃させていたのである。
灼熱の巨人を討ち取るべく、自ら巨人に向かって縦横無尽な軌道で攻撃を仕掛ける氷塊に灼熱の巨人も手を伸ばして応戦する――が、氷塊の方が速度が段違いに早く、結果として一撃も止められないまま一方的な攻撃が続いた。
「
満身創痍でありながらも辛うじて形を保っていた灼熱の巨人だったが、レジーナの放った無数の小さな光の球の大爆発に巻き込まれ、消し飛ばされる。
灼熱の巨人と機械仕掛けの巨人を失ったダートムの目が驚きで見開かれる。
「まさか、これほどとは……これほどの力があれば、ニウェウス王国は覇権を手にしていたというのに! 愚かだ。実に愚かだ!」
「戦いは確かに技術革新を生むかもしれませわわ。でも、大勢の血を流して、生活を踏みにじって、そうして得た利益が何になりますか!」
「民の生活があってこそ、国が繁栄する。民を酷使して、踏みにじって、その果ての繁栄にどんな意味があるというんだい? ユリアの言う通りさ……邪魔になれば王を殺す、そんな奴に国を取られなくて本当に良かった。ユリアには感謝しかないね」
「ふざけるな! 王女である貴様が負けて良かったなどと! 軟弱な王族もそこまで落ちたか!」
「少なくとも、お前達よりもオルパタータダの方がよっぽど国を良く統治してくれているさ。民の生活は向上した……少なくともお前達の思い描いた地獄みたいな国にはならなかったよ。ダートム……お前みたいな人間を生み出してしまった罪はニウェウス王国にある。あたしも、ニウェウス王国の一員だった。あたし自身の手で間違いは正させてもらうよ!」
「愚かッ! 強き国こそが正義だ! 国は強くあらねばならんのだ! その覇道を邪魔するものは、全てこの私が排除するッ!」
「
「いくよ、ユリア!」
「はい、レジーナさん!」
「
圧縮した膨大なエネルギーを持つ光弾を破裂させて光の洪水を引き起こすレジーナのオリジナル光属性魔法――そのエネルギーをあえて破裂させず、「
「
「
「私はこんなところでェ――!!」
それがダートムの最後の言葉となった。光の奔流に呑まれ、身体が蒸発し、唯一膨大な熱量に耐え切った「
◆
<一人称視点・リーリエ>
機械的な空間を抜けると、その先には無数の宝石と黄金に彩られた宮殿に出た。
豪奢な廊下は果てしなく広がっている。廊下を進むにつれ、廊下の壁に備え付けられた燭台に炎が灯り、最終決戦を予感させる雰囲気になってきた。
辿り着いた先は、巨大なホールだった。行き止まりとなったその場所には二つの人影がある。
一人は蒼から赤へのグラデーションのある髪と翡翠色と紫水晶のオッドアイを持つ中性的なイケメン……「
そして、もう一人は九つの尻尾と狐耳を持っているけど、白い髪の特徴のない青年――『魔界教』の枢機司教グリードに間違いない。……もしかして、トレディチが助っ人として『強欲』の枢機司教を連れてきたの? まあ、確かに『強欲』は『魔界教』の中では最も厄介な無敵能力を持っているし、助っ人に相応しい存在ではあるけどねぇ。
「やはりここまで辿り着いたか。「
「別に戦わずして先に進むことだってできる。ほとんどのメンバーは仲間達に任せてきたよ――まあ、負ける要素は全くないし、結果はボクが相手をするのと大差ないと思うけど。……しかし、グリードを助っ人に呼ぶなんてねぇ。やっぱり、神同士も連携を取っているのか」
「『我々は戦略的に動いている。『怠惰』を倒してその力を奪ったようだが、『魔界教』の中で『怠惰』は大した力を持たない。『魔界教』最強であるこの俺グリードがお前の『管理者権限』を奪い取る! その後で皇帝の『管理者権限』を奪い取り、俺は唯一神に一歩近づくことになるだろう』」
「だってさ。仲間と思いきや、君の命を狙う刺客だったみたいだよ?」
「ふん、その程度のこと、この皇帝カエサルが見抜けぬとでも思ったか? そのようなこと最初から分かっていた。ただ、お前を倒すまでは同じ目的を持つので仲間といっても差し支えないだろう。その後に『強欲』の『管理者権限』を奪えばいいこと」
うわぁ……お互い殺し合う気満々じゃん。まあ、どっちもどっちか。
しかし、何を考えているんだろうねぇ、皇帝……『強欲』に勝てる手札を皇帝は持っていなかったって記憶しているけど。
しかも、『強欲』は『
『強欲』の持つ権能は時間停止、魂魄操作、妖術の三つある。
一つ目は時間停止は、己の心臓も止まる不完全な時間停止によって、空間の歪みそのものとなり、物理世界のあらゆるものから拒絶された存在となることで、何であろうと一切攻撃が通らなくなり、自身の攻撃はあらゆる物理法則を無視した即死級のものとなる。この権能の弱点は自身の心臓が止まってしまうこと。
この弱点の解消のために、二つ目の魂魄操作がある。
この権能によって妖狐の尻尾が持つ火・水・風・土・雷・木・金・光・闇のそれぞれの属性に対応する
三つ目が妖狐の尻尾が持つ火・水・風・土・雷・木・金・光・闇の属性に対応する妖術を操る権能。妖術には混沌の魔力を消費する。
分魂魄として分離した属性の妖術は本来使用が不可能になるけど、『
今回は『
……うん、明らかに勝算しかなくてここに来たんだよねぇ、この人。
ただ、唯一見落としがあったとすれば、ボクがいずれ戦うと分かっている相手の対策を全く立てていないという訳がないということかな? 勿論、当然用意してあるよ、グリードの一見無敵に思えるコンボを砕く方法も、ねぇ。
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