百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.7-30 中央フォトロズの一座にて〜シャドウウォーカー強化プログラム〜 scene.4
Act.7-30 中央フォトロズの一座にて〜シャドウウォーカー強化プログラム〜 scene.4
<三人称全知視点>
シャドウウォーカーのメンバーがそれぞれローザの仲間達と小規模戦闘施設で模擬戦を始めた頃、最後の対戦カードであるホーリィとスティーリアの戦いもまた小規模戦闘施設の一つで始まっていた。
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▶︎幻想級の闇夜の外套がユニークシリーズの外套の力を得て生まれ変わったシャドウウォーカーの任務に最適な闇夜に溶け込む外套。
スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【炎帝】、【破壊成長】
フレイバーテキスト効果:闇夜に同化する。
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:独創級
付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:ホーリィ/
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ローザから支給された装備はシャドウウォーカーでは唯一たった一つだ。
ホーリィのメインウェポンである帝器「
シャドウウォーカーのメンバーの装備の中では相対的に劣る性能だが、それでも対帝国の戦いでは十分頼りになるものに仕上がっている。
だが、相手が
更に〝白氷竜〟スティーリア=グラセ・フリーレン=グラキエース――彼女は火竜帝と称する末娘カリエンテ=カロル・ヴルカーノと死闘を繰り広げ、地形や環境を変えるほどの戦いの末にカリエンテを撃破したということが何度もある対炎使いのエキスパートだ。
そんなスティーリア相手にホーリィが勝利することはほぼ不可能だと言えるだろう。いや、万が一という可能性は有るだろうが、素のスペックでカリエンテを倒せるほどの力を有し、更にローザによって大きく力を伸ばしたスティーリアにホーリィが勝てるとは到底思えない。
無論、ローザは百も承知二百も合点だ。ホーリィ相手にスティーリアをぶつけるのには、他の模擬戦とは違うコンセプトがある。
『これから模擬戦を始めていきますわ。始める前に確認しておきますが、今回の模擬戦の目的は【凍将】グランディネ=サディストの攻撃を私が模倣し、その攻撃への対応力をつけることにあります』
ローザはピトフューイから帝都の現状を事前に聞いていた。
ゲーム時代には存在しなかった暗黒騎士ガーナットという英雄が帝国に彗星の如く現れ、帝国に新設された「
この隊長をローザは「皇帝が用意した切り札の一つである」と看破し、様々な可能性の検討と、それに対する対策を立てているようだが、帝国で警戒しなければならない相手は暗黒騎士ガーナット以外にも存在している。
特に『裏切りと闇の帝国物語〜Assassins and reincarnator』時代からの猛者である【熔将】アルバ=パテラ、【雷将】トネール=フードゥル、【凍将】グランディネ=サディストは警戒してしかるべき相手だ。寧ろ、対策を打たないというのは愚の骨頂であり、その力の全貌が分かっている相手に敗北したとなれば笑い話にもならない。
『では、第一撃から始めていきましょう』
大量の鋭い氷片を展開させ、その全てがホーリィに迫った。
グランディネが使用する技の一つ「フリーレンシュタイン」――グランディネが使う技の中では最弱にして基本の技だが、最弱と言ってもその威力は高く、舐めてかかって対処できるようなものではない。
「【炎帝】!
「
蒼焔が【炎帝】の炎を喰らって蒼焔の火球ができあがった。
ホーリィが「蒼焔帝」と呼ぶこの二つの火球はホーリィの周りを高速でぐるぐると回り始め、高速回転する火球が迫り来る氷片を次々と呑み込んだ。
『続いて第二撃です』
ひと息つく間もなくスティーリアは尖った七発一塊の氷塊を瞬時に生み出して、宛らロケット弾の如く同時に射出した。「アイスツァプフェン」と呼ばれる技だ。
「蒼焔帝ッ!」
ホーリィは火球の一つを巨大化させて氷塊を全て飲み込む。
『続いて第三撃と第四撃――同時に参ります』
ホーリィの戦いっぷりに全く賛辞を送ることもなく淡々と、スティーリアは地面から無数の尖った氷の塊を生やし、相手を串刺しにする技と人間の数十倍はある巨大な氷塊を展開させて押しつぶす技を同時に放つ。
前者は「アイスエーァトボーデン」、後者は「ハーゲルインゼル」と呼ばれるどちらも強力な技だ。
「裏武装闘気-床-!」
次々と生えるように床を割って作り出され、徐々に迫ってくる氷塊から身を守るべくホーリィが選択したのは退避――裏の武装闘気で床を作り出して地上を離れるが、その先にはホーリィを押し潰さんとする巨大な氷塊がある。
「
武装闘気を纏わせた「
『なかなかやりますわね。てっきりここでゲームオーバーだと思っていましたが……』
「……僕もこのレベルで負ける訳にはいかないからね。
『えぇ……まあ、誰が誰と戦うかは運次第、ホーリィ様がグランディネ相手に戦う確率は低いでしょうが、最低でもその程度の力は得ていて欲しいというのがローザお嬢様のお考えということですわね。では、第五撃目と第六撃目――奥の手と呼ばれる技を使わせて頂きます。死なないでくださいね?』
三十体の氷の兵隊がホーリィの周囲に造形され、更にホーリィを中心にして猛吹雪が戦場を覆った。
前者が「カルトアルメーコーア」、後者が「ゲシュテーバー」――どちらもグランディネの奥の手とされる強力無比な対軍規模攻撃だ。
「蒼焔帝、大火柱ッ!」
蒼焔の【炎帝】をぐるぐると螺旋を描くように高速回転させながら地面に落とし、炎の残像を呑み込むように巨大な蒼焔の火柱が産み落とされた。
蒼焔の火柱――いや、蒼焔のドーナッツタワーと呼ぶべきか、中心無き火柱は徐々に戦場に広がっていき、吹雪と氷の兵隊を呑み込む。
『
吹雪と氷の兵隊を呑み込んでなお止まらない蒼焔の火柱に対し、スティーリアは火柱と逆回転の無数の吹雪の竜巻を顕現し、火柱にぶつけて相殺して見せた。
『お見事ですわ。これでローザお嬢様からお預かりしたメモに書かれていた技は全てということになりますが、このまま模擬戦を続行しますか? お望みなら、私もここから私の技を使って応戦させて頂きますが』
「……勝てるとは思っていないけど、挑ませてもらうよ。いい経験にはなるだろうからね」
『大変素晴らしい意気込みでございますね。それでは、私も本気でお相手させて頂きます。――
スティーリアの手に小さな氷の茨が生まれ、ホーリィの足元に命中すると同時に増殖を開始した。氷の茨は瞬く間に床のほとんどを埋め尽くし、更にホーリィのいる空中へと侵食を開始する。
「【炎帝】!
「
蒼焔と化した二つの巨大な火球を床を侵食する茨に向かって放ち、迫り来る氷の茨を飲み込むと、そのまま床を侵食する茨を次々と茨を焼き尽くしていった。
『
スティーリアの右手の指一つ一つに小さな青い魔法陣が現れ、指を離れると同時に巨大化する。
その中から現れた五体の氷の小さな翼竜は顕現と同時にホーリィへと襲い掛かった。
「
武装闘気を纏わせた「
翼竜に噛み付かれた部分は凍結し、そのまま圧倒的な咬合力で噛み砕かれる。腕からポリゴンが溢れる中、ホーリィは傷口を武装闘気で固め、発動した【炎帝】の火球をぶつけて焼き尽くした。
『お見事ですわ。……私も少し見縊ってしまっていたのかもしれませんわね? ……さて、これでラストターンにしましょう。
スティーリアが小さく技の名を呟いた瞬間、ホーリィの頭上に巨大な魔法陣が展開された。
しかし、大魔法が発動される気配は全くない――ただ、大気中の水蒸気が凝華してできた細氷がキラキラと輝いているだけだ。
「何かと思ったら最後の最後にこれ? もしかして、僕に価値を譲ってくれたのかな?」
あまりにも拍子抜けな展開にホーリィも思わず気を抜いてしまう。
【炎帝】を発動して二つの巨大な火球をガラ空きのスティーリアに向けて放つ……が。
『いえ、今度こそ終わりですわ』
ダイアモンドダストが一瞬にして氷へと変わった。大気諸共凍結し、【炎帝】の火球とホーリィを呑み込んだ巨大な氷塊が完成する。
『
スティーリアが氷を造形して生成したのは『漆黒魔剣ブラッドリリー』と『白光聖剣ベラドンナリリー』に肖た双剣――『
ローザが最も愛用するアカウント、リーリエを象徴する二振りの剣だ。
あの日、ローザに討ち取られたその日から、ローザは最愛の主人であり、目指すべき理想そのものであり、特別な存在となった。
――主人のスタイルを模倣することで、最愛の主人に少しでも近づきたい。
スティーリアがリーリエの姿を模倣するのは、その願いの現れである。
それと同時にリーリエの剣を模倣したこのスタイルでの敗北は敬愛する主君の顔に泥を塗るに等しい行為であり、この武器を使った戦いでは決して敗北は許されないと強く自壊していた。
『――チェックメイトですわ。
武器を大きく振り回して敵の首を刈るイメージで『
『Eternal Fairytale On-line』のアカウントを持たないスティーリアには放てる筈のない一撃――そのカラクリは彼女の魂魄の霸気にある。
彼女の魂魄の霸気は敬愛する主人である圓が自らを討ち取る際に使用した技「
『
氷のように静かで冷たい微笑の裏で、ローザに対する愛の熱は燃え上がっているのだ。
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