Act.7-26 中央フォトロズの一座にて〜シャドウウォーカー強化プログラム〜 scene.1

<三人称全知視点>


 強化プログラム二日目、イリーナとプルウィアは小規模戦闘施設の一室で、アクアとディランに相対していた。

 プログラム初日に闘気の扱いや魔法の使い方(実はルヴェリオス帝国の人間も魔法を扱うための魔力炉、魔力回路、魔力変換器を身体に有していた)などをローザが一通り教え、二日目からは本格的な実戦を「Lリリー.ドメイン」内部で行いながら、獲得した新しい力を実戦でも使いこなせるようにしていく。


 イリーナとプルウィアは帝器以外の武装としてローザから初日に手渡された装備を身につけている。


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・宵鋼-小烏丸打ち直し-

▶︎幻想級の名刀小烏丸がユニークシリーズの刀の力を得て生まれ変わった宵鋼の銘を持つ名刀。


スキル:【刀身透明化】、【真空刻斬】、【攻撃裁断】、【破壊成長】

フレイバーテキスト効果:打ち合った武器の耐久度を減少させる。


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:イリーナ/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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影の歩行者の暗殺外套シャドウウォーカー・コート

▶︎幻想級の闇夜の外套がユニークシリーズの外套の力を得て生まれ変わったシャドウウォーカーの任務に最適な闇夜に溶け込む外套。


スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【ー】、【破壊成長】

フレイバーテキスト効果:闇夜に同化する。


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:イリーナ/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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・小太刀-霧雨-

▶︎幻想級の斬雨という名称の小太刀とユニークシリーズの暗殺特化の刀の力を得て生まれ変わった暗殺特化の小太刀。


スキル:【真空刻斬】、【水神顕現-龗-】、【攻撃裁断】、【破壊成長】


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:プルウィア/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化+装備に認められる】

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影の歩行者の暗殺外套シャドウウォーカー・コート

▶︎幻想級の闇夜の外套がユニークシリーズの外套の力を得て生まれ変わったシャドウウォーカーの任務に最適な闇夜に溶け込む外套。


スキル:【亜空収納庫】、【超加速】、【ー】、【破壊成長】

フレイバーテキスト効果:闇夜に同化する。


【管理者鑑定】

分類:『異世界ユーニファイド』アイテム

レアリティ:独創級

付喪神度:0/99,999,999,999【該当者:プルウィア/神話級ゴッズ化条件、付喪神度の最大化】

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 これら装備はあくまで帝器をメイン武装に据えた上で、その力を最大限活かす、或いは足りない部分を補填する役割が与えられていた。

 イリーナの装備に関しては帝器がないため、当面は「宵鋼-小烏丸打ち直し-」をメインで使うことになるだろうが、この刀はメイン武装の「血飢えた吸血剣グリーディー・ブラット」を手に入れてからも副武装として使えるように丁度いい長さに設定されている。


「それじゃあどっからでも掛かってきていいぜ? なあ、相棒?」


「こっちも準備万端だ」


「……遠慮なく仕掛けさせてもらう」


 プルウィアとイリーナは同時に地を蹴って加速――イリーナは「宵鋼-小烏丸打ち直し-」を右手に構え、プルウィアは「妖刀・叢雨」を右手に、「小太刀-霧雨-」を左手に構えて同時にアクアに攻撃を仕掛けた。


「おいおい、俺は無視かよ。人気者だな、相棒!」


 イリーナは似たような境遇のアクアを意識しており、プルウィアはスラム街の屋敷での一戦で対決したアクアとの再戦を希望していた。

 二人の希望がかち合い、アクアに狙いが偏ったが、それを良しとしなかったのがディランだった。


 素早くプルウィアの進行方向に妨害するように立ちはだかると、全く力むことすらなく軽く撫でるように振るわれた剣がヒュンと風を切った。

 プルウィアは咄嗟に「小太刀-霧雨-」で防御する。見た目からは想像もできないほどの腕が痺れるほどの衝撃がプルウィアに襲い掛かったが、プルウィアは左手に構わず右手に構えた「妖刀・叢雨」を振り下ろした。


「おっと……危ねぇな」


 武装闘気を纏った左手で武気衝撃を放って「妖刀・叢雨」の斬撃を弾き、更に【虹柱】で実体のある虹の薄い刃を無数に放った。


「アクアカーテン」


 適性のあった水の魔力でカーテンのような薄い膜を生成し、武装闘気を纏わせて虹の刃を受け止めると、そのまま「小太刀-霧雨-」を思いっきり振り上げ――。


「【水神顕現-龗-】!」


 猛烈な水を頭上へと放った瞬間――水が竜へと形を変え、ディランを飲み込まんと襲い掛かる。


「――《影撃部隊》!」


 対するディランは《影》の魂魄の霸気で龗を顕現し、プルウィアの龗に向けて放つ。

 互いの龗が互いを喰らい尽くそうと相食む中、水のカーテンを避けて左から仕掛けたプルウィアがディランに斬り掛かった。


「【幻影・霧雲影】!」


 その斬撃を見気を駆使して回避したディランは霧を撒き散らして、その中に消え去る。

 霧が晴れた戦場には無数のディランの姿があり、その全てが一斉にプルウィアに斬りかかってきた。


「――《影撃部隊》! 《影の錐塔》! 【積嵐雲】!」


 二十人のディラン相手にキャパシティが限界に達していたプルウィアに、ディランは追い討ちをかけるように無数のディランの影を顕現し、万事休すというタイミングで上からは黒々とした積乱雲からの落雷が降り注ぎ、下からは無数の影の尖塔が突き出し、プルウィアのHPゲージを一瞬にして吹き飛ばしてしまった。



 少し時間を巻き戻し、アクアとイリーナの戦いに焦点を当てるとしよう。

 ディランとプルウィアの剣技以外の能力を含めた戦いとは打って変わり、こちらは武装闘気と覇王の霸気を纏わせた刀による小細工無しの戦いが繰り広げられていた。


 アクアは双剣の一振りを鞘に納めた一刀流で対峙し、イリーナの重い斬撃を重い斬撃で弾き返しながら戦いを続けている。

 二人の戦い方はまるで示し合わせたように似通っていた。どちらもパワー重視の剣技――しかし、イリーナのものがルヴェリオス帝国の正統な剣技を崩したやや型重視のものであるのに対し、アクアのものは我流の喧嘩殺法の延長線上にあるような剣技――その系統は随分と違っている。


 斬り結ぶ度に漆黒の雷が戦場を迸るが、二人は特に気にした様子もなく重い斬撃をぶつけ合う。


「なかなか重い斬撃だな。ウォスカーの斬撃に匹敵するんじゃないか?」


「……ここまで変則的な斬撃は初めてだ。ついていくのがやっとだよ」


「もうこれくらいでいいかもしれないな。こっからは色々使わせてもらうぜ。まずは【天使之王】――天使化! 天使の加護エンジェル・プレッシング! 【劇毒之王】――劇毒八岐蛇デッドリー・ポイズン・ヒドラ!」


 天使化したアクアが光を纏って飛翔し、光を斬り裂く双魔剣カレドヴールッハから真紅の劇毒の体を持つ九つ首の竜を解き放った。


「【攻撃裁断】!」


 あらゆる攻撃を裁断することができるスキルを発動してアクアの劇毒の竜を切り裂いたイリーナだが、劇毒の竜はそのまま劇毒の激流となってイリーナを呑み込んだ。


「悪手を打ったな、今の攻撃は回避すべきだった。――さて、決着をつけようか」


 劇毒に塗れ、身体をボロボロに溶かされていくイリーナにトドメを刺すべく、アクアは逆手で構えた剣を思いっきり振りかざした。

 漆黒の稲妻が戦場を駆け巡り、真っ二つになったイリーナの身体が傷口からポリゴンとなって消滅していく。


 戦闘終了と同時にアクアとディランは小規模戦闘施設の外に転送された。


「……負けた」


「負けてしまったな。……いい戦いをできたと思ったのだが」


「まだ俺も奥の手は見せてねぇからな? ローザの剣にも迫った俺の神速の一太刀――見せるのは当分先になりそうだな」


「こっちはちょっと飛ばし過ぎた。イリーナさんが魂魄の霸気を使うところまで引き伸ばせば良かったな」


 アクアもまだ見たことがないイリーナの奥の手――その全貌は未だ謎に包まれているが、覇王の霸気を獲得している時点で手に入れていないということはないだろう。


「俺の魂魄の霸気は特殊なものだから目に見える形……という訳にはいかないけどな。次の戦いでその恐ろしさを見せてあげるよ」


「なら、俺も次は魂魄の霸気を主軸に戦ってみるか」


「……イリーナ、次は私の番。アクアと戦いたい」


「……ってか、俺って不人気過ぎない? 仕方ねぇな、俺はちょっと親友ローザのところに泣きついてくる。俺の相棒が独占されているって! ってか、俺も相棒成分が足りないんだよォ!!」


「おい待てディラン! この二人相手とか流石にキツ過ぎ――」


 大泣きするディランが全速力で廊下を走って行き、慌てたアクアがその後を追って姿を消してしまった。

 その後、ディランの訴えを「面倒だねぇ。もう好きなだけイチャついていればいいんじゃないかなぁ?」という面倒くさそうな顔をしたローザがコンコンと聞かされた結果、ローザが代わりに二人の対戦相手を受け持ち、イリーナとプルウィアを数秒足らずで壊滅させてしまうことになるのだが、それはまた別の話。


 ちなみに、ローザはイリーナの魂魄の霸気である《箱猫》は《天照》によって鏡写された模様。

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