百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.7-17 帝国警備隊隊長ドーガ=ジークレッドの悪業 scene.1 上
Act.7-17 帝国警備隊隊長ドーガ=ジークレッドの悪業 scene.1 上
<一人称視点・リーリエ>
脳内で外なる神との戦いの際に流れるバックグラウンドミュージック――『外縁世界の神への挑戦』を流しながら、ボクはアザトホートのコケラ・ラメッドと戦いを繰り広げていた。
アザトホートのコケラ・ラメッドの時空を貫くビームを無効化したボクは、「
……久しぶりだねぇ、ここまで本気で戦えるのは。それじゃあ、お望み通り全力を出してあげるよ!
「【黄金錬成】、
途中【万物創造】で創り出した神水をガブ飲みながら、【黄金錬成】の威力を全て吸収するところからスタートし、バフ特技の重ね掛けでステータスを向上させる。
アザトホートのコケラ・ラメッドが放った放射線(アルファ線、ベータ線、中性子線、陽子線、重イオン線、中間子線などの粒子放射線とガンマ線とX線のような電磁放射線)を熱線と共に強引に収束した
「
一条、二条、三条、四条――無数に伸びた線状の斬撃が対象を貫く同時に一瞬で消滅させる、剣属性と消滅属性を持つ剣士系四次元職の剣帝の奥義である最強の物理系範囲攻撃特技を発動し、アザトホートのコケラ・ラメッドに放つ。
そして、命中の瞬間に「
「さて……素材回収を――」
……アザトホートのコケラ・ラメッドの身体が無数の粒子となって消えていく。完全に『Eternal Fairytale On-line』の死亡した時の演出だけど……よっぽどボクに素材回収をさせたくなかったんだねぇ。まさか、死亡時に消滅システムを組み込んでおくなんて。まあ、ボクがアイオーンの立場なら絶対に同じことをしていただろうから否定はしないけどさぁ。
戦いを終えた後、ボクはアクア達を呼び戻すために『全移動』を発動した。……はぁ、こういう
◆
<三人称全知視点>
ルヴェリオス帝国という国は腐敗の一途を辿っている。
帝国の地方の村々に掛けられた重税や、私腹を肥やす貴族を初めとする富裕層達。
問題はそれだけに留まらない。露頭に迷った者達を善意の振りをして招き入れ、残虐な実験の被験体にする者、嬲り殺してその顔が恐怖に染まる姿を楽しむ者、異民族を虐殺して壊滅に追い込んだ拷問を趣味とする将軍などなど、極悪非道な行いをする腐敗の原因は帝国に満ち溢れていた。
帝国警備隊隊長ドーガ=ジークレッドもその一人であった。
「は、離してください!」
「や、やめろ……アトハを連れて行くな」
無数の女性を侍らせたドーガは、アトハと呼ばれた女性の腕を強引に引き寄せると、下卑た笑みをアトハの夫と幼い息子に向けた。
ドーガという男は表向きは誠実な警備隊長を演じていたが、裏では自らに与えられた権力を振りかざしてやりたい放題をしていた。遠征先で権力を振るって欲しくなった女を手に入れるために強制的に夫と子供から引き剥がしたり、逆らうようであれば家族を虐殺することも度々行われた。過去には結婚の決まっていた少女に興味を持ち、金を使って縁談を破断させ、自分のものにするようなこともしている。
自分の思い通りになる女を侍らせることが理想だと考えており、徹底的に心を折って服従させる。人妻であろうと関係なく、自分の好みの容姿で、自分に無条件に服従することが妻の理想。逆らうことを決して許さず、逆らった場合には暴力も振るう。中にはその暴力により命を奪われた者もいた。
彼にとって、女とはステータスであった。欲しいと思った女を手に入れ、侍らせる。気の強そうな女性を恥辱の果てに屈服させ、心を折って縛らせることも好んでいた彼に対し、逆らうということは最悪と言っても過言ではない悪手であり、家族が目の前で惨殺されていたとしてもその光景を笑顔で見届けなければならなかった。
新たな犠牲者を姿を見る女性達は笑っていた。幾度となく残虐な光景を見せられ、それでも笑顔を、ドーガという男の不条理な行為を肯定しなければならなかった女性達の心は完全に壊れてしまっていたのだろう。そして、今夫との仲を引き裂かれ、ドーガに見初められたアトハという女も、いずれは自分達と同じように、他人の不幸を、幸せな家庭の崩壊を笑顔で見て、ドーガを楽しませるために生きる未来を信じて疑わなかった。
彼女達にとってドーガとは絶対的な絶望なのだ。その絶望から逃れる方法は存在しない。
「どうでございますか? 素晴らしい女性でしょう? アトハはこの村一の美人でございますからね」
そんなドーガの隣で揉み手擦り擦り、ドーガに気に入れられたいがために村の仲間の妻を売った男は、なんの因果かオリヴィアを捨てた実の父親だった。
元々村の中でも評判の悪い人物だったが、まさかここまでのことをするとは思いもよらなかったのだろう。彼と友人関係にあり、共にオリヴィアを捨てた話を聞き、笑っていた友人達もその所業に恐れを成している。
しかし、ドーガはもう用済みだとばかりに揉み手男を捨て置き、警備隊の仲間に父と子の処刑を命じた。ドーガの取り巻きの女達にとっては既に見慣れた心を折るため儀式――それが、殺すことに快楽を覚える警備隊員の男によって執行された。
鮮血が迸り、夫と息子は物言わぬ
そして、ドーガは出会ってしまった。運命の相手に――少なくとも、彼にとっては出会うべくして出会った運命の人だった。
長い緑髪を左右非対称に編み込んだ金色の瞳を持つ、整った容貌で鋭い目付きの威圧感を纏った女性。
その背後にも上玉の女性は沢山いたが、そんなものとは比較ならないほどの美貌を持っていた。――あれを手に入れたい! ――あの目を屈服させ、自分のものにしたい! ――壊れるほど愛したい! そんな歪んだ愛情を知ってか知らずか、その女性は笑顔を向けた。
「帝国警備隊隊長ドーガ=ジークレッド、ですね」
「よく知っているな。なんだ? 俺の追っかけか? そんなに俺の妻になりたいのなら俺の妻にしてやってもいいぜ?」
だが、しかしあくまでドーガは女性が自ら妻になりたいと申し出たという体裁を装いたかったからなのか、己の気持ちをひた隠し、上から目線を貫いた。実際、性格が破綻しているとはいえ、帝国警備隊隊長という地位は大きな権力を持つ。悪い噂を知らないのか、権力目当てでドーガに近づき、調教した妻も過去にはいた。
ドーガは常に支配者で在らなければならない。例え、心の底から目の前の女を欲していたとしても、自分から求めてはならない。何故なら、勝者のもとには常に勝者の欲するものが手元にやってくるのだから。
「いえ、お断りいたしますわ。反吐が出ます」
アトハの手を離し、銀髪の女性に惹かれていたドーガは、その言葉の意味が分からなかった。「断る」という予想外の答えを聞き、その意味を理解したドーガの中から発生したのは激しい怒り。自分のものにならないから、というだけではなく、拒絶と同時に向けられた侮蔑の視線――それが許せなかった。
「いいだろう! 分からせてやる! お前のご主人様が一体誰だってことを!」
帝器である仕込み杖「
地球出身者が見れば、それが
「……おや? 弾切れですか?」
銀髪の女は弾切れを確認すると、興味をなくしたようにマシンガンを捨てた。
ドーガの身体には既に八発の弾丸が命中していたが、いずれも急所は外れており、すぐさま死ぬことはない。
だが、それだけでも帝国警備隊の者達に恐怖を与えるには十分だった。蜘蛛の子を散らすように逃げ出す警備隊の者達を一瞥し、女は貴族風の老人に「お爺様。よろしくお願いします」と死刑宣告をするかのように依頼した。
「殺す相手は?」
「帝国警備隊の……あの、ドーガという男が着ている服と同じ服を着ている者達を全員。彼らはドーガの小判鮫として甘い汁を吸ってきた連中ですからね。それに、帝国に情報を持ち込まれても面倒ですし、一人残らず虐殺してください」
まあ、「因果応報が云々というのであれば、私達も報いを受けるべき立場でしょうけどねぇ」と続け、女はどこからともなく紅色の刀身を持つ怪しげな刀を取り出し、ドーガと相対する。
「お礼参りの華々しいスタートを切るために、美しく捌いて見せましょう」
「願わくば、罪深き行いをしてきた皆様が死と共に改心してくださいますように」
「頭ごと潰されたら改心なんてできないと思いますけどね? さあ、楽しい楽しい暗殺の時間です! 身の毛もよだつような美しい断末魔を聞かせてくださいなぁ」
「わたくし、狩る側の人間が狩られる側に回った時に見せる絶望の顔が、ドSが苦痛と緊迫に顔を歪めて、嫌がるさまを見るのが好きなのですわ! その圧倒的強者の顔がどう歪んでいくのか、楽しみですわね」
「串刺しは素晴らしい。その原始的な美しさで、舞台を彩らせてもらうよ」
「ロ……ビクトリア様、この人達怖いんだけど!」
「チャールズさん、何を今更言っているのですか?」
「……ビクトリア様、彼らの罪状はどのようなものなのでしょうか?」
「ドーガが、遠征先で気に入った女性の心を折って服従させ、家族がいるならその家族の虐殺。後は帝国の商人から賄賂を貰って邪魔な者の殺害もしていた。帝国警備隊の他の団員もそれを見て見ぬ振りしていましたし、甘い汁を吸ってきたので罪深さは変わらないでしょう。情状酌量の余地はありません」
「……ふざけたハーレム野郎っ! てめえだけは許せねぇ!!」
「女の敵か……ならば、殺すしかないな」
「すみません……全くフォローのしようがありません。死んでください」
このビクトリアと呼ばれた女の言葉がカルメナ、チャールズ、スピネルのスイッチも入ったようで、先に暴れていた先代ラピスラズリ公爵家の戦闘使用人達に続くように参戦していった。
「さて、そろそろ死んでもらいましょうか? あっ、その「
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