百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.7-16 潜入・ルヴェリオス帝国 scene.9
Act.7-16 潜入・ルヴェリオス帝国 scene.9
<一人称視点・ラナンキュラス/ビクトリア・
ルヴェリオス帝国側から身を守るように結界を張った後、ボク達はいよいよ帝国の地に踏み込んだ。
このタイミングでボクも
更に、万全を期すためにビクトリア・
馬車を使うのもやめ、ここからの旅は徒歩になる。一番の理由は『精霊の加護持つ馬車』が目立つ身体ねぇ……まあ、他にも馬車を使っていると隣国から来た可能性を疑われるかもしれないということもあるけど。
徒歩ならまだ紛れやすいからねぇ。
今回の目的の一つは危険種の素材採取――ということで、素材の手に入っていない危険種についてはボクが一匹素材回収をするまでは危険種を攻撃しないようにしてもらうことにした。アクアとディランを中心に「お嬢様、もっと私達を信用してください!」、「そんなに俺達が信用できないのか? 酷くね、親友!」などと言った不平不満が爆発したけど、君達日頃の行いを思い出したらどうかな?
例外的に、危険種の身体に大きく傷をつけずに討伐が可能な欅、梛、櫁、椛、槭、楪、櫻、スティーリア、スピネル、チャールズ、シュトルメルトの十一人には初期討伐の危険種に関しても攻撃を許可してある。
欅達は正統に暗殺の技を極めているから不必要なダメージを与える心配はないし、スティーリアには凍結効果を持つ氷属性攻撃によってダメージをほとんど与えずに討伐することもでかる。スピネルの『万物切断千変万化-ドラゴーンプラティナクロース-』はこういった仕事向きの装備だし、なんだかんだで器用なチャールズも『武装変化-マスターウェポン-』を上手く使いこなして最低限のダメージで討伐してくれそうだしねぇ。
神嶺オリンポスの山頂付近で出現した危険種は、S級危険種が摩訶鉢特摩の大寒氷龍、【暴君】の異名を持つタイラントと呼ばれる白銀の竜、心臓に蒼焔を生み出す力があり、蒼焔を全身に纏う
ちなみに、摩訶鉢特摩の大寒氷龍の素材は【アラディール大迷宮】で既に獲得済み。ただし、「無の状態から氷を生成し自在に操る能力」を持つという血液を帝器に加工することはできなかった。……元々、帝器とは帝国を築いた初代皇帝、あるいは始皇帝の命により造られた皇帝を守護するための超兵器で、S級危険種やゾディアックメタルといった稀少な金属、太古に滅亡した国の技術など既に再現不可と言える物品や人材、技術を寄せ集めて生み出されたもので、その再現は不可能とされている。この設定が生きている以上、帝器の作成……つまり、S級危険種の兵器加工を含む作業は何人にもできないことになる。……唯一、『管理者権限』を持つ三代皇帝を除いて。
じゃあ、なんで回収しているかって言うと『管理者権限』を手に入れてから武装に組み込むため、というのが一つ。もう一つは帝国に奪われないためにこちらで独占しておきたいというのが一つ。
皇帝の
結局、皇帝と戦ってみないと分からないってことだねぇ。
「
暗殺者系三次元職の暗殺王が習得する敵一体の敵に大ダメージを与え、更に即死耐性を持たず、レベルが十以上低い相手を即死させる暗殺剣で対象を切り裂く特技、暗殺者系二次元職の暗殺卿が覚える敵の隙や不意を突いて不可視の奇襲攻撃を行う特技、武器を大きく振り回して敵の首を刈るイメージの暗殺者系四次元職の暗殺帝の奥義で限りなく負傷無しで目標の危険種三体を撃破すると、アクア達の戦闘を解禁して全員で危険種討伐を開始した。……本当はもっと種類がいると予想していて、ボクだけでは手が回らない可能性を考えたから欅達にフォローをお願いしたんだけどねぇ……まさか、目ぼしい危険種が三体しかいないなんて。
「暴れようぜ、相棒!」
「おう! いくぞ、ディラン!」
「精霊術法・
「月の力よ、我が武器に宿れ! ムーンライト・スティング!! ヴォーパル・スラスト!!」
「九蓮宝燈――暴爆!」
『『『『『『――蔓鞭ノ乱打!』』』』』』
『
「
『
マグノーリエが精霊術法によって顕現した水の竜巻が危険種を呑み込みながら山を下っていき、『ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル』に月の魔力を纏わせたプリムヴェールが危険種に突きを放って確実に一撃で仕留めていく。
シェルロッタの九つの魔力弾が着弾と同時に爆発して危険種を瀕死に追い込み、武装闘気を纏わせた欅達
スピネルが張り巡らせた『万物切断千変万化-ドラゴーンプラティナクロース-』を一気に動かし、ヴァッサーシュパイアーを含む危険種の群れを切り刻む。チャールズが『武装変化-マスターウェポン-』を様々な武器に変化させながら次々と危険種を倒していき、カルメナが『大地鳴動-アスタディザスター-』を嵌めた拳で危険種を殴り倒していく。
『
心臓を抉り取るように武装闘気を纏わせた腕で装甲を破壊するメネラオス、『黒刃天目刀-濡羽-』でか細い腕からは想像もつかない思い斬撃を放って危険種の四肢を切り落としていくリスティナ、戦いの最中にも全く感情を荒立てず淑女の微笑を浮かべながら『
まあ、目的の素材回収は既に終わっているし、別にいいんだけどさぁ。
そんなこんなでここら一帯にいた危険種は全て討伐し、素材回収が可能なものは回収して、回収できなかったものはカルメナに『大地鳴動-アスタディザスター-』の【地割れ】を使ってもらって作った亀裂に放り込んで、【農場支配】の派生スキル【遠隔耕作】と【異物転換】を駆使して亀裂を埋めて内部の危険種を畑の肥やし……じゃなかった山の肥やしにした。少しでも持ち帰られたら厄介だからねぇ。
そのまま同じように討伐と回収と処分を繰り返し、進むこと三十分程度――麓の村でオリヴィアの故郷、ナタクの村がようやく見えてきたというその時、ボク達の前に予想もしない敵が立ち塞がった。
◆
――その存在は、透き通る身体を持っていた。
蜈蚣と蜘蛛、蛇を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の化物は、ボク達を一瞥した瞬間に無数の緑の彗星のようなものを放ってきた。
「ブラックホール・フェイク」
素早く闇属性の指輪を生み出してブラックホールを発動してその全てを飲み込んで消滅させる。
あの種子は危険だからねぇ……一発一発が核弾頭一つに匹敵するエネルギーを秘めている。
「お嬢様、あれなんですか?」
「……アザトホートのコケラ・ラメッド。アザトホートの体表から剥がれ落ちた体片が意思を持って動き出した存在、或いは変化した存在だとされているレイドボスだよ。ただし、『オーバーハンドレッドレイド:
「アザトホートだと!?」
ボク達は仮想敵としてヨグ=ソトホートを設定し、その対策を考えてきた。だけど、ヨグ=ソトホートよりも強い存在を想定していなかった訳ではない。
後に実装される予定だったクトゥルフ神話系最強神アザトホートについても、その設定を話してあった。……まあ、際限がないから説明するだけで実際対策を構想する相手はヨグ=ソトホートだけにしておいたんだけど。
だから、ディランはこれがどのような存在かも知っている。……ただ、このタイミングでの遭遇はボクと同じように予想していなかったんじゃないかな?
いずれにしても、このタイミングでの遭遇は普通なら破滅エンドまっしぐら――外なる神の副将ヨグ=ソトホートなどには劣るものの、クトゥルフ程度なら秒殺するコイツの出現は場違いもいいところ。
正直、断罪される悪役令嬢の生存率よりもよっぽど生存できる可能性は低い……いや、低過ぎる。
「…………ローザ、これはどういうことなんだ?」
「皇帝と結託している神の中に『Eternal Fairytale On-line』の唯一神、恐らくアイオーンがいるってことなんだろうねぇ。ボクのアカウントの中では比較的名前の知られていないラナンキュラスを使い、更に名前を偽名にした甲斐があったってことだろうけど……まさか、このタイミングで動くなんて思っていなかった」
もっと勿体ぶって、最後の最後で仕掛けてくると思っていたんだけどねぇ……最強の唯一神は。
いや、これも単なる小手調べか。アザトホートのコケラをぶつけ、コケラを指標に相手の強さを測る。もし、コケラを倒せなかったとしたら『管理者権限』を回収できて、それならそれで良し……随分といやらしいことをしてくれるじゃないか。
「奴は消滅属性と核攻撃を持つ。はっきり言ってここでまともに戦えるのはボク一人じゃないかな? 遠距離魔法も多少は効くと思うけど、それよりも危険に晒されるリスクの方が大きいし、一旦みんなには山を登って避難しておいて欲しい。まあ、ナトゥーフさんの城まで戻れば大丈夫なんじゃないかな?」
『……お姉様! 私はお姉様を置いて逃げることなんて――』
「大丈夫、必ず勝って君達を呼びにいくからねぇ。『全移動』で迎えにいくからちょっとだけ待っていてくれないかな?」
それでも引き退くことを躊躇う欅達に微笑み、全員が山頂に向かって走り出したのを確認すると――。
「アカウントチェンジ・リーリエ!」
アカウントをリーリエに切り替え、アザトホートのコケラ・ラメッドから放たれた時空を貫くビームを生み出した闇の指輪によって発動した「ブラックホール・フェイク」で防いだ。
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