百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.7-12 潜入・ルヴェリオス帝国 scene.5
Act.7-12 潜入・ルヴェリオス帝国 scene.5
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト>
メネラオス、リスティナ、マナーリン、マイル、クイネラ、アンタレス、シュトルメルトの七人に各種闘気の使い方を教えた後は戦闘使用人達ご希望の模擬戦。
まだ魔物もほとんど出現しない、シトロンの村から少し離れた神嶺オリンポスの麓の一角で「
ちなみに、アクアとディランは先に神嶺オリンポスの第一層部分に当たる樹海の中に入ってしまっている。……二人とも他人のバトル見るよりも自分達が体を動かす方が好きなタイプだからねぇ。
「「
「つまり本気で戦っても良いということですね! わぁい、いっぱい楽しめそう! 行きますよ、お嬢様!」
「……あっ、早速犠牲者が出たみたいだね」
アンタレスが溜息を吐く中、この中では一番歳若い戦闘メイドのマイルが二本のククリナイフに武装闘気を纏わせて突撃してきた。
ボクは片手に武装闘気を纏わせると、直接相手に触れずに武装闘気を衝撃波として放つことで吹き飛ばす武気衝撃を使ってククリナイフによる攻撃を悉く弾いた。
「なかなかやりますね、お嬢様! 私、楽しくなってきちゃいました!!」
「じゃあ、少しだけ本気出しちゃっても良いよねぇ?」
裏の武装闘気で刀を作り出して右手で構え、左手で統合アイテムストレージからお札で閉じられた小さな壺を取り出す。刀で札ごと壺を砕いた瞬間、巨大化した蜈蚣が飛び出し、ボクに向かって襲い掛かった。
怨念に塗れた呪いそのものと化した蜈蚣を刀で斬り殺し、その呪いを刀に宿す。
かつて九州地方に拠点を置き弧状列島を支配しようとした邪馬台国の女王卑弥呼が編み出した邪悪な法――東洋呪術。
その中で、「丑の刻参り」や「牡丹灯籠」といった後世に作られた呪術とは異なり、初代卑弥呼が使用したとされる呪術の一つが、邪馬家に伝わる十八番「蠱毒」。
この「蠱毒」には派生系があって、「ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが膨大な呪いを溜め込んだ神霊となる」ことを利用し、その呪いの蟲を利用する「蠱毒」をベースに、「蠱毒」によって生み出した蟲を殺すことで膨大な呪いの力を武装に宿す「蠱毒之太刀」、「蠱毒」によって生み出した究極の蟲を使用する東洋呪術で宿主の感情を増幅させる蟲を寄生させる「三彭尸鬼」の大きく二つが存在する。
「三彭尸鬼」の蟲は感情を増幅させ共生しつつ少しずつ宿主を浸食し、遂には宿主を完全に乗っ取ってしまう。かなり強力な呪術ではあるけど、そもそも「蠱毒」によって生み出された膨大な呪いを持つ蟲の使役は邪馬一族だけの秘伝術でしかできないからボクには行使できないから、必然的にボクが安全に行使できるのは「蠱毒之太刀」だけということになる。
陰陽術や鬼斬の技とは対極にある力で、邪馬一族と陰陽師や鬼斬は現代まで戦い続けてきたらしい。一方で呪術の側面のある陰陽師の蘆屋氏や土御門の始祖の安倍晴明の師匠、賀茂忠行一族の賀茂氏は陰陽術と東洋呪術――かつては鬼道や妖術、単に呪術と呼ばれていたもの――の類似点を見出し、その技術の一部を取り入れていったなど、この三者には複雑な関係がある……まあ、今回の戦いには全く関係のない余談だけどねぇ。
プリムヴェールとマグノーリエはグロ耐性が低めだからか、「牡丹灯籠」を見た時のクラスメイト達のように恐怖を感じていた……まあ、あの勇者を志す割には勇者の勇ましい心が欠片も感じられない、戦う覚悟も決まっていないなんちゃって勇者共みたいに痴態を晒すようなことは無かったけど。
「――ッ! マイル、あれは危険だわッ!」
武装闘気を纏わせたマナーリンが血相を変えて『
恐怖一色に染まった瞳からは、ボクの東洋呪術に生理的嫌悪感を抱いたことが窺える。……ってか、案外耐性が低いんだねぇ……他人の尊厳を踏み躙る術はメネラオスも使うし、てっきり耐性を持っていると思ったんだけど。
「九蓮宝燈」
「ブラックホール・フラグメント」
小さなブラックホールの断片を複数同時に出現させる、ローザがレベル99で習得する固有最上級闇魔法の派生系オリジナル魔法でカルロス時代から全く威力の落ちていない九つの超圧縮魔力弾を全て飲み込み消滅させ、呪いを宿した刀を持つ手とは反対の手に武気衝撃を放って『
マイルの身体が「蠱毒」の猛烈な呪いによって勢いよく蝕まれ、身体が崩壊していく。
裏武装闘気の刀に掛けられていた呪いも解除され、元の黒刀に戻った。
「なかなか面白い攻撃をするんだね! それじゃあ、次は僕がいくよ」
幻想級の力を得たコンツェシュを創造し、二刀流で串刺しを狙うアンタレスと――。
「……よくもマイルを殺ってくれましたね。死と共に改心してくださいませ」
『わぁ、マナーリンメイド長の『
「頭を潰されてしまえば会心のしようがありませんし、死んだマイルが外で応援していますし、そんな軽い気持ちで行けばあのお嬢様に返り討ちにされそうですが。……しかし、野蛮の人が多くて困りますね。美しく切り刻むことが美はないでしょうか?」
「今更だけど君たち全員返品させてもらっていいかなぁ? 君達、キャラが濃過ぎて潜入メインの仕事で滅茶苦茶目立ちそうだしねぇ。それに、同じシリアルキラーでもどんな外道にも敬意を払い、人を殺すことにも一切の躊躇がないものの分別がついていて仲間として安心できるスピネルさんと違って、君達っていつ背後から襲われるか分からない狂犬みたいだしねぇ……背中任せて大丈夫かな? 一応、ボクも殺気を向けられたら条件反射的に殺してしまうくらいの防衛術は心得ているけどねぇ」
『……すみません、
『ってか、反射的に殺してしまうローザさんの方が恐ろしいんだけど』
「あっ、チャールズさんに関しては殺気向けようと向けまいとイラッとするようなことを言ったら沈めるからねぇ。ヒースとファイズと三人纏めて頭が出るようにコンクリートで固めて適当な川にポイ捨てしてあげてもいいからねぇ……道頓堀にポイ捨てされた白いスーツに襟元に黒いリボンタイを結んだ像みたいに」
『さらっと、死刑宣告するのやめてください! 俺は別にやましいことはしていない! ってか、思春期の男子なら当然のことでしょ! 圓さんも元男ならそれくらい分かるで――』
「よっぽど沈められたいみたいだねぇ。後でボコボコにしてあげるから楽しみにしていてねぇ♡」
『良かったな、チャールズ。ローザおねーさんが可愛がってくれるみたいだぞ』
『全く嬉しくないよ、あんな貧にゅ――』
あっ、スフィーリアに氷漬けにされて、欅達に氷を削られるようにペシペシやられている……まあ、後で蘇生させればいっか。良い薬になると良いけど。
と、まあこんな感じでマナーリンの『
「
なるほどねぇ……火、水、風、土、金、光、闇――七属性の東洋竜を同時に顕現し、流星の如く空から降らせる大魔法ということか。
属性適正や膨大な魔力に見合うだけの変換能力を得たシェルロッタの新たな魔法。……って、味方の立ち位置の戦闘使用人も巻き込むつもりまんまんじゃん!!
「
まあ、そんな簡単に仕留められるつもりはないけどねぇ。火、氷、雷の属性の力を込めた石を均等に配置した指輪を【万物創造】によって生み出し、火、氷、雷の三属性の魔力を強引に重ね合わせることで生み出した虚数エネルギーの奔流を七つ、空より襲来する七竜に向けて放つ。
虚数エネルギーにより対象を最小の単位までレベルまで分解消滅させるボクの分解属性に頼らない分解魔法は七竜を跡形もなく消し飛ばした。
「それじゃあ、順番に消えていってもらおうかな?
「
ボクの指とマナーリンを結ぶ弾道を描くこともなく、マナーリンの身体は即座に元素レベルの分子へと分解される。
「――串刺しされるのはお嫌いかな? 【錬成・串刺公】」
地面に対して【遠隔錬成】を行ってアンタレスの足元から唐突に生えた無数の岩の針がアンタレスの身体を刺し貫いた。串刺しを得意とする庭師が串刺しにされて敗北ってのは、なかなか皮肉が効いているよねぇ? まあ、狙ってやっているんだけどさ。
左側から武装闘気を纏わせた『闇を征く使用人の飛翔ブーツ』を履いた足でスカートがめくれることも躊躇せずに放ってきた空中回し蹴りを、武装闘気と覇王の霸気を纏わせた足でドレスのまま思いっきり上段前蹴りを放って防御――覇王の霸気を纏ったボクの脚が優り、クイネラの右脚が砕け散った。
出血により生じた痛みを通り越した熱と、想定外の状況に一瞬の隙を見せたクイネラの頭上から思いっきり踵落としを放ち、脳天から真っ直ぐに竹割の要領でクイネラを縦に引き裂いた。
グロ耐性がこの中では一番低いマグノーリエは必死で吐き気を堪え、プリムヴェールも深刻な精神ダメージを受けていた。……ってか、この二人に関してはSAN値チェック間近レベル? もうそろそろ慣れてほしいけどねぇ……ボクは割とグロい戦い方もするし。
フレデリカとジャスティーナも不快そうな表情を浮かべ、スピネルとカルメナも若干表情を歪めている。
そんな中、恍惚な表情を浮かべている欅達は色々とヤバイかもしれない。『きゃー♡ お姉様素敵♡』、じゃないよ! どう考えてもこの状況は。
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