百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.7-11 潜入・ルヴェリオス帝国 scene.4
Act.7-11 潜入・ルヴェリオス帝国 scene.4
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト>
宿をチェックアウトしたボク達は『精霊の加護持つ馬車』に乗り込むと神嶺オリンポスに向けて出発した。
馬車の中では大人数でもできるトランプゲームをしながら一人ずつ自己紹介をすることになった。先代ラピスラズリ公爵家もボク達がどういう集まりなのか知らないだろうし、ボク達の中にも先代ラピスラズリ公爵家の情報を全く把握していない人もいるからねぇ。……まあ、フレデリカとジャスティーナの二人以外はラピスラズリ公爵家というものがどのような立ち位置にある家から承知しているだろうし、なんとなく想像がついているだろうけどねぇ。
「なるほど……今回の同行者は複数のグループから成り立っているのだね。ローザと交友関係のあるエルフの次期族長と次期族長補佐、ローザの使用人達、ローザの保有する
「フォルトナ王国は帝国に暗殺者を送り込まれて好き放題されそうになったからねぇ。流石に今回の作戦に関わってもらわない訳にはいかないけど、基本的に騒ぎを起こす人しかいないからねぇ、あの国は」
「……失礼ながら、全ての元凶は騒ぎを起こす人間ばかりをフォルトナ王国に配置したローザさんの全責任だと思います。責任転嫁はやめて頂けませんか?」
フレデリカの毒舌が突き刺さるねぇ……まあ、事実だから弁解のしようがないんなけど。
「……【血塗れ公爵】の話は本日まで知りませんでした。何気なく事情を知ってしまいましたが、このことは誰にも話さないことをお約束致しますわ」
「そういえば、話してなかったっけ? まあ、触れなくても説明できたからねぇ。あえて触れなくてもいいかなって思っていたっていうか……」
「正直な話、ローザ様のお話ししてくださったこの世界の真実に比べれば些細な話だと思いますよ。……【血塗れ公爵】の存在も十分恐ろしいのですが、なんと言いますか、スケールが違い過ぎまして」
まあ、確かにこの世界の真実に比べたらどうしても見劣りする話だよねぇ……物差しがバグっているからそう思えるだけなんだけど。あんまり常識を破壊され続けると、そのうち感覚って麻痺してくるよねぇ。
「ところでローザ。ずっと気になっているのだが……三大将軍や宰相への対策はあるのか?」
「あっ、それずっと気になっていました。お嬢様、このタイミングでルヴェリオス帝国潜入に踏み切ったってことは何か策があるんですよね?」
「二人ともせっかちだねぇ。山に入ってから話そうと思っていたんだけどねぇ。……自然変化型の帝器、それも光や溶岩に変化させるものは武器を使っての暗殺が困難を極める。攻撃が擦り抜けたり、溶岩に武器を溶かされたりしてしまうからねぇ。……あれから検証を重ねたんだけど、武装闘気を纏うことで解決できることが分かった。武装闘気を纏えば相手の「実体」にダメージを与えることができる……これは、擦り抜ける光の性質を持つ光の人型を魔法で生み出して確認済み。これを実際に見てもらいながら説明しようと思っていたんだけどねぇ」
「あの、お嬢様? 武装闘気とはどのようなものでございますか?」
マナーリンが知らないのも至極当然のこと。ジーノはボクに内緒で大倭秋津洲産の能力を共有すべきではないと考えたのか先代公爵家には伝えていなかったみたいだし。
ちなみに、オニキス達には戻る前に装備を新調するのと同じタイミングで各種闘気を含む大倭秋津洲の裏の技術の一部は教えたからフレデリカとジャスティーナは問題なく武装闘気を使える。
シェルロッタに関してもきっちりジーノから仕込まれたようだし、問題はない。……そういえば、ジーノが「予想通りだったとはいえ、素晴らしい戦闘センスでした」と評価していたっけ? 流石はカノープスと互角に張り合えた元暗殺商人ということだねぇ。
「闘気とは『意志の力を具現化した身体エネルギー』のようなものだと思ってくれればいい。ボクの前世、大倭秋津洲には自然エネルギー、霊力、星脈のエネルギーと竜脈のエネルギーを融合した陰陽五行エネルギー、闘気、仙氣、
「なんかイメージと違っていたなぁ。てっきり、闘気は身体エネルギーだと思っていたんだが」
「ディランさんみたいな勘違いは起こりやすいからねぇ。仙氣の方が身体エネルギーを濾過したもので、闘気とは意志の力……仙氣に近いのはどちらかと言えば、霊力の方だねぇ。まあ、霊力は魂のエネルギーの方が比重が大きいけど」
「なんかこんがらがってくるし、別に力をどうやれば使えるかさえ感覚で分かっていればなんでもいいんじゃないか?」
「相変わらずアクアは感覚派だよねぇ……」
まあ、実際にアクアは人並み以上の努力もできる天才タイプだし、感覚で習得することも多い……ボクみたいな理論派とは対極に位置するからねぇ。まあ、どっちがいいなんてことはないんだけど。それがアクアやオニキスの強さな訳だし。
ただ、頭脳労働には向かないよねぇ。……まあ、それはディランに関しても同じか。参謀タイプだけど、頭脳労働よりも暴れるのが好きな人だし……漆黒騎士団って基本脳筋とズレた奴の集まりだからねぇ。そう考えると、フレデリカって相当貴重な存在だよねぇ。
「そういえば、言い忘れていたんだけど神嶺オリンポスより先には魔物以外――危険種という独自の生態系で進化した生物がいてねぇ、S級危険種みたいな帝器の材料になるような個体も出現するんだよねぇ。まあ、苦戦することはないと思うから心配はコンマ一ミリもしていないんだけど、素材としてできるだけ保存しておきたいから……くれぐれも、魔物を素材回収不可能なところまでズタボロにしないでもらえないかな?」
「お嬢様、誰がそんなことをするんですか?」
「そうだぜ、
「普段の行いを知っているからわざわざ忠告しているんだけどねぇ……特にアクアとディランさん?」
プリムヴェールとマグノーリエは最近少しずつ魔物をできるだけ傷つけないように討伐できるようになってきたけど、アクアとディランは今でも戦った魔物を素材回収不可能なものにしてしまうからねぇ……素材を回収できるように魔物を討伐するのが冒険者の最低限習得すべき技術なんだけどねぇ。
まあ、目ぼしい危険種は先にボクの方で討伐してしまえばいいか。
「しかし、そんな帝器の素材になるような危険種が出現するなら、帝国が戦力強化のために素材調達に誰かを送り込んでいるかもしれないんじゃねぇか? 皇帝はどのタイミングかは分からないけど、俺達が仕掛けてくることを知っているんだろ? だったら、帝器みたいな兵器を増産しておこうと考えるのは当然の流れなんじゃねぇか?」
「流石はディランさん、冴えているねぇ。まあ、可能性は高いんじゃないかな? もしかしたら、神嶺オリンポスから潜入するまでの間に帝国軍の人間と接触する可能性もないとは言い切れないけど、リストにある相手なら討伐して暗殺集団シャドウウォーカーへの手土産にすればいいんじゃないかな?」
まあ、どちらにしろリストにある帝国軍の人間は例外なく腐敗の元凶となり得るから革命前には処分しておかないといけないし、それが早くなるか遅くなるか程度の違いしかないんだけど。
「なんだか『悪を斬る』っていう感じの仕事だな。同じ手を汚すなら、せめて誰かのためになる方がいい……こういう仕事はロクでもない私には天職だな」
人を殺すのに良いも悪いもない……けど、極夜の黒狼は元々は悪人だけを殺す、義賊の暗殺集団を目指していた。金を積まれれば誰でも殺す殺人鬼集団になった極夜の黒狼を見限って一度離脱したカルメナや、極夜の黒狼の初期メンバーにとって、今回の任務は理想そのものかもしれないねぇ。
「さて、そろそろシトロンの村からも離れたことだし、一旦降りようか? 闘気の使い方を実演を交えながら教えさせてもらうよ」
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