百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.5-65 獣人族一の思慮深さを持つと現獣王が大絶賛の、相手をおちょくったような馬鹿丁寧な口調の残念兎が仲間を呼んだ! scene.1
Act.5-65 獣人族一の思慮深さを持つと現獣王が大絶賛の、相手をおちょくったような馬鹿丁寧な口調の残念兎が仲間を呼んだ! scene.1
<一人称視点・ネメシア>
リルディナ樹海の外れ――獣王決定戦の建造も届かない静かな森の中で、ボクはメアレイズ達六人の兎人族と相対していた。
メアレイズ以外の兎人族はもふもふのアンゴラ兎を彷彿とされる少女ラーフェリア=
その兎人族達は一様に怯えていた。メアレイズが必死でボク達の間のピリピリとした空気をどうにかしようとあたふたしているけど……それ、全然効果がないと思うよ。
「改めまして、ネメシアです。今は兎人族の見た目ですが、一応人間ということになっています。本日はメアレイス様からお願いされまして兎人族の皆様の強化のお手伝いをすることになりました」
「……さっきと口調が全然変わっているのでございます!」
「……メアレイズさん、何か言った?」
「な、なんでもありませんでございます!!」
……これ、傍目から見るとボクが兎人族……というか、メアレイズをいじめているように見えるよねぇ……まあ、大凡間違ってはないんだろうけど、これの場合は自分で撒いた種だからねぇ、つまり一言余計。
「……虫も殺せぬ優しい兎人族。隠形と逃げ足だけが得意で、弱いから他の獣人族には逆らえない。個人的にはボクはそのままでもいいけどねぇ。誰かを傷つける力が本当に尊いと思うかな? 確かに、力が無ければ大切なものは守れない……でも、その力は他人を傷つける力にだってなるんだよ。強さってものは表裏一体――それを扱う人によってその意味は変わってくる。君達は君達を苦しめてきた他の獣人達を見返してやりたいのかな? まあ、それならそれで止めはしないけどねぇ。……このままで居続けたいのならそのままでもいいと思うし、それでも強くなりたいというのなら協力することも吝かじゃない。例え、復讐の連鎖になろうとも他の獣人達の上に立ち、同じ目に遭わせたいというのなら、それも仕方のないこと……止めやしないよ。実際、ボクは非暴力不服従を貫いてきた人間じゃない訳だから、それを相手に強要するのは道理に反すると思わないかい? ただ、『魔法少女には「戦う魔法少女」と「戦わない魔法少女」がいる。だからといって「戦わない魔法少女」が弱いわけではない』という有名な言葉もあるような、必ずしも戦わない者が弱い訳じゃないんだ。……それを踏まえてよく考えてもらいたい。君達の目指す理想は一体何なのか? ボクはその理想を叶えるために尽力するつもりだよ……君達にこの運命を強いたのはまあ、巡り巡ればボクだからねぇ」
「……目指す強さ、でございますか? 別に私は他の獣人族の皆様を見下す側に立ちたいとは思わないのでございます……ただ、私達兎人族は弱過ぎるのでございます。だから、私は同族を――家族を守れるようになりたいのでございます! そのための力が欲しいのでございます!!」
「…………他のみんなも、それでいいの?」
「「「「「――はい、よろしくお願いします、ネメシアさん」」」」」
「……家族、か。…………うん、君達の願い、必ずボクが叶えてあげるよ。その気持ち、ボクも痛いほど分かるからねぇ」
家族かぁ……ボクにも月紫さん達――大切な家族を守るための力を求めて強くなろうとしていたからねぇ。……まあ、結局月紫さん達には守られてばかりで一度も彼女達を守る側に回ったことは無かったのだけど……。
「さて、一つずつ試してみようか。とりあえず実力を見せてもらいたいから、手っ取り早く全員で攻撃を仕掛けてみてください」
「ほ、本当に大丈夫なのでございますか!?」
「大丈夫大丈夫。そもそも、
「ほ、本当にいいのでございますね! ――行くでございます!!」
一斉に仕掛けてくるメアレイズ達だけど、誰も彼もへなちょこパンチ……しかも馬鹿正直な軌道過ぎて簡単に避けられるし。強さ確認のために全部受けたけどねぇ。
「い、痛いでございますッ!」
「…………硬過ぎてこっちの手の方が痛くなってくるよ!」
「はぁはぁ……強いな」
「……強いよ、ネメシアお姉ちゃん」
「……か、硬過ぎて……全然ダメだ」
「……やっぱり、兎人族に戦闘は無理なのかな?」
寧ろ、メアレイズ達の方がダメージを受けている……って、これ相当じゃない?
HPバーも自然回復で一瞬で回復するレベルしか減っていないし……これは、また。
「そうだねぇ……よぉく、分かったよ。それじゃあボクも試合があるし、今からいくつかに区分けして教えていくから、その間に復習するって形でいいかな? で、各レッスンの最初にその成果を確認しつつ次のステップに進んでいくってことで。といっても教えてすぐに上達するものでもないから、獣王決定戦中にボクの教えたことを全てマスターしろなんて無茶は言わないから安心してねぇ。ボクがやるのはやり方を教えるっていう切っ掛けだけ。結局、そこからどこまで頑張るかはその人次第……そこからの上達の具合も人によって向き不向きがあるからねぇ。色々パターンは考えているし、その全てを習得すれば間違いなく最弱種族から脱出できるだろうけど、まあどれかは上手くいくんじゃないかな? 全部習得できたら儲けものくらいで……」
「ほ、本当にこんな私達でも強くなれるのでございますか!? ……さっきので失望されたのではございませんか?」
「いや、しないって。あくまで確認のためだからねぇ。……さて、それじゃあ一つ一つ試して行こうか。まずは、身体能力強化分野から――闘気戦闘術と仙術の二つを紹介させてもらうよ」
闘気と呼ばれる力で身体能力の強化ができる闘気戦闘術と調息法を使って自己の身中に丹を生成する内丹術の副次的な効果で仙氣と呼ばれる力を利用して神通力と呼ばれる力を使う仙術には類似点が多い。
前世のボクはそもそも解脱や不死に興味がなくて、仙術との相性の悪さも相まって闘気戦闘術だけで十分と避けてきたのだけど、今のボクはハーモナイアのお節介のおかげで仙術も使えるようになっているかもしれないし、兎人族と実は相性がいいかもしれないからねぇ……まあ、試して損はないんだし、やってみる価値はあるんじゃないかな?
もし、ここで仙術と闘気戦闘術を習得できれば「スピードの強化で手数増やす」、「攻撃力や耐久力の低さを補う」の二つの目標は達成されることになる。
「隠形技術を伸ばして暗殺特化」の方はラピスラズリ公爵家戦闘使用人式暗殺術と常夜流忍術でいいと思うし、魔法に関しては魔力を使わなくても発動できる原初魔法の他に、空気中の魔力を取り込んで魔法を発動できる外部装置を用意するのも手かも……上手くいけばブライトネス王国の戦力にも導入できるからねぇ。後は独創級武器で強化して…………なんか楽しくなってきたねぇ。
まずは一つ一つの闘気の使い方を見せつつコツを教え、続いて仙術の説明に移る。
ちなみに、仙術の神通力は別名八通力と呼ばれていて、神境智證通、天耳智證通、他心智證通、天眼智證通、金剛智證通、耐魔智證通、剛力智證通、内活智證通の八つに区分される。
神境智證通は神足通とも呼ばれ、両足に仙氣を纏うことで通常では考えられない速力や跳躍力を得るというもの。極めれば瞬間移動すら可能となり、空中歩行や縮地も可能になる……まあ、より正確に言えば瞬間移動というより十万億土すらも一瞬にして移動する究極の縮地であって、他の世界への転移はできないんだけどねぇ。
天耳智證通は天耳通とも呼ばれ、両耳に仙氣を纏うことであらゆることを聞き分けることができる驚異的な聴力を得ることができるというもの。
他心智證通は他心通とも呼ばれ、他者の心を知る読心術の効果がある。心の透視とも言える能力で、その人が何を考えているかを見通せる力なんだけど、心を閉ざしている場合は知ることができない。また、応用で意思疎通のできない動物や草木の心を見通すこともできる。万物の心の声を聞く力で仙氣を纏う場所は心……まあ、心がどこにあるか分からなくて苦戦するんだけど、まあなんとなくフィーリングでやっているみたいだねぇ。
天眼智證通は天眼通とも呼ばれ、単なる視力増強に留まらず、普通の人の目には映らない世界のことが見え、自分自身と他人の過去から未来へと流れていく光景を時間に沿って、或いは逆らって見ることができるという能力。仙氣を纏う場所は両目。
金剛智證通は金剛通とも呼ばれ、仙氣で体を硬化させることにより防御力を上昇させるというもの。一極集中させない限りはダメージを負ってしまうほど防御力はあまり強くないんだけどねぇ。
耐魔智證通は耐魔通とも呼ばれ、仙氣で体を硬化させることにより物理以外に対する防御力を上昇させるというもの。まあ、完全に防ぎ切れる訳ではないんだけどねぇ。
剛力智證通は剛力通とも呼ばれ、手や足に仙氣を纏うことで通常では考えられない膂力を得るというもの。
そして、内活智證通は内活通とも呼ばれ、仙氣を身体中に巡らせることで肉体の治癒力を高めるというもの。
まあ、聞いての通りで闘気戦闘術と被っているところも多いんだけどねぇ……ただ、相乗効果で効果が上昇するから両方習得して損はないんだけどねぇ。
結果として、最も進んだメアレイズが金剛闘気、剛力闘気、迅速闘気、治癒闘気の基礎四闘気を全て一定レベルで扱え、調息によって仙氣を練ることができる段階まで達し、残る五人はそれよりいくつか劣るレベルまで到達した。まあ、初めてすぐにここまでできれば上等だよねぇ。
ちなみに、ボクは八通力全ての習得に成功した……前世では上手くいかなかったのに、ハーモナイアのお節介って凄いよねぇ……まさにチート。
「……そろそろ第二回戦が始まるみたいだからボクは一旦戻らせてもらうよ」
「分かりましたなのでございます! 健闘を祈るでございます」
「……まあ、相手は獣王経験者でもアクアでもプリムヴェールさんでもないし、大したことはないだろうねぇ。――それじゃあ、みんな頑張ってねぇ」
さて、アクアとプリムヴェールの対決――楽しませて頂きますか。
メアレイズ達を残して、ボクは獣王決定戦の会場へと転移した。
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