百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.5-37 使節団の再始動〜ブライトネス王国発、ユミル自由同盟行き〜 scene.8
Act.5-37 使節団の再始動〜ブライトネス王国発、ユミル自由同盟行き〜 scene.8
<一人称視点・ローザ=ラピスラズリ>
「……あの? 公爵令嬢に限らずですが、貴族の令嬢というのは自分で紅茶を淹れはしないと思うのですが」
「ローザお嬢様は炊事、洗濯、掃除に……大抵の家事は一人でこなしてしまうわ。メイドに混じって仕事をしていることもあるし、仕事への向き合う姿勢は執事長がドン引きするほどストイックなのよ。少しはヒースにも見習ってもらいたいわ」
「まあ、ヒースも仕事はしているけどねぇ。アクアも掃除、炊事、洗濯に関してはヒースのことを笑えないんじゃないかな? アクアって男性使用人に混じって力仕事をしているイメージだし」
アクアがその小さな身体に似合わない筈の力仕事をしている姿に、しっくり来たと頷くレミュア達。
「ところで、ローザ嬢はこれから少し時間があるか?」
「ボク達の方は長期的な仕事で、スケジュールもタイトじゃないから問題ないけど……」
「ならば、一つ頼まれてくれないか? 実は新しい魔法の研究をするために王都では狭過ぎるから戻ってきたのだが、やはり魔法は対人戦をして初めてその効果を確認できると思うのだ。そこで、ローザ嬢なら本気で私の相手をしても問題はないだろう? それに、前回のバトルロイヤルでも手合わせできなかったしな」
「確かに……映像で見せてもらっただけじゃ強さを実感できないからねぇ。そうだ、お弟子さんと二人でタッグを組んでみたらどうかな? まだ研究成果をレミュアさんにも見せてないでしょう?」
「私一人ではローザ嬢と対峙したところですぐに負けてしまうだろう。……本当はもう数人欲しいところだが、三対一でも勝利を収めたローザ嬢に人数で押し切るのは悪手か。それに、私の魔法は規模が大きいものが多い……それが一番だろう。レミュア、そういうことだから力を貸してくれないか?」
「分かったわ。ローザさん、お手合わせお願いします」
決まったねぇ。
その後、ボク達は紅茶とお菓子に舌鼓を打ってから庵を出て外に移動した。
「それじゃあ、バトルロイヤルの時みたいにフィールドを展開させてもらうねぇ。ルールはどちらかのチームのメンバーが全滅するまでの勝負で、今回は戦闘時間は無制限で、この戦いの間は外部と時間が切り離されて、内部での時間経過は外へは反映されない――つまり一切時間が経過しないから、そのつもりでいてねぇ」
「つまり、時間加速ではなく、時空が切り離された場所での戦闘ということか。相変わらず、スケールが凄いな。まあ、時間は長命のエルフにとっても有限だから有難い話ではあるが。……それでは、始めてくれ」
「
転移した先は
「客席には絶対に破れない設定のバリアが張ってあるからどんなにボク達が暴れても壊れる心配はないからねぇ」
「それは良かった。本気を出せそうだ」
杖を構えるミーフィリアと、剣を構えるレミュア――戦闘態勢を取る二人を前に、ボクも戦闘態勢を取ることにした。
「アカウントチェンジ・ラナンキュラス」
……まあ、二人のように武器を構えたんじゃなくてアカウントを変更しただけなんだけど。
「……これはまた、情報が少ないアカウントを出してきたな。十二刀流という奥の手を持つ『二刀絶剣』のアネモネ、十一の杖を使いこなす魔法特化の『エルフの魔導王』のマリーゴールド、回復職の聖女でありながら肉弾戦を得意とする『ウサ耳破壊僧』のネメシアの情報はあるが、ラナンキュラスは龍人の神祖であることと、吟遊帝と暗殺帝という二つの職の他に二つの職を持っているという以外に情報がない。……いずれにしても厄介極まりない相手だ。殺すつもりでいかないと簡単にやられるぞ」
「――はい、師匠!」
「それじゃあ、始めようか? …………さあ! 強化してやろう! もてる力のすべてでかかってこい!」
援護歌と呼ばれる吟遊詩人系の特技を多用し、助奏のオブリガードで自分に対する援護歌の効果を無効化する代わりに他の対象者への援護歌の効果を上昇させ、快活のヴィヴァーチェで対象者達(自分を除く)のステータスを一段階上昇させ、神速のエチュードで対象者達(自分を除く)の武器攻撃速度と命中率を上昇させ、舞踏のパヴァーヌで対象者達(自分を除く)の敏捷性を上昇させ、フォルティシシシモで対象者達(自分を除く)の攻撃力を特大上昇させる。
どこかの赤マントの変質者が
「――蒼氷の女王の尖兵」
『氷の尖兵を作り出す魔法』、『作り出した氷を分解する魔法』、『空気中の水分と氷像の水分を凝固させる魔法』の三つからなる戦術級白兵魔法……早速仕掛けてきたねぇ。
「それが師匠の……ミーフィリアさんの新しい魔法」
「ちょっと厳しそうだけど、仕方ないか。
イベント職の神竜巫女が習得する攻撃を命中させるか敵の攻撃を回避する度にステータスを上昇させる特技と、毎ターン一定値の回復と敵にダメージを与えた際にその三分の一の体力を回復する脈動回復魔法を付与して、準備を整え――。
「
イベント職の神竜騎士の効果で召喚した低級の火竜(東洋風の竜であって、西洋風のドラゴンの姿はしていない)を『妖刀・紅月影』に纏わせて蒼氷の女王の尖兵に斬撃を浴びせる……けど。
「相変わらず厄介な再生能力だねぇ、これ。溶かされた部分も空気中の水分を使って再生して元通り……竜の炎なら燃やせるかと思ったけど効かないのは痛いねぇ。でも、これならどうかな? 空間魔法-リアル・ディスタンス・ディスターブ-」
空間魔法の込められた指輪を使い、蒼氷の女王の尖兵達との実際の距離とコロッセオ内部の実際の距離を操って蒼氷の女王の尖兵達をボクの遥か後方に移動させる。
「これで蒼氷の女王の尖兵達はボクに攻撃することはできないねぇ。それじゃあ、攻撃させてもらうよ――
ボクは一瞬でレミュアと距離を詰める……と、『妖刀・紅月影』を振るった。
放った斬撃がドラゴンの姿に変わり、レミュアに殺到する。
「焔獄孤空連斬」
『彗星細剣コメッツレイピア』に魔法剣に宿した焔を孤月状の斬撃として連続で放つレミュア……だけど残念。レミュアの炎の斬撃はドラゴン型の斬撃もボク自身も擦り抜け、虚しく空を切る。
「レミュア、防御だ!」
「――ッ! 土塁防壁!!」
「――
レミュアは咄嗟に得意の土魔法で土の壁を作り出し、そのまま退避した。
ボクの放った斬撃は大地を割るほどの衝撃を放ちながら土の壁をたった一瞬で粉砕――風圧でレミュアを後方の壁まで吹き飛ばした。
暗殺者系四次元職の暗殺帝の奥義――
「今の技、レミュアに当たれば間違いなく倒されていたな」
「倒されると観覧席に行きになるから、もしかしたらボクとミーフィリアさんの一騎討ちを観戦することになっていたかもしれないねぇ。流石はミーフィリアさん、危機予測も一廉か。それに、師匠の言葉を疑うことなく瞬時に防御に転じられるレミュアさんも流石だよ。しかし、参ったねぇ……どうしようか? 必殺技を使っちゃったからな……。とりあえず、ステータスを上げて物理で殴ればいいか。超絶技巧曲ラ・カンパネラ! 超絶技巧のヴィルトゥオーソ!」
超絶技巧曲ラ・カンパネラは吟遊詩人系四次元職の吟遊帝が習得する奥義級の援護歌で、援護歌を重ね掛けをするとどうしても発生してしまう強化の上限を撤廃し、超過して援護歌の効果を発動することができるのと同時に全ステータスを最初の上限値まで上昇させることができる。
そこに、自身の攻撃力と敏捷を超特大上昇させる援護歌を発動させ――。
「耳障りな不協和音」
二つ以上の援護歌を発動している際に、敵に対して音で攻撃することが可能な吟遊詩人系四次元職の吟遊帝の特殊攻撃特技でミーフィリアとレミュアにダメージを与える。この特技は永続効果を持っていて、援護歌を二つ以上発動している限りずっとダメージを与えられるんだよねぇ。
「……っ、なかなかイヤらしい戦い方もするのだな」
「まぁねぇ、ボクだって搦め手の一つや二つ、使うよ? そもそもラスボス令嬢ローザ=ラピスラズリも定期的にダメージを発生させる「得体の知れない不吉な穢れが身体を苦痛に苛む」っていうダメージカードを設置するミアズマとか、回復魔法「ダーク・ヒール」っていうボスキャラが持つと厄介な能力と原則的にボスが持ってはいけない回復魔法を持っている訳だし、別にボクがタチの悪い戦法を使ってもいいんじゃないかな? まあ、ボクも本気で全部の攻撃を避けようとすれば、それも可能ではあるんだけど」
「空間魔法による距離操作だな。……さっきのレミュアの攻撃が通用せず、ローザ嬢の攻撃だけが効果を発揮したのは二種類の距離に関わる空間魔法を使っていたからだ。感覚的距離と実際の距離――この二つを操作することで、一度目はラナンキュラスがレミュアの前にいると誤認させたから攻撃を受けなかった。次の攻撃は至近距離で特技を発動することに成功した。つまり、一度目は感覚的距離のみを変化させ、二度目は実際の距離を変化させて肉薄したのだろう? 空間魔法といえば、空間同士を繋ぐ
咄嗟に「空間魔法-リアル・ディスタンス・ディスターブ-」で実際の距離を変更してミーフィリアの攻撃を躱した……筈なんだけどねぇ。まずい、悪寒が。
「
イベント職の神竜巫女が習得する状態異常回復魔法で悪寒を癒した直後――今度はボクの足元を起点に新たな魔法が発動された。
「真・夜魔の女王の息吹-局所暴風-」
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