百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.3-15 悪役令嬢、王宮に行く scene.2
Act.3-15 悪役令嬢、王宮に行く scene.2
<一人称視点・ローザ=ラピスラズリ>
謁見の間の最上部にある玉座は……まさかの空席だった。
その下層部に円形状に簡素な椅子が置かれている。
その椅子に座るのはラインヴェルドを含め六人。
氷のような冷たい双眸を持つナイスミドル……ブライトネス王国の宰相でアクアマリン伯爵家当主のアーネスト=アクアマリン。
ブライトネス王国の王弟で軍務省の長官を務めているやや脳筋寄りのバルトロメオ=ブライトネス。
ブライトネス王国の第一王子で究極のブラコン&シスコンの変態、ヴェモンハルト=ブライトネス。
ヴェモンハルトの婚約者的立場にいるアンブローズ男爵家次女で、国で一番の才女と称えられた人物。魔法省特務研究室所長スザンナ=アンブローズ。
「
そこに、カノープスとディラン、統括侍女ノクトとボク、アクアを入れた十一の椅子……このいっそカオスとも言えるゴールデンキャストの中に三歳児が座るとか……どんな罰ゲーム??
「……一応確認だけど、ボクってデビュタント前の三歳の子供という認識で間違いないよねぇ?」
「ん? だからどうした? ここにはお前の正体を知っている奴しかいねえから遠慮するな。統括侍女も座れ」
ああ、ラインヴェルドに何を言っても無駄だと思っているノクトが潔く座った。……よくラインヴェルドの性格を理解しているねぇ。
「それじゃあ、宝剣レガリアティンを打ち直した奴を見せてもらおうか。あっ、報酬は期待していいぞ、その辺り宰相が上手くやってくれるからな」
「……ラインヴェルド様、宰相を青い猫型ロボットか何かと勘違いしていない? 便利屋じゃないと思うし、このままだと胃潰瘍で撃沈すると思うんだけど……それじゃあ、早速現物を出すよ」
統合アイテムストレージから
それをラインヴェルドに手渡しつつ、ホワイトボードと専用マーカーを取り出して鑑定結果を書き写した。
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・
▶︎ブライトネス王国を建国した初代国王が竜を倒した時に使った剣と太陽神フレイの細身の長刀が合わさったことで生まれた新たな王権の象徴。
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:幻想級
付喪神度:6,900/99,999,999,999【該当者:ブライトネス王家一族/
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「ちなみに、前の錆びた剣の鑑定結果ってどうだったんだ?」
「……陛下、ブライトネス王国の王権の象徴を錆びた剣などと」
「…………製作級。普通の職人が作ったレベル」
……なんか空気がどんよりしたんだけど……いや、言われたから正直に答えたんだよ? ボクのせいじゃないよねぇ??
「……まあ、『Eternal Fairytale On-line』での分類だからねぇ。新たにクリエイトしようとしたものはどんな業物でも製作級になってしまうんだよねぇ。……今回、幻想級の『
「失礼ながらお嬢様。そんな寝ている獅子の尾を踏むような所行、頭のネジが外れに外れている陛下でも絶対になさらないと思います」
「ブハッ!! まっ、マジか……親友、そんな口調なの? 違和感ありまくりだわ。猫被っているローザと同レベルだよ、アハハっ……マジウケる」
「「よし、この大臣埋めよう」」
「…………おいおい、親友。酷くね。お前は止めるべき立場だろ、オニキス! 折角再会した親友が埋められちまうんだぞ」
……まあ、アクアも本気で埋めようとは思っていないんだけどねぇ。えっ、ボク? 別にどっちでもいいかな?
「ところでさ、俺って家出奔して大臣室に住んでいるんだけど、親友のところに行ってもいい?」
「……大臣が住むとなったら絶対に目立つからね。勿論、お断りだよ」
「じゃあ、アクアをボクの専属メイドにもらえないかな? で、丁度いくつか土地と小さな荒屋なら持っているからそこで二人で住んだらどうかな? ねぇ、お父様」
「……まあ、アクアは裏よりも表側の方が活躍できるタイプだからね。丁度ローザにも専属メイドが必要だと思っていたところだし、いいよ」
「……えっ、ということはお嬢様のお着替えを担当する係なども!?」
「いや、ないよ! そんな係! ステータスの装備切り替えを使えば服の大きさを調整した状態で着替えられるし、とにかく楽だから協力が必要なドレスとかも一人で着ているからねぇ。……というか、ボクは百合を眺めるのは好きだけど自分が百合に飛び込むのは恐れ多いってタイプだからねぇ。美人さんなアクアと百合百合するのは違うかなって」
百合に割って入るとか、ダメ絶対。それは極刑に値するのです!! 市中引き回しの上、打ち首じゃァ!!
「アハハ、面白えな。お前らのやり取り見ていると暇にならなくて最高だわ。……で、だ。ローザ、お前って香辛料を求めてエルフと獣人族と交渉しようって考えているんだろ?」
あっ……やっぱり切り出してきたねぇ。
「まあ、なんとなく予想はしていたよ。……こっちも何人か連れて行きたい人がいるからねぇ。……ボクの戦力と言って差し支えないかは微妙だけど極夜の黒狼と、後はまだ交渉はしていないけど知り合いの冒険者を何人か巻き込みたいなとは思っているよ。来る戦いに備えて冒険者ギルドの冒険者も強化していかないといけないと思っていたところでねぇ、ボクが今組んでいる人達はもっと強くなれるんじゃないかって考えている人達ばかりだからねぇ」
……まあ、巻き込むのは悪いかもしれないんだけどさ。……そもそもこれって君達の世界の目的であって、ボクって非難される立場なのか微妙なんじゃないのっていうのが実は本音だったりする。……まあ、大元のシナリオ書いたのはボクだから責任が無いって訳じゃないとは思っているけどさ。
「そうか。まあ、こっちは便乗させてもらうだけだから人選に文句を言うつもりはねえよ。こっちからはミーフィリアとバルトロメオ、ディランの三人を出してぇんだけど」
「……まあ、バルトロメオ様とディラン様ってのはいい考えだと思うよ。実際に王の代理を務められる権力は持っている上に働かない二人。ディラン様は逃亡癖のある大臣だし、バルトロメオ様は暇さえあればナンパして数多の浮名を流すダメな人でしょう?」
「扱いが辛辣過ぎないか? 俺ってこれでも王弟なんだけど……。でも、そういう強気な女もいいよな。どうだ? 社交界デビューしたら俺と付き合わねえか?」
「あはは、バルトロメオ様は冗談がお好きだねぇ。……生憎とボクは『ひっつめ髪に分厚い眼鏡、不愛想な王女専属の侍女』を自称しているどこかの王女宮侍女じゃないんで、そもそも男は対象外だよ。じゃあ、女の人? って聞かれると百合や恋人関係を壊してまで強引に行きたいとは思わないし……やっぱり、ボクの理想は前世からずっとあの人だからねぇ」
「そういえば、圓さんの初恋の人って聞いていないよね。一体誰なのかな?」
「それはお父様にも流石に教えられないよ」
……まあ、理想があの人だとしても実際にあの人がボクを見つけない限りはそんな未来は来ないんだけどさ。
「で、問題はミーフィリアさんだよ。確か、人間とエルフのハーフで駆け落ちした果てに生まれたのがミーフィリアさんでしょう? 他種族差別が激しいこの世界で、なんとか耐えながら人間側の世界で出世してその実力を認めさせたのは凄いけど。……エルフの世界でも立場は悪い……なんたって、『エルフ族族長の分家筋のナノーグ家の一人娘が忌々しい人間と駆け落ちして生まれた子供』だなんて絶対に認められる訳がないからねぇ。……別にミーフィリアさんのことを悪く言うつもりはないよ。寧ろ、ゲームクリエイターとして酷い半生を押し付けてしまったことには謝罪をしなくてはならないってそう思っている。……でもさ。少数で国家の密命も帯びず、あくまで一個人ということで刺激しないことを目標にするならともかく最初からそこそこの人数で、しかも国交を結ぶっていう香辛料交易の比じゃない交渉をする上に、ミーフィリアさんの問題も解決するとなると……
ただの高難易度香辛料交易がエルフの開国に化けやがった……しかも、このパターンだと獣人族の時にもおまけとかでとんでもない要求を追加されるんだろうねぇ。……こいつやっぱりクソ陛下か。
「……すまないな」
「ミーフィリアさんが悪い訳じゃないですよ、だいたいこいつのせいなのはそこのクソ陛下です。……とりあえず、使節団の国からの派遣は
「すまないね。私の娘のために……変わった容姿だからという理由で「呪われた子」と呼ばれて気味悪がられてしまっていてね。まあ、口さがない連中が勝手に言っていることで、私達は娘を愛しているんだが、それを間に受けて引きこもってしまったんだ。父親として何も力になれない、こうして頼むことしかできない不甲斐ない私だが、どうか娘を助けて欲しい」
「分かっております。……これもまたボクの責任ですから、彼女が一歩前に踏み出せるようにボクも全力でお手伝いさせてもらうつもりです。……例え、どんな手段を使っても」
『
ボクはその中でアカウントをアネモネに切り替える。緑霊の森行きが決まったことだし、こっちも進めておかないといけない話があるからねぇ。
「それじゃあ、ボクは冒険者ギルドに寄ってから屋敷に戻るから」
「行ってらっしゃい」
「全移動」を発動して、アクアとカノープスの乗る馬車から冒険者ギルド付近の路地裏へと転移した。
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