第502話じぃじのお手紙、僕のお手紙

『それにしても、今年はだいぶ少ないな。だいぶというか殆どか』


『そうなんです。一通り見て周ったのですが、やはりこのままでは』


『他の、隣から分けてもらう事は出来ないかしら』


『それが、近くの森も、我らの森程ではないが、かなり厳しい状態らしい。昨日帰って来たラックスの話によれば、向こうも確保に動いてるとのことだった』


『どうして、この辺の森ばかり。しかもかなり広い範囲で。私が行って来た森は、かなり充実していたわよ。みんな祭りだって騒いでいたもの』


 パンパンッ!! 私は手を鳴らして皆の話を止める。そして皆が静かになったのを確認すると話し始めた。


『今回の事。今年は我らの森、そして近隣も森が、たまたまそういう事態になってしまっただけであろう。前回は他の森の者達が、我らの森に来た。今度は我らがそれをしたいが、そうもいかないようだ』


 これからの事を話し合うには、何処までこの状態が続いているか、そして何処へ行けばこれが解決できるか、詳しく調べ早急に対策を講じねば。そのためにも、我にも今集まっている者達にも、無駄口をたたく時間はない。

 近隣の森も者達も動いているという事から、我々はもっと遠くへと向かわなければいけないかもしれないのだ。


 これから忙しくなる。森の者達のために、何としてもこの状態を脱しなければ。


      *********


 フィオレートとリリースが帰って、もう何日も経ちました。フィオレートが帰った日、くろにゃんは、お昼のご飯が終わってから帰って来たの。じぃじとばぁばのプレゼント、いっぱい持って帰って来てくれたんだ。

 それに僕達ばっかりじゃありません。チョコミ達やプルカ達のご飯や、入れ物に入れる飾りもいっぱいくれたの。


 僕はすぐにじぃじ達にお手紙書きました。うんと僕が書いたのは自分のお名前と、一生懸命練習したじぃじ達のお名前ね。いっぱい書くのは、アンソニーお兄ちゃんが書いてくれました。お父さんもジョシュアお兄ちゃんも、書いてくれるって言ったけど、僕アンソニーお兄ちゃんにお願いしたんだ。


 あのねぇ、ジョシュアお兄ちゃんはダメなの。時々字がくしゃくしゃ!って。こう字が縮まってるような、ギュッてなってるような。お父さんの字はミミズさんみたいにうにょうにょで。


 お父さんもジョシュアお兄ちゃんも、いつもお母さんに字が読めないって怒られてます。だからお父さん達にお手紙お願いしたら、じぃじ達が読めないかも。それじゃあダメダメです。だからアンソニーお兄ちゃんにお願いしました。


 プレセントありがとうと、チョコミ達のプレゼントありがとう。みんなのありがとうを書いてもらって、それからこの前の冒険のお話も書いてもらいました。初めての指名依頼のこととか、アース達と攻撃の練習したこと、後はアース達のキノコのお話とか。いっぱい書いてもらったら、お手紙8枚になっちゃったよ。


「じぃじもばぁばも、ぜんぶよんでくれる?」


「大丈夫だよ、ちゃんと全部読んでくれるよ。さぁ、これで終わり。しっかり封筒にしまって。はい出来上がり」


「ありがとでしゅう!! くろにゃん!!」


『何だ?』


「すぐおとどけ!!」


『俺はついさっき帰って来たんだぞ』


「すぐにおとどけ! おねがいでしゅ!」


「そうそう、せっかく書いてもらったんだから。それにちゃんとお礼書いたの見てもらわないと」


『くろにゃんも、あったかクッション貰ったでしょう!』


 みんなでくろにゃんの周りに集まって、くろにゃんにお願いします。


『ああ、もう!! 分かった分かった! 行ってくれば良いんだろう!』


 くろにゃんが手紙を咥えて、ササッと影の中に消えました。それでね、すぐに帰って来たんだけど。


「ちゃんと、おとどけしてくまちたか?」


『…』


「くろにゃん?」


 何かくろにゃんがブスッとしてます。お母さんがどうしたのって聞いたら、夜にまたじぃじのお家に行くんだって。


『手紙をじっくり読んで手紙を書くから、夜また取りに来いと言われた。もし取りに行ったとき書き終わってなかったら、そのまま待っていろと』


「そういえば、今回は初めてユーキちゃんが、お父さん達の名前を書いたわよね。今頃きっと感動して、手紙の内容どころじゃないわね。それにきっと、その興奮が収まっても、今度は手紙を書くのが止まらないでしょうね」


『はぁぁぁ』


 じぃじがお手紙くれるって。夜くろにゃんが取りに行ってくれるの。僕はジャンプして万歳。みんなも楽しみって。


 それでね、その日の夜、僕、くろにゃんがお手紙もって来てくれるの待ってたんだけど、くろにゃん帰ってきませんでした。それから朝起きても帰って来なくて。帰って来たのはまたまたお昼ご飯の後だったよ。


 くろにゃんが僕達の前に、ドサッて封筒を置きました。とっても厚い封筒です。お父さんのお仕事の紙が入ってる封筒みたいなやつ。お手紙の封筒が何処にもありません。


「くろにゃん、おてがみどこ?」


『…それが手紙だ』


「どれでしゅか?」


『だからそれが手紙だ。その封筒』


「えっ、これが手紙!?」


 お兄ちゃん達がビックリ。お父さんもビックリです。お母さんはそうなるだろうって思ってたわって。お母さんが封筒を持ちながら、ゆっくり読んでくれるって言いました。


 それでね、お手紙多すぎて、1度に全部読めませんでした。封筒から出したお手紙、絵本よりも厚かったの。

 最初お手紙には、プレゼントのお礼をしっかり受け取ったって書いてあって、それからあとは冒険のこととか、指名依頼頑張ったって書いてあったり。


 僕もディル達も、読んでもらってる途中で、あんまりお手紙多くてちょっと寝ちゃいそうになりました。でも頑張って起きてたよ。だってじぃじ達からのお手紙だもん。だけど今日はお手紙半分読んでもらって終わり。

 じぃじ、僕今度はもうちょっと、短いお手紙が良いなぁ。

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