第394話僕達の所にアブラムが来たよ。エシェット大丈夫かな?

「!? ユーキ!!」


 我は振り返る。そしてアブラムが笑い始めた。


「ハハハハハッ!! 準備は整った。これであのガキは俺の物だ!!」


 ユーキ達の居る方から、今までに感じた事のない闇の力を感じた。そして他からも、城の至る所から闇が溢れだし、ユーキの方へ集まって行く。


 アブラムの方を睨んで気が付いた。奴の下に見たことのない魔法陣が現れていたのだ。我も知らない魔法陣。そこから奴を包むように闇の力が溢れ、そして残りの闇がユーキ達の方へと流れて行っていた。


「それは何だ?」


「ハハハハッ!! 成功だ! これですべてが手に入る。俺は向こうへ行くとしよう。お前達も来れるならば来るがいい。だが、お前達があのガキの所へ来れたころには、ガキは俺の物に。ハハハハハ、ハハハハハハハハッ!!」


 奴が魔法陣に消え始める。城の事を考えず、我は奴に魔法を放った。しかしそれは奴の残像を突き抜け、魔法陣を残し奴は消えてしまう。


「くろにゃん、我が今からこの空間を破壊する!! 先程よりも大きく空間を破壊すればお前の力が使えるはずだ! ユーキの元へ急ぐぞ!!」


「分かった!」


 妖精王には悪いが、後のことなど考えてはいられない。出来るだけ早くユーキの元へ駆け付けなければ。それと悪いが妖精王。我がそちらへ行くまでユーキを守っていてくれ。

 我は今できる限りの力を溜め始める。そして空間の壁に向ってそれを放った。


      *********


「ふわ?」


 急に偽物の玄関ホールに黒いもやもやが集まり始めました。さっきまでもちょっとはもやもやしてたし、もじゃもじゃさん達はもやもやしてたけど、全部がもやもやし始めたの。

 マシロと妖精の王様がもじゃもじゃさん達と戦ってたけど、もやもやを見てすぐに、僕達の所に戻ってきてくれます。


 あと、僕変なの見つけました。もじゃもじゃさん達の下に、変な模様があって、そこからダメダメな感じがします。


「マシロ、へんなもようでしゅ。」


 マシロも妖精の王様も僕が教えてあげたら、バッてその模様をみました。マシロにあの模様知ってるか聞いたらマシロ知らないって。それで今度はマシロが妖精の王様に同じこと聞いたら、妖精の王様も見たことないって言いました。

 妖精の王様はエシェットよりも長生きしてるんだって。だから知ってるかもって聞いたの。でも知らなったです。

ん? 妖精の王様、エシェットよりも長生き? でもエシェットの方がお兄さんに見えるよ。ん?


 ジョシュアお兄ちゃんが僕を抱きしめてくれて、その上からマシロがおしっぽで包んでくれます。

 あれ? 僕はお兄ちゃんの腕とお顔を見ました。お兄ちゃんお顔なんか変。汗いっぱいで、それからなんかう~ん、青?のお顔の色です。あと、腕がフルフル震えてるの。お兄ちゃんお怪我した腕、やっぱりとっても痛いのかな? 妖精の王様、もう1回さっきのやってくれないかな。そしたらお兄ちゃんのお怪我治るかも。


 僕がいろいろ考えてるうちに、どんどん黒いもやもやが集まってきます。


「マシロ分かるか? 他の場所にもあの魔法陣が現れたようだ。それにこの闇の力はその魔法陣から溢れてきている」


「ああ、エシェットの方にルトブルの方にも、シャーナ達の方にも、至る所に現れた」


「城の隅々に。この城ごとどうにかしようとしている感じだ」


「奴らの下に出ている魔法陣だけでも役割をなしているのだろうが、他の魔法陣をそれぞれ配置することで、さらに別の力を引き出そうとしている。魔法陣で魔法陣を作る感じだ」


「ああ、そしてその力は、私達の空間に集まってきている。狙いは私とおそらく」


 マシロと妖精の王様が小さなお声でお話してるから、僕何お話してるか分かんないけど、チラチラ妖精の王様が僕の方を見てきました。


「本当はアレにあまり近づかない方がいいのだが、主を守るためには早く奴らを倒さなければ」


「城の事、それから城の周りの事は気にするな。城の中心さえ無事ならば、すぐに妖精の国を復活させる事ができる。それに妖精達もあの部屋の近くに集まっているから、それ以外を破壊することはかまわない」


「よし、一気に行くぞ。ジョシュア、もう少しでいい、頑張って主を守ってくれ」


「大丈夫だ。俺はまだまだやれるぞ!」


 マシロと妖精の王様が、僕の方見てニッコリ笑って、すぐにもじゃもじゃさん達の方へ飛んでいきます。それでさっきよりも凄い魔法で攻撃を始めました。


 ばんばん風の魔法飛ばしたり、光りの魔法を飛ばしたり、いろいろな凄い攻撃をして、最初は見えてたもじゃもじゃさん達。途中で煙で見えなくなっちゃいます。それでもマシロと王様は攻撃を続けて。


 違うのはマシロ達の攻撃だけじゃありません。もじゃもじゃさん達も違います。

 さっきまでたくさんもじゃもじゃさん達も動いてたのに、今はマシロ達が攻撃しても、ぜんぜん動きませんでした。ずっと変な模様の上に立ってたの。


 偽物玄関ホールの中が半分、煙で見えなくなって、マシロ達が戻って来ましした。

僕やっつけたって聞こうとしたんだけど、戻って来たマシロ、もじゃもじゃさん達が居た方を見たまま唸ってます。それから妖精の王様も怖いお顔したまんまです。

 僕はお兄ちゃんのお洋服ぎゅって掴みました。


 お兄ちゃんがニッコリ笑って大丈夫って。僕のお帽子の中からシルフィー達もみんな大丈夫。次のマシロ達の攻撃の時は応援しようって。僕は頷いて、マシロ達とおんなじ方を見ます。


 ピュイちゃん大丈夫かな? いまみんなのお声は聞こえたけど、ピュイちゃんのお声聞こえなかったの。マシロ達が僕達を守ってくれて、お兄ちゃんも僕達を守ってくれて、うん! 僕はピュイちゃん達みんなをお守りするからね!

 僕はフンって力を入れます。


 もくもく煙がなくなって、もじゃもじゃさん達が見えました。赤い結界の中、2人がニヤッて笑ってます。とっても元気そう。

 マシロ達がまた攻撃を始めました。僕もみんなもおおきなお声で応援です。


 偽物玄関ホールには黒いもやもやがたくさん。マシロ達ちょっと見えにくいけど、それでちょっと怖いけど頑張って応援です。

 またもくもく煙と、黒いもやもやでいっぱいになっちゃいました。


「やはり、あの石のせいで攻撃が効いていないな。先程よりも強度が強くなっているように思える」


「早くしなければそろそろ不味いな。」


 戻って来たマシロ達がお話してるときでした。マシロ達がバッて横を向いて、それから僕達のことおしっぽで包みます。妖精の王様は僕達の前に立ちました。


 黒いもやもやの中、もじゃもじゃさん達の隣がとっても暗くなって、その中からアブラムが出てきたの。


「準備はととのったな」


「はいアブラム様。すぐにでも」


「城は我々の手の内に」


「エシェット達の気配はしている。倒されたわけではないが、エシェットめ、逃げられたのか!?」


 アブラムはエシェットが、別の偽物のお部屋で戦ってたんだって。

でもアブラム僕達の所に居るよ。今マシロ逃げられたって。エシェットとっても強いのに、逃げられちゃったの? もしかしてお怪我しちゃったから逃げられちゃったのかな。僕とっても心配です。


「マシロお前はユーキ達の側を離れるな。私が奴らの相手をする」


「1人では無理だ」


「だが、奴がここに来たという事は、何かが起きるという事だ。奴のここへ来た時の視線。お前も気づいただろう。奴は私とユーキしか見ていなかった。あれで完全に目的が私とユーキだと決定して良いだろう」


「…分かっている。しかしお主は」


「大丈夫。私はすぐにはやられない。感じるだろう、他にもここへ向って来ている者達が居る。もちろんエシェット達もだ。彼らがここへ来るまで、何とか耐えてみせる」


「…分かった」


 アブラムが僕の方を見て、妖精の王様が戦う格好をしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る