第390話お父さん、お母さん、みんなどこ!?

 壁の真ん中に集まった黒いもやもや。モリオンがいつも移動するとき魔法で出す、黒い丸とおんなじ位の大きさになりました。僕はマシロにギュって掴まったまま。絶対に離れないもんね。

マシロはさっきよりももっと唸ってます。エシェット達も怖いお顔のまま黒いもやもやを見てました。


「来るぞ!」


 エシェットがそう言ったら、黒いもやもやから、黒い塊がにゅうって出てきました。1つの塊だけじゃなくて、黒い塊が3つ。その塊ももやもやしてるんだよ。

 それでね、そのもやもやがもっともやもやし始めて、だんだんと人の形になってきました。それから、黒がちょっとだけ薄くなって、もやもやが消えてきて。


「やはりお前か」


 全部のもやもやがなくなったら、あの黒服さん達が立ってました。えっとぉ、この前王様じぃじの所に居て、僕やルトブル、みんなのこと虐めた悪い黒服さん。アブサン? 何て名前だったっけ?


 僕がそう言ったらディルが違うぞって。アブローだよって。そしたらシルフィーが違うって、アブチャラだよって言いました。なんかみんな違うような気がします。


「違うよアブラムだよ!」


 リュカが怒りながらそう言いました。そうそう、アブラムだった。


「主、それにお前達も静かにしていろ」


 マシロに怒られちゃいました。僕はもうお話しないように、マシロのもふもふのお毛々にお顔をつけます。

 そしたらすぐにアブラムが怒り始めました。


「煩いぞお前達。まったく、お前達のそういうところを見ると虫唾が走る!」


「それで、それを言いにここまでわざわざ来たのか」


 アブラムとお話するエシェット。


「そんなはずないだろう。ここまで来るのに3人程犠牲にしてきたからな。まぁ、あいつらは俺の駒だから問題ない。そんな事よりも、さぁ、始めよう。やっとお前達に復讐する日がやって来たのだ!!」


 お部屋の中でエシェット達とアブラム達が戦い始めました。狭いお部屋の中で戦うから、すぐに壁が壊れて、隣のお部屋が見えちゃって、でもすぐに隣のお部屋も壊れちゃいます。他の黒服さん達もルトブルやジュード達と戦ってます。


 エシェット達が戦ってくれてる間に、マシロがモリオンにお家に帰れるかやってみろって。モリオンが何回も黒い丸を出すけど、さっきみたいにすぐ消えちゃうの。


「何度でも良い、やってくれ!」


『うん!!』


 僕達はエシェット達応援したり、モリオン応援したり。


 僕達その時気づかなかったんだ。壁にまた黒いもやもやがちょっとだけ出た事。エシェットが戦いながらこっちに戻って来た時に、エシェットが気がつきました。


「ルトブル、ジュード達に任せて、そのもやもやを消せ!!」


 ルトブルがすぐに壁の所に来て、壁のもやもやに攻撃を始めました。でも水の魔法使っても土の魔法使っても、壁を完璧に壊しちゃっても、ぜんぜんもやもやが消えません。もやもやはその間にどんどん濃くなって、今は真っ黒になっちゃいました。


「ダメだ!! どうしても消せん!!」


「ルトブル変われ!! お前がこいつの相手をしろ!!」


 ルトブルがアブラムと戦い始めて、すぐにエシェットが壁の所に飛んできました。それでマシロに僕のこと包めって、マシロが僕のことおしっぽで包んでくれます。その後、お兄ちゃんやお父さんがもっとぎゅって、僕達の周りに集まって。


「攻撃するぞ!!」


 大きな音と、マシロやお父さん達にギュってしてもらってるのに、凄い風が吹いて、僕のお体よろよろしちゃいました。

 

 ルトブルやジュード達が戦ってる方からは、大きな音がずっとしてるけど、僕の周りはやっと静かになって、僕はお目々をそっと開きました。それでエシェットと壁の方を見ます。

 壁は全部なくなっちゃってて、でも黒いもやもやはそのままでした。エシェットの攻撃でももやもや消せなかったんだ。


「不味い!!」


 エシェットが下がって僕達の前に来て、結界をたくさん張ります。その時ルトブルの方から、笑い声が聞こえました。


「ハハハハハッ、ハハハハハハハハッ!! お前達はこれから俺の物になるんだ!!」


 アブラムが笑ってたの。それ聞いてモリオンが慌ててもっと何回も何回も黒い丸を出します。でも…。


 ヴワアァァァァァァッ!!


 みんなが黒いもやもやの方を見ました。もやもやの中からどんどん黒いのが溢れてきます。モリオンがアレは闇だけど闇じゃないって。どういうこと?

 黒いのはエシェットの結界にぶつかって、パリパリ、ミシミシって音がして、エシェットはそのたんびに結界を張って。


 また、ヴワアァァァァァァッ!! って大きな変な音がしました。


「チッ!! ユーキを守れ!!」


 エシェットが叫んだら僕周りが見えなくなっちゃいました。僕にみんなぎゅって集まってたでしょう。お父さんが1番上から乗っかったんだ。だから僕しゃがんじゃって何にも見えなくなりました。


「ぐあっ!!」


 すぐにお父さんのお声が聞こえて、上を見たら天井が見えました。お父さんどこ? 


「きゃあぁぁぁ!!」


 今度はお母さんのお声です。お母さんどこ!?


 お父さんお母さんのお声だけじゅありません。アンソニーお兄ちゃんのお声も、アンソニーお兄ちゃんのお声聞いたジョシュアお兄ちゃんがアンソニーお兄ちゃん呼ぶお声や、キミルやホプリン、シュプちゃんやぷにちゃん、みんなのお声が聞こえます。


 僕はちょっとお顔を上げました。僕の周りお父さんやお母さん、みんなでいっぱいだったのに、今は周りが良く見えます。それからエシェットが攻撃したときよりも強い風が吹いてて、マシロのお顔がムニってなってるの。


「わぁ!!」


「ディル!?」


「わあぁぁぁ!!」


『モリオンなの!!』


 僕のお肩に止まってたディルと、頭の上に居たモリオンが風で飛ばされちゃいました。僕の側には今、マシロとジョシュアお兄ちゃんと、リュカとシルフィー、ピュイちゃんしかいません。あれ? エシェットは? エシェットはどこ?


 その時、僕達の周りに黒いもやもやが集まり始めました。


「皆我から離れるな!」


「おとうしゃん、かあしゃん…ふえっ」


「大丈夫だユーキ、俺が側に居るぞ」


 お兄ちゃんがマシロのおしっぽと一緒に僕を抱きしめてくれます。


「ボクも居るからね! ボクがどんな時でも周りを明るくしてあげるよ」


 リュカがニコッて笑います。


「うん、僕もユーキ守る。ね、ピュイちゃん!」


『守るなの!!』


 シルフィーもピュイちゃんもニコッて笑ってくれて、


「主、主の側に必ずいるぞ。だから大丈夫だ」


 マシロが最後にニコッて笑いました。


 僕はマシロのおしっぽにお顔くっつけてうんって頷きます。大丈夫みんな僕のお側に居てくれる。


 黒いもやもやが僕達のことを包みました。周りが真っ暗になって何も見えません。でもマシロ達のお声はずっと聞こえてて、マシロが良いって言うまで絶対に動くなって。なんかね僕達どこかに運ばれてるんだって。あのヴワアァァァァァァッ!! って音もずっとしてるし。

 僕心配でマシロにお父さん達は? みんなは? って聞いたんだけど待てって言われました。


 少しして周りがちょっと明るくなってきた気がしました。僕間違ってるかな? ずっと真っ暗でマシロ達のお声しか聞こえなくて、怖くて明るくなってきたって思っちゃったにかな?


 考えてたら、近くでリュカのお声が聞こえました。


「ごめんね、マシロが良いって言うまで明るく出来なくて。でも、ボクが明るくしなくてもだんだんと明るくなってきてるみたい!」


 リュカも明るくなってきてるって。良かったぁ、僕間違えたなかったです。


「ジョシュア、おそらく城の玄関ホール辺りに出るはずだ。明るくなる瞬間気をつけろ」


「分かった」


 マシロがお兄ちゃんにそう言ったら、カシャって音が聞こえて。

 僕の間違えじゃなくて、周りがどんどん明るくなってきて、少しだけどマシロ達が見えるようになってきました。それから他にも壁が見えてきたの。なんか見た事ある壁です。


「出るぞ!!」


 マシロが言いました。

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