第127話王様に皆んなを紹介です。

 お母さんとお部屋に戻って、いつもの少しカッコいいお洋服に着替えました。


「かあしゃん、どしておかお、あかいでしゅか?とうしゃんもでしゅ。」


「…何でもないのよ。ちょっとお部屋が暑かっただけだから。さあ、お着替え終わったから、王様の待っていらっしゃるお部屋に戻りましょう。あまり待たせるのはいけない事よ。あとユーキちゃん。王様にお着替えありがとうございますって、ちゃんと言いましょうね。」


 お母さんは僕をマシロに乗せて、お部屋から急いで出ました。僕の大切なお友達。王様に紹介しなくちゃ。たくさんお友達だから、紹介するの大変。ディルとリュカは、言葉の分かるようになる粉、かけてもらおう。粉持ってるかな?


「ディル、リュカ、こな、もってるでしゅか?」


「粉。言葉が分かるやつ?」


「持ってるぞ。この前、たくさん持って来たんだ。だから今はいっぱいだぞ。」


「おうしゃまと、サルバドールしゃんに、こなかけてくだしゃい。みんなしょうかいしゅるでしゅ。」


 お部屋に戻って、もう1度挨拶です。


「ただいまでしゅう。おうしゃま、おようふくおきがえ、ありがとでしゅ。おようふく、ダメダメじゃないでしゅう。」


「ああ、そのようだの。良かった良かった。よしユーキ。戻って来てすぐですまんが、ユーキの友達を紹介してくれるかの。勿論全員じゃ。」


 僕は1人ずつ紹介します。う~ん。お友達になった順番に紹介すればいいかな?じゃあ、最初はマシロから。僕の1番最初のお友達。皆んな大切なお友達だけど、マシロは1番のお友達。

 僕は紹介する順番に、皆んなの隣に行って紹介したよ。マシロ紹介するだけで、たくさん時間かかっちゃった。でも。カッコいいところとか、僕のこといつも守ってくれることとか、全部お話出来たからいいや。

 ディルとリュカは、王様とサルバドールさんに粉かけて、自分たちで自己紹介してました。


「僕達の名前は、僕がリュカでこっちがディル。僕達が1番好きな事はユーキと遊ぶ事。あとは。」


「あとは、楽しい事だったら何でも好きだぞ。悪戯もその楽しい中に入るんだぞ。この頃は、くろにゃんに悪戯してるんだ。」


 僕がくろにゃん紹介したら、王様もサルバドールさんもちょっとだけ下向いてました。それでサルバドールさんがくろにゃんに近づいて、お座りしてるくろにゃんの事、優しくなでなでです。


「くろにゃん。くろにゃんか…。頑張れ。」


「………。」


 くろにゃん何も言いませんでした。言わなかったけど、その後アゴまで床につけて、伏せしちゃった。疲れちゃったのかな?あっ、ほんとのお名前言うの忘れちゃったけど、まあいっか。

 あとねえ、精霊さんのシルフィーとキミルがいて、驚いてました。2人も居るのかって。王様がじいじの方見ました。


「いろいろあっての。まあ、この話は後でじゃ。」


 それから、マシロとエシェットとくろにゃんに、おやつ食べるときの、くるくる回るやつ、やってもらいました。最初はマシロとエシェットだけくるくる回っておやつ食べてたけど、ボルフィスに着くまでにくろにゃんも、高~くジャンプして3回くるくるして、おやつ食べてくれるようになったんだ。王様、拍手してくれたよ。やったね!


「ユーキの友達は、皆んな面白い者ばかりじゃな。良い友達がいっぱいで、良かったのう。友達は大切にするんじゃぞ。」


「はいでしゅ!!」


 僕は王様にマシロ達の事褒めてもらえて、とってもニコニコです。

 あとね王様は、僕にいつも皆んなと、どんなことして遊んでるかとか、皆んなの好きな食べ物は何かとか、いろいろ聞いてきたよ。僕ね全部ちゃんと答えられました。

 使用人さんが飲み物運んできてくれて、僕はそれ飲んでから、お母さんのお膝から降りて、マシロベッドに座りました。


「ちゃんと質問に答えてくれたからの。皆んなと遊んでいるといい。」


 僕はディル達と今日見た、鍋と鍋の蓋の話とか、後は、雪で何して遊ぼうかとか、お話してました。


(マシロ視点)

 スウスウという規則正しい呼吸が聞こえてきた。寄っかかって座っている主を見ると、いつの間にか眠っていた。夜も遅いからな。それに気づいたオリビアが王に声をかけて立ち上がり、主のことを抱き上げた。


「ふむ。もう下がるといい。後は大人達の話し合いだからの。確かユーキはお菓子が好きなのであったな。よし、明日はお茶会を開くとしよう。ゆっくりベッドで寝かせてやりなさい。」


 主の後について行こうとすると、王が我らを止めてきた。


「すまんが、古龍様とマシロ殿は残ってもらっていいかのう。話合いにはそなた達が必要じゃ。」


「………分かった。」


 仕方ない。どうも大事な話のようだからな。くろにゃんに主の事を頼み、我とエシェットは部屋に残った。主が出て行くと、すぐに王が我らに頭を下げてきた。どうもこの間の盗賊の話を全て知っているらしかった。


「古龍様、世界を消さないでいただいた事、感謝しています。そしてルオン、いや、死黒の鷹狩りを殲滅して頂いた事に関しても、お礼を申し上げます。」


 エシェットは主のためにやっただけだと、簡単に話を終わらせた。どうも早くこの部屋から出たいらしい。シャーナが居るからだろう。まったく。自分から声をかけた相手なはずなのに、何故そんなに嫌がるのか。


「あの国王様、エシェットが古龍と聞いても驚かないのは、父から話を聞いていたからですか?」


 ウイリアムが王にそう聞くと、王は笑った。


「それもあるが、もう1つ理由があるんじゃ。サルバドール。」


 サルバドールがシャーナに、変身を解くように言うと、シャーナはすぐに小さいドラゴンの姿へと戻った。ウイリアムが驚いている。ルドガーはニヤニヤしていたが。


「これが理由じゃよ。そして我らの秘密でもある。シャーナはサルバドールの契約ドラゴンじゃ。」


 最初は驚いていたウイリアムだったが、エシェットに、シャーナと知り合いだったのか聞いた。なかなか答えないエシェットに、仕方なく我が代わりに答える事にした。

 そして我の話を聞き終わったウイリアム達は、全員が呆れ返っていた。誘うのに失敗して怪我までさせられたと言われれば、そういう反応にもなる。


「何をやっているんだ、まったく。」


「我もいろいろあるんだ。今は誘おうとは、思っていないから安心しろ。それに我はもう謝ったぞ。」


「はあ、申し訳ないサルバドール殿下。それからシャーナと呼んで良いかな?シャーナもすまなかった。」


「いや、その話はユーキ君との契約前の話だし、ドラゴン同士の問題だ。」


 とりあえずエシェットとシャーナの面倒臭い揉め事の話は終わり、次は我々がユーキをどう思っているかの話になった。

 おそらく、この間エシェットがキレた事が、この王達にとって、今1番の問題なのだろう。国が、いや世界がなくなるかも知れない問題だからな。


「古龍様。」


「エシェットでいい。」


「ありがとうございます。エシェット、そなた達にとって、ユーキはどのような存在だ?そして、今後どうするつもりなのだ。」


「そんなの決まっている。我らにとってユーキは特別な存在。そして他の存在にとっても。…お前達には分からんだろうがな。ユーキ以上の存在はいない。もし何かあれば、我々は全力でユーキに害なすものを消し去るだけ。」


「分からないとは?」


「…お前達にユーキのあの、なでなでの気持ちよさは、分からんと言ったんだ。」


「………そうか。」


 余計な事を言うんじゃない。まったく。それは我々だけが知っていればいい事だ。エシェットが王に睨みをきかせている。王は何か言いたい事はあるようだったが、これ以上我々が、何も言わない事が分かったのだろう。それ以上聞いてくる事はなかった。ふと視線に気づきそちらを見ると、シャーナがこちらを見て何か言いたそうにしていた。後で聞いてみるか。


 おもむろに王が話し始めた。王が言うには、王族はユーキを守ろうとしているらしい。


「良いのですか?」


 ウイリアムが立ち上がった。何だ?


「ああ。ここまで深く繋がりを持っているなら、離れる事はほぼないだろう。サルバドールとシャーナのように。それにユーキは主として、ちゃんと指示できているようだしのう。何でも先ほどサッと聞いただけだが、シャーナに謝るように言ったらしい。エシェットはそれにちゃんと従った。」


 主はウイリアム達の言う事をよく聞いている。ちゃんとダメなものはダメと我々に言ってくるからな。今回は女の子と思っていたドラゴンが、ちょっとおばさんだったが、ちゃんと女の人には優しくという、ウイリアム達の言葉を守って、エシェットの事を怒っていた。


「ちょっと、何か失礼な事思ってない?」


「いや、何も。それで、どういう事なんだ。主を守るとは。」


 王の話によると、この前のルオン達や、あの黒服達のような輩から、攻撃や防御など、物理的なもので主を守るのが我々の仕事だと。それと違い王族は、主を言葉巧みにそそのかし、自分達の利益のために引き込もうとしたり、主の力に目が眩んで、自分の思うように従わせようとする権力者から守るのが役目らしい。

 ずっと前にウイリアムが言っていた事と同じか。権力で相手を黙らせる。そうか。王族は主を権力で守ろうとしているのか。まあ我らの戦力と王族の権力があれば、主はもっと安全になる。良い事だ。


「これからもきっと、ユーキを引き込もうと、いろいろな人間が寄って来るはずじゃ。ワシはユーキが気に入った。ほんの少ししか話しておらんがな。これでも一応国の頂点に立つ男だからの。少し話しただけでも、その人物がどういう人間か分かる。だからワシはユーキの保護をする事に決めたんじゃ。」


 ふん。流石に見る目はあるようだ。王の言葉にウイリアム達が頭を下げた。

 話がちょうど良い具合に途切れた。我とエシェット、そしてウイリアムとサルバドールとシャーナが部屋から出た。残り2人はこれからまだ話すらしい。

 部屋に戻る途中、後ろを歩いていた我らにシャーナがそっと、前を歩くウイリアム達に気づかれないように話しかけてきた。


「良い主を見つけたわね。まあ、私のサルバドールよりは劣るかもしれないけど。」


「何を言う。ユーキにかなう者など居るはずがない。」


「ふん。じゃあ今度、どちらの主が凄いか競ってみる?」


「良いだろう!」


 2人で勝手に決めてしまった。まあ我も主の事となれば黙ってはいないが。最後にシャーナがさらに静かに言ってきた。


「ちゃんと導いてやりなさいよ。」


 2人で頷いた。当たり前だ。我らの大切な主だぞ。可愛い可愛い主だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る