第33話報告、そして闇の中へ (前半ウイリアム視点。後半ユーキ視点。)

<ウイリアム視点>

 ユーキがリクと遊んだ次の日の朝、私はいつものメンバーを屋敷に呼んだ。

「よし、じゃあ、報告を聞こう。」

「はい。」

 朝、カージナルへ戻ってきたマシューから報告を聞く。

「じゃあ、事件が起こっているのは、間違いないんだな。」

「そうだ。それは間違いない。ラグナスでやられたのは大体12体程度、契約主が死んで見つかったのはその内の5組。他は行方不明だそうだ。」

「そうか…。」

 私はある情報を入手し、マシューにここから1番近い、小さな街ラグナスに調べに行ってもらっていた。

 ある情報をと言うのは、ここ最近色々な街で、契約魔獣が消えたり、その契約主が行方不明になったり殺されて見つかっているというものだ。

 そして、その消えた魔獣が問題だった。珍しい魔獣や力の強い魔獣が消えたのだ。問題視した各街の冒険者ギルドや貴族が調べを始めたらしい。

 しかしカージナルでは、そんな話は一切聞いていない。魔獣と契約している者達は大体が、冒険者ギルドか商業ギルドにはいっている。まあ、ユーキみたいな者もいるが、だが。

 マシューが調べてきた人数が消えたとなれば、誰かしらギルドに所属している者がいるはずだ。もし異変があれば、ギルドマスターから私の所に連絡が入る。私の所ではなくても、オリビアには連絡がくる。

「それで、目撃者は。」

「それがギルドが目撃者に話を聞いたんだが、襲われるのは昼夜関係なくて、突然目の前に闇が現れて、契約主と魔獣を包み込んで消えたらしい。そして数日後、死体で発見された。全員じゃないけどな。」

「闇か…。それ以外の方法での目撃者はいないのか。」

「俺は、ラグナスにしかいってないから、他は分からない。が、ラグナスの場合は全て闇魔法だ。」

 部屋の中が静かになった。


 闇魔法。魔力石を使い、闇の魔法を繰り出す。しかし闇魔法を使いこなせる者は少ない。例えば私は、いろいろな魔力石を使えるが、1番相性の良い者は水の魔力石だ。こういう風に、人はそれぞれ得意の属性がある。が、闇の魔力石は使えない。闇の魔力石を使える者は極端に少ない。その理由は分かっていないが、本当に少ないのだ。

「闇ギルドが関係しているのでしょうか?」

「闇の魔力石を使ったからと言って、まだ決め付けて良い訳ではない。」

 闇ギルド。それはあらゆる犯罪に手を染め、自分達の利益の為なら、それが子供だろうと誰だろうと殺して、全てを手に入れる。それが闇ギルド。

 何故だか分からないが、闇ギルドに所属する奴らには闇属性の奴が多く、しかもその殆んどが強力な闇の力を使う。

 「しかし、どんな奴らがこんな事してるか知らないが、この街だけが無事でいられるとは思わないだろう。」

「勿論だ。冒険者ギルドとも協力して、見回りを強化する。それから、珍しい魔獣や強い魔獣と契約している者達に警戒するように通達だな。どんな闇の力を使っているか分からないからな、大勢でいても関係ないかも知れないが、なるべく1人にならないように伝えよう。」

「強力な力に対抗するには、強力な力が使えなければいけませんし、団長くらい強ければ、返り討ちを警戒して、相手も躊躇すると思うのですが。」

「今の所、全員が連れ去られているからな。もしかすると鑑定の石を持ってる奴が居るのかも知れないぜ。自分よりも弱いのを確認してから襲っているとかな。」

 鑑定の石とは、相手にその石を向けることで、その相手の能力や力、どんな魔獣を従えているかなど、それを読み込み、後で紙にそれ写し出すことの出来る石のことだ。とても珍しい石で、私は今まで2回程しかその石を見たことがない。


 そしてそのリアムの言葉にハッとする。

「まずいな、鑑定の石を使われたら、ユーキが危ない!」

 私は慌てて、庭に居るはずのユーキの元へ向かった。

 石を使われて私が契約主じゃないと分かれば、ユーキなどすぐに襲われてしまう。あれだけ街を歩いたんだ。もうバレている可能性がある。


<ユーキ視点>

 僕は朝ご飯を食べてから、お母さんと一緒にお庭に居ました。朝にしか咲かないお花があって、今の季節しか見れないんだって。

 可愛い青色のお花だったよ。名前は「空の花」って言うんだって。

 アメリアがご飯の後のお茶を運んできてくれて、それを飲んでる時でした。お父さん達が慌てて僕達の所に走って来ました。

「あなたどうしたの?そんなに慌てて。」

「すまないがユーキ、今すぐ家の中に入りなさい。少しの間外はダメだ。それとマシロ話がある。魔獣契約の事だ。が、とりあえず家に入るぞ。」

 何だか分からないけど、すぐお家に入った方が良いみたい。こんなに慌ててるお父さん初めて見たよ。お母さんも最初以外何も聞かずに立ち上がりました。

 皆んなでお家に入るのに、歩き出した時でした。僕の周りに、何かよく分からない黒いモヤモヤが出てきました。真っ黒いモヤモヤです。

「主!」

 マシロの声に皆んなが僕を見ました。

「ユーキ、そこから離れろ!私の方へ来い!」

 僕に駆け寄ろうとしてるお父さんに、僕もそっちへ行こうとしたけど何でか動けません。そしたらマシロとディルとリュカ、シルフィーの周りにも、黒いモヤモヤが出てきて。

「ユーキちゃん!ダメだわ、近付けない、どうして!」

「ダメだ、もう闇に囚われた!我々は干渉できん!」

 僕は怖くなって、マシロにしがみ付きます。

「マシロ…。」

「主、しっかり我に捕まっていろ。これからここではない何処かへ行くと思うが、我が必ずそばにいて、主を守る。お前達もいいな。絶対に離れるなよ。」

「分かってるよ。離れるもんか。それにオレだってユーキのそばに居て、ユーキのこと守るぞ!」

「大切な友達だもんね!」

「うん、僕ユーキ守る。」

 黒いモヤモヤで、もうほとんど何も見えません。全部見えなくなる時、お父さんの声がしました。

「ユーキ絶対迎えに行く!絶対だ!約束だ!」

 その声が聞こえてすぐ、全部が真っ黒に。その真っ黒がなくなったら、僕は見たことない部屋に居ました。そして…。


「ようこそ。ガキ、今日からここがお前の家だ。」

 知らない男の人と女の人が何人か立ってました。

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