第19話夜の出会い 1

 僕は草陰に隠れて、様子を伺う。

 少し離れた所に人間が何人か見える。大きい人間、小さい人間。皆んな楽しそうに笑ってる。僕を追いかけて来た人間となんか違う。トゲトゲした赤い光が出てない。今いる大きい人間は薄緑の綺麗な光がでてる。この光は、ママが安全な色だって言ってた。トゲトゲ赤はダメだって。

 でも…。小さい人間は違った。オレンジや黄色や白、いろんな色が混ざって、キラキラ輝いてた。それにぽかぽか暖かい。何か元気が出てくるし、安心する光。

 側に行っても大丈夫かなぁ。ちょっと怖いなあ。もしかしたらあの光は偽物で、僕を捕まえる罠かも。もう少し様子を見よう。もう少しだけ…。

 そうだ、あの小さい人間が1人になるまで待とう。1人になってから会いに行って、お話してみよう。もし攻撃されても、あの小さい人間だったら逃げられるはず。そうしよう。


「ユーキちゃん、美味しい?」

「はいでしゅ、とってもおいしいでしゅ!」

「そう、良かったわ。でも、あんまり食べ過ぎちゃダメよ。御夕食、食べられなくなっちゃうから。」

「はいでしゅ!」

 今日僕は、ずっとお庭で遊んでます。お昼もお庭で食べたんだ。今は、おやつの時間です。今日のおやつは、お母さんが作ってくれたプリンです。多分プリン。味はプリンだったから。色が違うけど。色はねえ…青だった!ちょっとびっくり!でも、とっても美味しかったよ。

 おやつが終わって、お父さんが迎えに来てくれて、休憩のお部屋へ移動です。僕はお母さんがくれた、お砂遊びの道具を片付けます。

「さあ、お家の中に入りましょう。」

「はいでしゅ。」

 お父さんとお母さんの後について行こうとしたら、マシロが外の壁の草が生えてる場所をじっと見てた。

「マシロ、どうしたでしゅか?」

「…、いや何でもない。」

 僕達が止まってたら、お母さんに呼ばれました。それでお父さんがこっちに戻って来て、僕の好きな、肩車してくれました。きゃっきゃと喜ぶ僕。そのまま休憩のお部屋まで肩車してもらいました。


 そして何と、本当に僕のお部屋、1日で直っちゃった。

 夜のご飯を食べて、皆んなに今日のお庭のお話をしてたら、アシェルが、お部屋が直ったって、呼びに来てくれたんだ。すごいねえ。あれだけボロボロだったのに。

 お父さんとお母さんが僕のお部屋について来てくれたよ。お部屋は…、ホントに直った!!

 今日の朝、僕が昨日の夜寂しかったって言ったから、お父さんもお母さんも僕を心配してくれて、2人のお部屋に呼んでくれました。

「本当に大丈夫?一緒に私達と眠ってもいいのよ。」

「そうだぞ、寂しい時は寂しいと、言っていいんだからな。」

「だいじょぶでしゅ。もうへいきでしゅ。とうしゃんも、かあしゃんも、みんなみんな、ちかくにいてくれましゅ。だからだいじょぶでしゅ。」

「そうか。」

「何かあったらすぐ呼んでね。」

 変わりばんこに頭を撫でてくれて、2人がお部屋を出て行きました。

 

 お家の中が静かになりました。たまに足音はするけど、後は、外の鳥の声?が、聞こえるだけ。多分皆んな寝ちゃったんだね。僕はまだ眠くなくて、ベットから下りて、マシロをもふもふなでなでして遊んでました。

「!」

 突然マシロが窓の方を見て、立ち上がりました。

「マシロ?どうしたでしゅか?」

「外に何かいる。夕方の気配はコイツのか?」

「おそと?」

「誰だ!」

 マシロが僕を守るようにしっぽで包んで、窓の方を威嚇しました。窓の外は静かなまま。何が外にいるんだろう。

 マシロが早く出てこいって言って、もっと唸ったら、窓の外に、小さい塊が見えました。暗くてよく分からない。でも、何か怖くない気がする。僕はマシロのしっぽから抜け出して、そっと窓の方に。勝手に動くなって言われたけど、僕は窓に近付きました。そして。

「だいじょぶ、きっとこわくないでしゅ。まどあけるでしゅよ。」

「おい!」

 窓を開けて、外を見ます。窓の外には、1匹のワンちゃがいました。あれ、ワンちゃんじゃない?お月様の光だけだから良く分からないけど、体とかは前の世界にいた、プードルっていう、ワンちゃんに似てるけど、色はピンクで、背中には白い羽がありました。何か、ちょっとフラフラ飛んでるみたい。

「どうしたでしゅか?おへや、はいりましゅか?」

 そう言うと、そのワンちゃん?が、羽をパタパタさせながら、お部屋の中に入ってきたました。そしてベットの上にお座りして、でもすぐお座り止めて、丸くなっちゃった。

「お前は…。」

「マシロしってるでしゅか?」

「おそらく奴だと思うが、そやつだいぶ弱っておるぞ。どこか怪我でもしているのではないか。」

「おけが!たいへんでしゅ、どこおけがしたでしゅか!くらいからよく分からないでしゅ。」

 マシロは魔力石で、明かりを点ければ良いだろうって言ったけど、お父さんとお約束したもんね。魔力使ったらいけません。ダメダメです。

「それは分かるが、ではどうする?これでは、様子を見ることも出来んぞ。」

『オレたちが、手伝ってやるよ。』

 突然の声に体がビクッっとしました。周りを見ても誰もいません。

「だれでしゅか?どこいましゅか?」

 開けっぱなしの窓から、小さな光が2つ、お部屋の中に入ってきました。光は僕の周りをぐるぐる回って、よく見るとその光の中に人の姿がみえました。

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