第7話魔法石

 朝、目が覚めると僕は、マシロのふわふわな毛皮に包まれて寝てたよ。

「起きたか。」

「うにゅ…、おわよ…。」

 目を擦って周りを見ると、昨日ご飯を食べた所で、皆んながもうご飯を食べてるのが見えました。

 僕は立ち上がって、歩き出そうとしたんだけど、起きたばっかりで、上手く歩けなくて転びそうになっちゃった。そんな僕の洋服の襟首に、マシロはうまく噛みついて、僕のことを持ち上げて歩き出したよ。ぶらんぶらんと揺れながら、皆んなの所へ連れて行ってくれました。

「おお、起きたか。おはよう。」

「おわよ、ごじゃます…、………。」

「はは、半分寝てるな。ほら起きろ。ご飯食べそびれるぞ。と、その前に顔と手を洗ってと。」


 団長さんは、マシロから僕を受け取ると、木で出来たバケツの方へ移動して、その前に僕を下ろしました。

 そして、ビックリする事が起きました。

 ボケッとしている僕の目の前で、団長さんがバケツに手を近づけた瞬間、バケツの中に水が溢れてきたんだ。

 僕は思わず叫んじゃった。

「おみじゅ!!」

「ん?どうした?」

「おみじゅ!おみじゅが、でてきたでしゅ!」

 お水はどんどん溜まって、すぐにバケツは、お水でいっぱいになりました。

「ああ、魔力石を知らないのか。そうか、ユーキはまだ小さいからな。ほらこれを見てみろ。」

 団長さんが手を開くと、そこには透明で少し青色の、小さな石がありました。ちょっとだけ光ってるみたい。ぽわあああって。

「いし?」

「そうだ。この石のおかげで水が出せたんだ。おい、ノア!」

「何ですか団長?」

 お鍋をかき混ぜてたノアさんが、すぐこっちに歩いてきました。

「悪いが、火を見せてやってくれ。」

「あー、はいはい。ユーキ君いいですか。」

 ノアさんの手には、今度は赤い透明な石が乗っかってました。団長さんが持ってた石みたいに、ぽわあって光りました。そして…。

「ふわわ!しゅごいです!」

 ノアさんの手の平、ちょっと浮いた所に、火の玉みたいなものが現れました。凄い!僕が喜んで見てたら、団長さんが説明してくれました。

 この石の名前は魔力石って言って、お水を出したり、火を出したり、色々な事が出来るんだって。石が大きかったり、色が濃い方が良い石です。でも、そういう石は、あんまりないんだって。

 石がなくても、皆んな生活出来るけど、この石があった方が楽だから、皆んな持って歩いてるんだって。

 皆んな使えるんだ。僕も出来るかな?やってみたい!僕は団長さんにお願いしてみました。

 「ぼくも、ぼくもやりたいでしゅ!」

「うーん、ちょっとそれは無理かな。」

 え、ダメなの…。くすん…。皆んな出来るのに、僕だけダメなの?

「だめでしゅか…?」

「ああ、そんな顔するな。ダメって事じゃないんだ。説明して分かるか?ユーキはまだ小さいだろう。この魔力石を使うには、自分の魔力を使うんだ。」

「じぶんの、まりょく?」


 そう言えばさっきから、魔力って言葉が出てくるけど、魔力って何のこと?

「そう、魔力。自分の体の中にある力のことだ。その力をこの石に流して、火とか水とか出すんだ。この力を使えるのは、もうちょっと大きくなってからって、決まってるんだ。だからまだユーキは使えないんだ。」

「…?」

 団長さんが魔力のこと、教えてくれたけど、よく分かりません。小さいとダメなの分かったけど、力を流すって何だろう?

「その顔は、分かってないな。」

「ユーキ君、ほらこれ見てください。」

 いつのまにか、近付いて来てた副隊長さんが、自分で持っていた袋の中から、たくさんの石を出して、僕に見せてくれました。団長さんが言ってた通り、いろんな大きさで、いろんな色の石です。

「まだユーキ君は小さいでしょう。小さい子は、魔力を使えないんですよ。もう少し大きくなったら、こんなに沢山の石を使えるようになります。だからそんな寂しそうな顔しないで、今はちょっと我慢ですよ。」

「…。ぼく、ちいちゃい、まだちゅかえない?がまん?」

「そうだな。」

 そう団長さんは言って、副団長さんは頷きました。そうか、小さ過ぎるのか…。残念だな、僕もやってみたかったんだけど、もう少し大きくなって、魔力が使えるようになるまで我慢だ。

「うん、ぼくがまんしましゅ!」

「よし、偉いぞ!」

 団長さんが頭を撫でてくれました。僕は頭を撫でてもらえてニコニコです。褒めてもらえた、嬉しい、これからも言うこと聞いたら、頭撫でてくれるかな?そうだったら嬉しいな。


「ユーキ君良い子ですね。特別です。この石触ってみますか?」

「いいでしゅか!」

「ええ、触るでけでは、何も起きませんから。」

 副団長さんは、僕にキラキラの粉が入っている石を、持たせてくれました。

 おお、これが魔力石。ツルツルしてて、冷たい石です。大きくなったら使えるようになるんだ。早く大きくなりたいなあ。

 これはどんな魔力石なのかな?青が水で赤が火で、うーん、これはキラキラだから光かな?

 そんなことを思っていると、急に体の中がポカポカしてきました。あれ?何だろう、とっても温かい。

 不思議に思ってたら、その温かいものが、石を持つ手の方へ集まり始めて…。そして…。


「おい、おい、おい…、まさか…。」

「これは…!」

 僕の手の中で、キラキラ魔石が、どんどん強く光始めました。

 それは、暗かった森の奥の方まで、明るくしちゃうくらいの光です。その光に、皆んなの動きがほんの少し止まってたよ。

 あとね体から、なんかが出て行くみたいにな感じがしました。僕が魔力石と光を、ボケっと見てたら、

「主!魔力石から手を離せ!」

 マシロの声でハッ!とします。え?え?え?何?何が起こってるの?僕どうしたら良いの?僕が魔力石を持ったまま慌ててたら、団長さんが、

「ユーキ、ゆっくりでいいから、私の手に石をのっけろ。慌てるな。」

 って言って、自分の手を僕に出してきました。僕はそっと、団長さんの手の上に魔力石をのっけます。

「良い子だ。」

 団長さんの手の中で、魔力石は元のキラキラ石に戻りました。

 「主、大丈夫か?」

 マシロがすりすり、顔を擦り付けてきたよ。

「だいじょぶれしゅ。げんきれしゅよ。だんちょうしゃん、ごめんなしゃい。」

 僕は団長さんに、ごめんなさいしました。

 我慢て約束したのに、魔力石使っちゃった。やっぱり怒ってるよね、ちゃんと謝らなくちゃ。あれ?そう言えば、小さいと使えないって、さっき言ってたよね。僕が持った石、光ったよ。何でだろう。

「何でごめんなさいだ?」

 団長さんは不思議な顔をして、僕を見てました。

「やくしょく、おおきくなるまで、がまんでしゅ。」

「ああ、そう言うことか。気にするな。」

「…おこってないでしゅか?」

 僕はチラッと、団長さんを見て、すぐ下を見ました。団長さんが僕を抱き上げて、僕の目と自分の目を合わせます。

「怒るもんか。わざとじゃないだろ。そんな心配そうな顔するな。ほら、ユーキは笑顔が可愛いんだ。笑え笑え。それで、手と顔を洗ってご飯を食べろ。そうしたらカージナルの街へ出発だ!」

 団長さんが怒ってないって分かって、僕は安心です。良かった。

 手と顔を洗って、朝ごはんを食べて、いよいよカージナルの街へ出発です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る