優しい家族と、たくさんのもふもふに囲まれて。〜異世界で幸せに暮らします〜

ありぽん

第1話プロローグ

「あんたのせいで…、あんたのせいで!」

 僕の記憶はここで途切れました。


 次に気がついたのは、真っ白いお部屋の中。

「ここはどこ…?」

 真っ白いお部屋の中、僕はふわふわ宙に浮かんでました。おお、凄いね。僕飛んでる。このお部屋どうなってるんだろう。きょろきょろいろいろ見渡したけど、何にもないお部屋です。その時突然声が聞こえました。

「僕が、ここに呼んだんだよ。ここは、僕が君のために用意した部屋です。」

 ビクってしたよ。だって突然なんだもん。しかも声だけで、人の姿はありません。

「誰…?僕はどうしてここにいるの?」

「僕は君たちの世界でいう神様だよ。それでね僕、君に謝らなくちゃ。ごめんね、せっかく君の魂は、光り輝くことのできる魂だったのに、僕の加護がちゃんと働かなくてこんな事に…。」

 神様?神様って確か、みんなを見守ってくれる人だって、絵本に書いてあった。その神様が、姿は見えないけど、今ここに居て、僕をここに呼んだって言ってます。

 それでね、僕なんとなく気付いたんだ。どうしてか分からないけど。でも、一応神様って言ってる人に聞いてみたんだ。もしかしたらって思って。

「もう、お母さんの所に、戻れない?」

「…うん。」

 やっぱりそうなんだ。もうお母さんには会えない。あんまり一緒には居られなかったけど、それでも僕の好きなお母さん。

「僕ね、お母さんの言いつけ、頑張って守ったんだ。でもお母さん、笑ってくれなくて、いつも疲れた顔してて、僕、お母さんに何にもしてあげられなかった…。」

「そんなことはないよ。君は小さいながら、やれることはやったんだ。胸を張っていいんだよ。それに、今まで頑張ってきた君に、僕からプレゼントがあるんだ。」

「プレゼント?」

「そうだよ。受け取って貰えると、嬉しいんだけどな。」

 僕はそう言われて、少し考えました。

 今まで1度もプレゼント貰ったことなかった。お母さん、僕は役に立たないからプレゼントなんてないって。ずっとそうだったんだ。それにね、勝手にプレゼント貰うのもダメだって。もうお母さんには会えないけど、約束破ってプレゼント貰っても大丈夫なのかな?

 そう思ったけど、心の中では少しだけど、ワクワクな気持ちがあって…。僕、プレゼントもらってみたいな…。

「神様、僕、プレゼントもらっても、お母さん怒らないかな?」

「もちろん!なんてった神様からの贈り物だからね!」

 お母さん怒らない?本当かな?でも神様が言うなら、本当なんだよね。だったら。

「ん~…。僕、プレゼント貰ってみたい!」

 僕の言葉を待ってたみたい。神様の元気の良い声が聞こえました。

「よし!決まり!じゃあ、説明するから、よく聞いてね。今まで頑張った君は、これから君が幸せになれる世界へ行くよ。今までと別の世界。そこで新しい生活を始めるんだ。もちろん君がとっても楽しく過ごせる世界だから安心してね。」

「別の世界?」

 どんな所に行くのかな?今まで僕が住んでた所みたいな所かな?それとも全然違う場所なのかな。神様楽しいって言ってるし、僕、楽しいならどんな所でもいいや。

「そう。その世界で、君がたくさん笑顔で居られるように、今度こそ必ず、僕の加護が君を守るから。」

「加護?」

「まだ君は気にしなくていいよ。それよりもまずは、別の世界を楽しんで。ああ、そうだ。新しい生活を始める君に、もう1つプレゼント。君はワンちゃんとネコちゃん、どっちが好きかな?」


 プレゼント、1つじゃなかった。2つも貰っちゃった。ワンちゃんかネコちゃん、僕にくれるって。別の世界で一緒に遊べるよって言われました。初めてのプレゼントが、2つも貰えるなんて、とっても嬉しい!それに僕、動物好きなんだ。いつも動物の本読んでたんだよ。

 うんとね。僕はワンちゃんがいいかな。近くのお家で飼ってたワンちゃん、僕大好きだったの。

「じゃあ、君にワンちゃんプレゼントだ。向こうの世界でワンちゃん待ってるからね。起きたらすぐ会えるよ。じゃあ、これから君を別の世界に送るからね。そうそう、大きくなったら、教会に遊びに来て。」

 大きくなったら?すぐじゃなくて良いのかな?

「うん。分かった!」

「いい返事だ!じゃあこれから君が生活する別の世界へ、出発!」

 神様の掛け声とともに、僕の記憶は途切れました。そして、記憶が途切れる瞬間、僕は神様の声を聞いたよ。

「あ!間違えた!」


 ………え?




「ああ~、また失敗しちゃったよ。まあ、近くだし大丈夫でしょう。」

「何が大丈夫だって?」

「げっ、ルーカス見てたのか。」

 いつのまにか、神様仲間のルーカスが、僕の後ろに立ってた。

「心配で来てみれば、お前は何をやっているんだ!彼らがあの子を発見出来なかったら、どうするつもりだ!」

 相変わらずの心配性だな。だいたいルーカスはいつも真面目すぎるよ。いつも僕のこと確認しに来ては、注意ばっかりしてくる。

「大丈夫だよ。彼もつけたしね。」

「はあ~、このことは、皆んなにも伝えるからな。」

「そんな~!」

「うるさい!全くお前と来たら…。」

 ブツブツ文句を言いながら、ルーカスは消えていった。ワザとやった訳じゃないのに、またみんなから文句言われるよ、面倒くさい。

 まあ、一応彼は新しい世界へ送ったし、取り敢えずは、第1段階クリアかな。僕は、彼がこれから送るだろう、新しい生活を思い浮かべて、ニヤニヤ笑っちゃった。


「高橋勇輝くん。別の世界で、今度こそ幸せに。」

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