第7話

同じベンチで腰を落とし俺は

コーラーのプルタブを開けて飲む。緊張しているのか、味を楽しむ余裕がない。

そして沈黙が長く町の喧騒をBGMに、ただ缶を口に運ぶこと数分。


「・・・ど、どうしたアグニよ。

何か気配を感じたのか?」


缶コーヒーを両手で持つシリウスブラックさんが心配げな表情で

首を傾けて顔を覗く。

その、仕草しぐさで育ちの良さが表れている。


「い、いえ気配は何も・・・えーと、その・・・・・」


「どうしたのだアグニ、遠慮せずわたしに言ってみよ」


正直に答えるのが、恥ずかしくて

逡巡しゅんじゅんしていた事に気づく。心配させたのだから素直に答えるべきだ。


「その、女の子と話すのが慣れていなくて・・・恥ずかしながら緊張しています」


我ながら、情けなく恥ずかしさに

ここから灰になって風に飛ばされたい。うつむいた俺は、

なかなか返事が無いことに怪訝に思い勇気をしぼりチラッと見る。


「・・・・・」


(あ、あれ?シリウスブラックさんも恥ずかしがっている!?)


唯我独尊ゆうがどくそんそうなイメージを持った彼女が、意外な姿に俺は戸惑っている。

彼女も羞恥になっていることに勝手に共感した。少し緊張感が抜けた。


「まだ名前を言っていなかったよね。コホン、改めて・・・

俺は大友義鑑おおともよしあきと言います」


彼女は赤い顔を上げると、あまりにも可愛い反応でドキッとした。


「あ、あの素敵な名前ですね。

次はわたしの番ですね・・・えーと、あの・・・

わたしは芦名詩端あしなうたはと申します!」


芦名詩端さん・・・優雅な名前で

彼女にピッタリな名前だと思った。けど品行方正そうな名前よりも俺には気になる事があった。


「あの?口調が変わったような

気がするのですけど」


「えっ・・・あっ!

ククッ、気のせいであろう」


「ですよね。まるで乙女らしい

喋りで驚きましたよ」


芦名詩端ことシリウスブラックが

あせったように手を激しく動かしたのも、何か前世の名残りようなものだろう。

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