金魚はあぶくの夢を見ない

よもぎパン

幕開き



 乙原おとはら、という遊郭がございます。

 知る人ぞ知る小さな街で、その所在すら定かではありません。


 しかし、確かに乙原は存在するのです。


 真っ赤な格子や、差し出される吸いつけ煙草の粋なこと。


 ただ、その場に色を買いに来るのは皆揃って女子であり、買われる女郎は男なのでございます。


 凡そ六つで親に売られ、数えの二十七までは街から一歩も出ることの許されない、哀れな乙原おとはら女郎じょろうたち。

 そしてそれは、そんな女郎たちを世話する我々、女喜助おんなきすけとて、何ひとつ変わりはいたしません。



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