第6話 拉致
「だから妄想はやめてほしい」
俺は綺麗さっぱりこいつらの妄想をやめてほしいと言い放った。こんな出来事もう滅多に、いや絶対ない。少し勿体無い気もするが、これからは平凡な高校生活を送るとしよう。だって俺は最初からそう望んでいたんだ。
「ど、どうしちゃったのゆうちゃん?もしかして記憶喪失なの?」
俺の言葉が信じられなかったのか、黒崎が驚いた表情で言う。
「変ね。いつもなら私を見るとギュッと抱きしめてくれるのにそれがないの!私からじゃ恥ずかしいから、ねぇゆうくん抱きしめて?」
西園寺が手を前に出して、抱きついて欲しいと言わんばかりのポーズを取る。だ、抱きつきたい。
「何言ってるんですか黒崎さんも西園寺さんも〜。ゆうさんは私以外に言ったんです〜。だからこれ以上ゆうさんに話しかけないで〜」
柚木は自分に言われてないと勘違いしている。なんでこいつらには俺の言っていることが伝わらないのか。
「ゆうくんっち?その言い方はクズ過ぎない?四股がバレたからそれが妄想だって?流石にないわー」
そもそもやってないことで言われるのってなんだか理不尽。矢崎はこいつらの噂を信じて味方にならないで欲しい。俺の味方はいないのか。後、お願いだからこれ以上入ってこないで。
「ご主人様。昨日の初めての思い出をお忘れになられているとしたら私としましても心が傷つきます。ご冗談ですよね?」
メイドは困惑の表情を浮かべる。そんなこと言われても知らないものはわからない。
「何か勘違いしているようだが、お前らとは話したことや目を合わしたことさえない。それに付き合ってたり、メイドを雇ってるわけがない。これは嘘でも記憶喪失でもなく正真正銘の事実だ」
さっききっぱり言ったはずが、こいつらは自分の良いように解釈するので逃げ場がないように言ってやった。これで本当にこいつらとはおさらばだ。少しでも良い思いが出来ただけ良しとしよう。
「「「「え?」」」」
黒崎、柚木、西園寺、メイドが驚愕する。その声がクラス中に響き渡り、クラスの奴らまで目を見開く。そして、扉が開かれる。
「ホームルーム始めるぞー。早く席につけー」
男気のある声で新任教師の珠(たま)ちゃん先生が生徒に呼びかける。
黒髪ショート。一見怖そうに見える見た目だが、凄く美人なこともありクラスの男子で人気がある教師だ。踏んで欲しいやら罵って欲しいなど周りから聞こえてくる。俺も一度睨まれたことがあり、その鋭い殺気を含ませた目線に惚れかけたことがあった。
「静かにしろー。次喋ったやつ宿題増やすぞ」
珠ちゃん先生は以前、喋ったやつ殺すぞや死刑などと強めに言っていたのだが、そのどれもがご褒美になってしまうと学び今では宿題を増やすということになった。このクラスの男子特殊性癖すぎる。
「良し。では出席を取るぞー」
珠ちゃん先生が出席確認をし終わり、最後には「文化祭が一ヶ月後にあるから頭に入れとけー」
と言い残し教室を出て行った。
そして、ホームルームが終わると俺は拉致された。
「ねぇ、ご主人様。昨日の続きをしましょう」
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