第59話 防衛
「敵襲」と聞こえてきた時は、俺は起きておいて探索魔法で索敵をしておけば良かったと思ったのだが。
冷静になって良く考えると、Bランクの冒険者パーティーの訓練にはならないと思い直し、その事は忘れることにした。
さて、襲撃者達を一掃する事にしよう。
「ソフィア、ヘザー、シャル行くよ」
テントから出ると見張りを任せていたBランクの冒険者パーティーが夜襲を仕掛けてきた盗賊達と戦闘になっていた。
俺達は自分達の役割を果たす為に、探索魔法の索敵で襲撃者の位置を確認、暗闇の中へと紛れ込んだ。
ウギャ~!
「どうした」
ガゥガゥッ!
「なんだ、なにが起こっている」
アギャ~!
俺達に暗闇での戦闘は問題ない暗視を使えるからだ。
後方で第二弾の襲撃をする為に待機してしていた盗賊の襲撃者達を一方的に蹂躙していく。
全部で二十人程倒したが、他に仲間は見当たらなかった。
後は、野営地にいる残りの奴らだけとなった。
俺達は蹂躙した場所から、急いで野営地の方へと戻ると、野営地の方では襲撃に参加した盗賊は残り二人となっていた。
いま、Bランクの冒険者パーティーのリーダー達がその二人と対峙している。
「何とかなりそうね」
「あの二人ならまず負ける事は無いだろう」
その言葉通り、剣を交えて三回目で勝負の時を迎え決着がついた。
「大丈夫だった」
「はい、野営地の方は大丈夫でした。
俺達の方は十人いましたからね、負けたら示しがつきません。
エディオンさんの方は三人、いや四人と言った方が良いのかな、全然余裕で終わらせたみたいですね、返り血も浴びていないようですし」
「まぁ、俺達もAランクの冒険者の意地は見せないとね」
その後は、野営地より離れた場所に穴を掘り、盗賊団の亡骸をそこへ運び入れると火葬して埋葬した。
アンデッドやゾンビになってしまうと困るからね。
三日目の朝......。
昨夜はあれ以降、魔物などの襲撃もなく平穏な野営の時間を過ごす事が出来た。
さて、今日の行程は夕方までにフレグランスの街に入らなければいけない。
なので、何事も起きないように祈りながら、俺達は野営地を出発した。
そして、途中三回ほど休憩を挟んで進んだのだが、夕刻の4時過ぎに無事ボールド帝国の国境の街フレグランスに到着した。
防壁の門を抜け、街の中を進み商業ギルドへと向かう。
そして、俺達の仕事はギルドの倉庫まで護衛して終わりとなる。
「ご苦労様でした。
今回は道中を安心して進む事が出来ました。本当にありがとうございました」
今回の商隊のまとめ役である会頭から労いの言葉をもらい、俺は依頼完了のサインがしてある依頼書を受け取った。
「それじゃ、お俺達はこのまま冒険者ギルドに依頼完了の報告に向かおう」
俺の言葉に、総勢13人+1頭がギルドへと向かって歩き出した。
「依頼完了の手続きが終わりました。皆さん、報酬の取り扱いはどうされますか?」
「あっ、13で均等割りにして、其々のギルドカードに入金して下さい」
「了解しました。そのように処理しておきますね」
これも最初で決めておいた事なので、仲間内での問題は起きないだろう。
翌日......。
「うっ、う~ん」
目覚めると太陽は既に高くなっていたようで、窓の外からは街の喧騒が聞こえてきていた。
窓際のベッドで寝ていた筈のソフィアとヘザーさんは既に起きていたようで、シャルが俺のベッドの方に来て隣で寝ていた。
いつもなら、二人が起きると気が付く筈なんだが、ことのほか大人数のまとめ役という役どころは精神的に負担が有ったのかも知れない。
「さて、起きようかシャル」
ウォン!
そして、街歩きが出来るように支度を済ませた所で、ソフィアとヘザーさんが部屋へと戻って来た。
「おはよう」
「おはようございます」
「おはよう。疲れが溜まっていたようね」
「自覚は無かったんだけど。人を纏めるというのは大変な仕事だね。
二人も用意できてるようだから、街に出て食事をしようか」
俺達は宿を出ると、飲食街を目指して歩き始めた。
「お昼前になりましたから、人通りが凄いですね」
「これは、食堂も混んでいるかな」
「今日はのんびりとするんだから、多少並んでも良いから美味しい食べ物を提供してくれるお店を探しましょう」
「そうですよ、多少人が並んでいる方が、美味しい証拠でもありますから」
それから、15分ほど飲食街をぶらぶらとしながら良さげな食堂を探し当てた。
「ふぅ、美味しかったです」
「あのぴっりとした感じの辛さが良かったわ」
探し当てた食堂は並んで食べた甲斐があったようで、二人はお気に召したようだった。
「今度はシャルのご飯を買わないと、拗ねちゃうぞ」
「あっ、そうでした。シャルちゃんのご飯を買いましょう」
店の外で待っているシャルを迎えにいき市場の方へと向かう。
「シャル、好きなものを選んで良いからな」
ウォン!
俺は、シャルが鼻先を向ける食材を買っていく。
シャルは賢いので、決して鼻先を食材には近づけない。
そう、俺の方を見てから、鼻先を欲しい食材の方へ向けるだけだ。
高い所にある食材は、俺に掴まり立をして選ぶのである。
その際は、もちろん周りの人に迷惑が掛からないようにしている。
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