ロスト・ライト~白金(しろかね)の神託~

陽炎美影

Prologue

 ハルティア大陸北西部には、一風変わった城壁が存在する。黒レンガとも、石ともとれぬ微妙な色合いの固形物で構築されたそれは、とある国の国境線も兼ねていた。

 「カリト共和国」、他国からは「城塞国」とも呼ばれるそこは、周辺国との交易をあまり行わない、所謂鎖国状態の国である。大きな城壁の内側に入ることが許される者は少なく、その実情の多くは謎に包まれていた。


 しかしある時、一冊の本が出版された。まさにそのカリト共和国を舞台とした、架空の創作話とは思えぬ生々しさを孕んだそれは、実は作者自身が経験したことを綴った「自伝」だった。

 かつて陸軍に従事していたという彼女が記したカリト共和国。

 それは、当時のカリトの一人歩きした印象として根深かった「鳥籠の中のディストピア」を、根底から覆すこととなる。


 これからお話するのは、後にそうした自伝を記し、一気に国内外で知名度を上げることとなる、宿少女兵、リーア・ヴォストが十八歳の時の物語である。

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