.49

私は未来を考えて生きてなかった。

独りで生き、独りで死ぬ。

それが私なんだと。


どこかで醒めていた。


優しさに触れる事を恐れていた。

誰も哀しませたくなかったからもしれない。

哀しみたくなかったからかもしれない。


ミクやユダ達の輪の中に入りたかった。でも入らなかったのはそういう理由からかもしれない。


私は私を変えたくて、お金を稼いだ。

トオルの言った[500万貯めたら人生が変わる]その言葉を信じて貯めた。


貯めて気付いた事は、変わりたくなかった事だった。


私は私で満足していたのだ。


誰にも依存しない。

私を理解するのは私だけで良かった。


私の世界では私しかいなくて、むしろ他の誰かがいるのは嫌だった。


それが個性というのなら、そんな私らしさを気に入っていた。


孤独の強さを持っていたかった。


ずっと独りだった。


病気の事は皆には内緒にしておくつもりだった。


私の為に、時間も感情も労力も使わせたくなかった。


優しさに触れたくなかった。


私を慰めるのは私。

それで充分だった。


ホントに?

何度も自問自答した。


他人から慰め、優しさを貰うのは心地好い。気持ちがいい。

でも、私にはその優しさにどう接したらいいか分からない。


誰かに迷惑をかけてしまってるような罪悪感すら感じる。


突き止めていくと、誰かに頼る自分の弱さを認めなければならなくなる。

それが一番嫌だった。


時間は3年しか無いが、考える時間はたくさんある。


やりたい事は?

心残りは?


それを考え始めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る