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優しさに触れた事は少なかった。

ぬくもりに暖まった事も…。


私には、対価のある優しさしか触れなかった。

神崎パパも、キャサも、ミスズも優しかった。


でも私はちゃんと皆に対価を支払った。

神崎パパには身体を。

キャサには仕事を。

ミスズには優しさを。


[なんで、私に優しくするの?私には何にもしてあげられないよ…お金しかないわ]

私は泣きながら言った。


トオルは苦笑い。

ユダはゆっくり首を振った。


ミクママの声…[さぁ今日はもうおしまい。皆さんごめんなさいね。その代わり今度来たらお詫びしますから]

ボックスにいた数組の客に向けての声。

客は素直に腰をあげた。


客を見送ったミクママはステラマリスの看板の灯りを消した。


[さぁ今夜は飲みましょう]

私に優しく言うミクママ。


[俺もたまには飲むかな]

トオルが笑いながら声をかける。


ユダがカクテルを作る。


皆、私の為に…涙が止まらない。


優しさに触れる…甘える事がこんなにも気持ちいいなんて。


皆の手にグラスが…トオルが音頭をとった。


[よく頑張った恵美に]


カクテルグラスのぶつかり合う音が心地良かった。


何のカクテルは分からなかったけど、今までで一番美味しかった。


私は鼻をたらしながら飲んだ。


見栄も外見も体裁も…着飾らなかった。


私は子供のように泣き、笑った。

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