第三話 ユージ、ライフラインを確かめる
怪鳥のフライパスに驚き、外出を諦めた一人と一匹はリビングのソファでくつろぐ。ちなみに郊外だっただけあり、リビングは20畳ほどとかなり広い。
しかし、ソファは黒い革張りの一品。昔ながらというと聞こえはいいが、一言で表すと高い上にダサいソファである。だが仕方ないのだ。田舎にIK○Aなどない。
北条家は一階にリビング、ダイニング、キッチン、和室、トイレに風呂場、二階は三部屋とトイレ、シャワールーム。4LDK、築20年のありふれた一軒家である。
庭には車二台が止められる屋根付き車庫とプレハブ物置、コタローの犬小屋がある。ちなみに両親の交通事故で大破したため、二台あるうちの一台は廃車。いまあるのは雄二の母が主に使っていた軽自動車だけである。
「さて。なぜかまわりが森になっているようだし、とりあえず食糧とかチェックするか」
雄二の独り言である。相変わらず声は大きいが、冷静さは取り戻したようだ。
「冷蔵庫は……生ものが少し、あとは調味料と飲み物ぐらいか。冷凍は……お、けっこうあるな。よし。収納は……おお、カップ麺やら小麦粉やらけっこうあるな。そういえば災害用セットが床下収納に……よし! 三人で三ヶ月分の非常食セットだから、一人なら九ヶ月か! 飽きそうだけどしばらく生きていけるな」
雄二の独り言である。話しかけられたと思ったのか、コタローが駆け寄っている。冷静さを取り戻したかのような雄二だが、そもそも根本的なところを確認していない。
「おーどうしたコタロー、近寄ってきて。メシか? のどかわいたか? んーこれでいっか」
蛇口をひねってシチュー用の深皿に水を注ぎ、コタローの足下へ。ぴちゃぴちゃと水を飲むコタロー。
「ん? お? 水が、出る。お湯は……出るな。ガスコンロも火がつく。というかそもそも電気ついてるな。電気も生きてるのか」
そう、ライフラインの確認である。ようやく電気・ガス・水道を確かめた雄二。
まわりが引っ越して森になったとかのたまっていたが、北条家だけが森の中にあり、怪鳥が空を飛んでいるという意味不明な現実自体は理解していたようである。
「電気、ガス、水道はOK。あとは通信か。電話は……生きてるな。でも番号なんて覚えてねえよ。引きこもりなめんな。ネットはどうなのか。繋がってればだいぶ楽だなー」
二階の自室へ向かう雄二。当たり前のようにコタローも階段を登り、ついてくる。
「よおっし! ネットも生きてる! これで勝つる!!」
ちなみに、なんに勝つつもりなのかは不明である。
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