ベータの女の子どうしでえっちする話。 ―アルファコンプレックス―

D.J.Soramin

ベータの女の子どうしでえっちする話。 ―アルファコンプレックス―



 ああもう。

 むしゃくしゃする。

「何が、『君はベータの割にはよくやってる』ですって?」

 上司のあんたの尻拭いしてるから仕事が遅いように見えるのよ。

 というか、アルファだからって調子に乗るな!

 三流大学卒のくせに。歳上だからって威張るんじゃないわよ!

 派遣社員の私が言えることじゃないけど。

「はあ」


 私は六条亜美。女性ベータ性だ。

 ベータ性というのは、私の第二の性。

 免疫学とバイオインフォマティクスが発達して、「第二の性」と呼ばれるものが見つかった。それはアルファ、ベータ、オメガと三種類に別れ、新たなカーストが作られた。

 リーダーシップに優れ、生殖力に長けたアルファ。

 一般的なベータ。

 そして、男女どちらともに子宮を持ち、同性であっても子を授かることができるオメガ。

 アルファとオメガには、「番」と呼ばれる仕組みがあったり、オメガにはアルファを引き寄せるフェロモンを周期的に発する、みたいな話があるが、正直ベータの私には興味のないこと。

 同性だろうが異性だろうが、勝手にカップルになって、少子高齢化対策に貢献すればいい。

 私は男の人を見つけて、適当に結婚するだけだ。

 まあ最近は結婚願望も薄れてきたし、別に女性一人で生きていけるくらいの給料も貯蓄も増えてきた。

 ……ああそういえば。こないだ両親にお見合い勧められたんだっけ。

 そいつがもう最悪で、口を開けば「おっぱい」「おっぱい」って。

 同じベータ性で、相性いいでしょ? なんて言われたって。冗談じゃないわよ。

 両親も、いつまでも派遣で働いている娘には身を固めてほしい、正社員の夫を持ってほしいって思っているのは分かってるけど。

 でも違うの。

 私が貧乳だからって、それを初対面で言ってくる男なんて、こっちが論外よ!

「ああもうむしゃくしゃする!」

 世は華の金曜日。

 丸の内駅前は仕事を終えたカップルの賑わいでピンク色の雰囲気。

 それがまた私の神経を逆撫でした。

 私が恋愛できない欠陥人間って言われている気がして。

 そんな被害妄想のせいだろう。

 いつもの改札を通る前に、ちょっと寄り道しようと思ったのは。


「……で、ここに来るなんて。私は本当に頭おかしいのかしら」

 ド派手なネイルに彩られた売春宿。

 男性向けらしく下品なパネルに、「女性でも大歓迎!」なんてキャッチコピー。

 最近では同性での性行為もそこまでタブー視される事はなく、むしろ子供を産めるオメガはそういった方向に関しては需要があるらしい。

 まあ私には一生理解できない感覚だろうけど。

「バカバカしい」

 そう踵を返して居酒屋でも探そうと足を出した瞬間、視界の隅にとある女の子が見えた。

『没落アルファ! この店限りの新人さん!』

 ほう?

 アルファが売春宿で働いている。しかも新人。

 再三言うが、私に同性愛の趣味はない。が、アルファを買っていじめることができる。

 その点のみが、私にこの店に入る選択を促した。


 一般的なラブホテルと同じような仕組みだ。

 部屋のパネルが壁一面に埋め込まれ、指名はまた別のパネルで選択するらしい。

「ほう」

 幸いにも空室は多く、また肝心のアルファの女の子も、誰も指名されていなかったみたい。

 適当に清潔そうな部屋を選んで、女の子を指名して、カウンターで鍵を受け取る。

 三○二号室。

 エレベーターでその部屋まで上がりドアノブに手をかけると、もうすでに鍵が空いていた。

「あら」

 扉の外にいたのは、可愛らしい女の子だった。

 ふわふわのショートボブに、緑色の薄いベビードール。金髪にすけすけの服は彼女に似合っており、勝気なお大きな瞳は「アルファ」という感じだ。

 相対するかのように顔は小さく、高い鼻にツンと飛び出た耳には小さなピアスが留められている。

 肩幅も小さい割に豊満な胸。華奢であるはずなのにむっちりとした太ももは、やけに色気を醸している。

 あまりにも私と違う。

 女性でありながら高身長で、さらにヒールで仕事をするためさらに威圧感を出し、小さな胸に、最近は腹の肉が気になってきた年齢。

 低身長な彼女が羨ましい。

「失礼。カクテルはどうかしら」

 上目遣いの少女は、キン、と二つのグラスの音を立てた。

 吸い込まれそうな黒目。

「ええ。いただこうかしら」

 強気を装いながら、私はそう応える。

「私に作れるものとなるとーー」

「ああ。いやいい。モスコミュールをくれ」

「ええそう? それならあたしはカルアミルクをいただこうかしら」

 選択も女の子らしい。

 一般的なラブホテルとは少々異なり、一角にはお酒やリキュールが並ぶ。グラスやシェイカーが整ったそこは、まるで高価なバーのよう。

 まあ、それと対面するように、キングサイズのベッドが置いてあるわけなんだけど。

 カチャカチャと彼女が立てる音が響く部屋で、私はそっとベッドの縁に座る。

「ふう」

 もふっとした清潔なベッドは久しぶりだ。

 ああ。そういえば部屋も掃除しないとな。最近は仕事で忙しくて何もできてない。

 こんな変な売春宿に行くくらいには。まともな判断ができていない自覚がある。

「ほら。できましたよ?」

 同じようにもふっ、と彼女が隣に座った。

 先ほどは気づかなかったが、花のようないい匂いがする。

 香水とは違う、女の子らしい匂いだ。

「ああ」

 無愛想な態度のまま、彼女のそれを受け取る。

 誰かと一緒に何かを飲むのは久しぶりだ。

 アルコールが入ったそれを軽く回し、透明の液体を弄ぶと、ライムの香りが鼻腔をくすぐる。

「ねえ。知ってる?」

 乳白色の液体を持ったままの少女が、麗しい唇を開いた。

「モスコミュールって、ハリウッド生まれらしいわよ」

 小さくこくん、と一口、カルアミルクを飲んだ。

「その口当たりの強さから、『モスクワのラバ』って、強情者って意味があるらしいの」

「へえ」

「あなたと一緒ね」

 悪戯っ子のような笑み。

 初対面の相手にこのようなことを言われるのも癪だ。

 度数の強い酒を一気飲みする。

「あなただって、カルアミルクなんて女々しいの飲んじゃって」

「あら。カルアミルクは結構度数高いのよ?」

 飄々と返される。

 不思議な雰囲気だ。

 これがアルファの魅力なのだろうか。

「ねえ」

 またしてもその少女は口を開く。

「スーツ姿ってことは、どこか仕事帰りなの?」

 私のこの格好は珍しいのだろうか。

「ああ。ちょっと。っていうか上司が苛々する。まだまだこの国には男尊女卑が染みついてやがる。アルファやオメガができたからって何も変わんない」

「あら? 私はそう思いませんよ?」

 カクテルが残ったままのグラスを床に置き、私の肩を抱いた。

「こうして、同性でも愛せるようになったんですもの」

 背の低い少女は膝立ちのまま、覆いかぶさるように私にキスをした。

「ふふっ。強情な味」

 魅力というよりは魔力だ。

 性というものは、こんなにも強力なのか?

 ベータであるはずの自分は、自分より幼げな少女に勝つことができない。

「さすが、アルファ」

「あら? あたしはベータよ?」


 その言葉が、私の酔いを覚ました。

 私はアルファの売春婦を買ったはずだ。

 それが、ただのベータ?

「お店の方針で、アルファとして売られてるの。ほら。あたしってこういう性格だから、ただの強気なキャラじゃなくて、いっそのことアルファって宣伝したほうがウケがいいのよ」

 そこから先は覚えていない。

 ただ、感情のままに彼女の頬を叩いたことは覚えている。

「……?」

 突然のことに不安で怯えるベータ。

 その表情が。

 自分は被害者だとでもいうような厚顔無恥な顔がますます気に入らない。

 無理やり、彼女が着ている服を引き剥がす。

 赤く熱を持ったそこを撫でる。

 ひんやりとした自分の手が、それに触れている。

 涙目の彼女は、怯えたままでわたしの目を見つめた。

 もう、理性なんてない。

 あるのは裏切られた失望感と、目の前のそれを陵辱したい昂りだけだ。

 顔に触れ、首筋に触れ、そのまま腰までつう、と指を伝わせる。

 すると、怯えながらも感じているようで。それは甘美な声を漏らす。

 小鳥のような声を必死に堪えるその表情がたまらない。

 今度は舌で、その部分を舐める。

 おそらく痛いのだろう。苦しげな声をあげながら、それでも頬を舐め続ける。

 が、だんだんと声が快楽の伴うものになってきた。

 顎を持ち上げ、柔らかな唇にそっとキスをした。

 とろんとした表情に、涙が浮かんだ大きな瞳。

 その姿がたまらない。

 もう一度舌を入れる。

 今度は奥までそれを絡ませ、舌の先、裏部分、口蓋、そして奥から手前へと動かす。

 何度も、何度も。

 呼吸が苦しそうに、うっ、うっ、と嗚咽を漏らす少女。

「苦しい?」

 ディープキスをやめ、彼女と目を合わせる。

「わ、わかんないよ……」

 初心な反応。

 それがまた、私の加虐心を唆す。

「じゃあ……」

 彼女の美しい髪を撫でながら、指でまた、彼女の身体を伝わせる。

 もう一度、今度は唇から、顎先、首筋、胸の谷間、臍。

 くすぐったいのか、ひゃう! と大きな声を上げた。

 しかし私は止めない。

 そのまま鼠蹊部、そしてパンツの中にあるそこへ指を移動する。

「あら。濡れてるじゃない」

 彼女は無言のまま、横を向いた。

 しかし顔はもう、私が叩いた場所が分からなくなるくらいに真っ赤に染まっていた。

「返事。ないの?」

 そのまま静かに、彼女の小さなクリトリスを弄る。

「あっ! あっ……」

 気持ち良さげに嬌声が上がる。

 ゆっくりと。いじらしく。

「変態ね」

 私はその周辺を優しく撫で続ける。

「もう。腕が疲れちゃった」

 ねばねばとした液体を、彼女に聞こえるようにくちゃくちゃと音を立てて、逆の手で下着を剥がす。

 思っていた以上に、彼女のそこは綺麗だった。

幼女のような一本筋。

剃られて陰毛が見えないその部分は、つるつると、そして真っ赤に充血していた。

「綺麗ね」

「……っ!」

 恥ずかしがりながらも。手で覆った顔の隙間から私を覗く。

「ね? いいよね」

 彼女の返事を待たず、私は舌でそこを舐めた。

 アナルの部分から先へ、何度も、何度も。

 愛液に浸るそこは、どれだけ舐めても乾くことはない。

 可愛らしく、小さな痙攣を繰り返す彼女を無視し、その穴へと舌を挿入した。

「ひゃうぅ!」

 痙攣が一層大きくなる。

 ひだひだの感覚を味わいながら、暖かいその感覚を味わう。

……気持ちいい。

まさか自分と同じその部分が、気持ちいいとは思わなかった。

そして。

「濡れている?」

 私自身、下着が濡れているのを感じた。

 自分でその部分を慰める事は何度もあったものの、触れずにそこが濡れる経験は初めてだ。

気持ちの悪い感情が、プレイの妨げとなって苛々する。

 スーツを脱ぎ捨て全裸になる。

 久しぶりの開放感。

 まさか自室の風呂場等ではない、女の子の前で、生まれたままの姿を曝け出すとは思わなかった。

でも股からは、パンツが太腿に引っかかったままの彼女を犯したい欲望がつつーと降りてくる。

犯したい。

もし私の股に男性器がついていたのなら、それを突き刺していたのだろう。

が、私はそうではない。ただのベータ女性。

だからこそ、彼女の股に自分のそれを当ててみた。

俗に言う貝合わせの姿勢だ。

「うっ」

自分の体重が乗ったことで苦しそうになるが、私は構わない。

彼女のクリトリスと自分のそこと付ける。

何度も何度も。

ピストンするごとにくちゃくちゃと、愛液が音を当てる。

「……っ!」

音のない嬌声を上げる彼女と、部屋の中に響きわたる二人の液音。

淫靡な匂いが部屋中を支配している。

「も、イく……」

大きく跳ねた彼女に、少し不満が湧いてきた。

「何勝手にイってるのよ!」

ピストンを強く、激しくする。

彼女のことなどお構いなしだ。

自分のクリトリスを彼女の突起に当て、気持ち良くなるためだけに動かす。

ただのマスターベーションである自覚はある。

それでも。彼女だけが気持ちよくなることに吐き気を催してきた。

子宮が下りてくる。

何度も何度も、激しさを増す度に小さくイき続ける彼女を見ていると、段々と私の心もそういう気持ちになってきた。

大きな波がくる。

「あっ、クる……」

「私も……」

大きな絶頂とともに。彼女は潮を吹いた。



「「ごめんなさい」」

気づいた時には、全裸の女の子二人。

「あなたの気持ちを逆撫でするようなこと言ってごめんなさい」

「あなたのこと考えないで気持ちよくなってごめんなさい」

顔を上げて、一度抱きついた。

「ごめんね。ぶっちゃって」

「ううん」

髪を撫でられる感覚。

何年ぶりだろう。

こうして誰かに甘えられた経験は。

そう思うと、何故だか涙が出てしまった。

「だ、大丈夫⁈」

赤ちゃんのように、強くハグする。

「もう」

 母親のようにそのベータは、私の頭を撫でた。




「時間になりました」

 精算機の無機質な声を最後に、私と彼女との不思議な時間が終わった。

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